到着〜着替え
笑夢:着きました!
唄ったり騒いだりしながら、あっという間に到着したプール。
時流:さて、まずは荷物を置いてくる?
榛希:荷物は男で運ぶから、女性陣は先に着替えるといい
たいら:だな
水着だけではない。
人数分の弁当であったり、ドリンク(一部アルコール)、遊び道具などなど大量である。
ちなみに、弁当もドリンクも買うと高いという理由から、手作りである。
ショータ:時間かかるでしょうからね
元来、女性の着替えは時間がかかるのである。
ヒメ:じゃあよろしくっ。まぁ、わたしはもう着てるんだけどねっ
スイ:子供かいっw
余談だが、最近スイはツッコミに回る機会が増えている。
カズ:スイ姉さん、ナハトさんはどの辺りに?
スイ:呼べば来るよ
余談だが、これは信頼ではない。適当である。
楠:ナハトのアホー(ボソッ
楠の囁き。ウィスパーボイスという奴である。
ナハト:いきなり罵倒される覚えはないぞ
そしてお約束を忠実に守り現れる黒い男。
楠:わぁぁぁっ!?
背後からいきなり重低音が聞こえたのだから、たまったものではない楠。
たいら:地獄耳のねりけしとはよく言ったもんだ
たいらの称賛…称賛かどうかは本人にしかわからないが。
ナハト:誰が言った?それより荷物を運ぶんだろ?
スイ:よろしく
ナハト:頼まれた。ほら楠、荷物を貸せ
楠:あ、うん
まだ驚きが抜けないのか、楠はおっかなびっくり荷物を渡した。
アキ:…
そんな光景を見ながら思案する人物がいた。
時流:どうしたのよ?
アキ:…いえ、アホって言った相手に対して親切ですね、あの人…まさか
時流:Mなのよ
まさかの結論!
アキ:なるほど…寒気がしますね
この時、彼女の中でナハトの立ち位置が決まったという。
笑夢:呼びました?
時流:m違いよ
笑夢:m違いですかw
なんだそれは?
榛希:馬鹿やってないで、ほら荷物貸せ
時流:お願いね
榛希:あぁ。アキさんも
アキ:…お願いします
とかなんとかしながら女性陣は更衣室へ。
―
時流:…よっと
スイ:…時流ちゃん?前買った水着は?
時流:…
前に買い物に付き合ったスイだが、時流の水着がその時に買った物と違うことに気がついた。
ヒメ:今着てるのじゃないんですか?
そういうヒメはプールに入るつもりはないようで、水着は着ているが上に濡れてもいいワンピースを着ている。
笑夢:実は、あの時は止めませんでしたが…時流さんの水着は何と言いますか…
アキ:エロいというか
スイ:エグかったよね
ちなみにどんな水着なのかは『あいさかけ番外編(相坂時流・作)』に書いてあるのを各自で、自己責任で調べていだだきたい。
時流:そうかしら?あれくらいアピールしなきゃあいつ興奮しないのに…
楠:こ、興奮…
笑夢:ともかく、さすがに未成年のことを考えた結果、普通のビキニになりました
ヒメ:…普通?
アキ:普通にしては…
色は情熱の赤。
少々ローライズなのは最後の抵抗か。
ともかく、自分に自信がなければ着用出来ない類のものだろう。
スイ:二人とも、時流ちゃんにとっての普通だから
ヒメ:あーw
アキ:なるほど
時流:好き勝手言ってくれるわね…クーも私の水着見たかったわよね?
楠:ボ、ボクは…その…遠慮したいな、なんて
唐突に話を振られた楠は曖昧に言葉を濁す。
アキ:っ!?…く、楠さん
その楠を見たアキはとあることに気がついた。
楠:はい?
アキ:わ、私の渡した水着は…あれ?
渡したのはスク水。
しかし楠が着ているのは、少女らしいフリル付きワンピース水着。
楠:あぅ…ごめんなさい。せっかく遊びに来たのにスク水ってのはちょっと…その…
一部では忘れられていそうだが、スク水とはスクール水着であり名前の通り学校用である。もっと可愛いのが着たいと思う世代には不評であることもある。
アキ:う…ごめんなさい…そこまで気が回りませんでした…
痛恨のミスだった。
だが…
楠:あの…
アキ:…お詫びに、後でなにか奢りますよ
転んでもただでは起きないのがアキである。
楠:そんな…
アキ:遠慮なさらず。ゆりさんも…ぶっ!?
次なる毒牙…もとい、生贄…もとい…ともかくゆりを見たアキは鼻を押さえ、うずくまる。
楠:アキさん!?…え?ゆりさんスク水…と言うか笑夢さんのは白スク!?
楠は驚愕した。
年頃のゆりのスク水もだが、その姉である笑夢はまさかの白スクである。
笑夢:恥ずかしいですね
ゆり:うん…//
笑夢:ゆりちゃん、とっても似合ってますよ♪
ゆり:…それ、ゆりが子供っぽいってこと?
笑夢:わっふぅ!?ち、違いますよ!
何やら修羅場が始まりそうである。
スイ:…よく置いてあったと思うよあたし
ヒメ:ディ・モールト!非っ常によろしいっ!
呆れるスイと違い、ヒメは大喜びである。
アキ:ヒメさん、アレは…?
フラフラしつつ、アキは立ち上がりヒメに耳打ちをする。
ヒメ:任せて!ちゃんと入れ換えておいたから!
今更であるが、アキの仕込みとは未成年メンバーにスク水を着せることである。
いや、未成年だけではない。もう一人ターゲットがいる。
スイ:…またなにか良からぬ事を考えてるね?
時流:姉さんが言う?
そして…
―
ショータ:おーっ!
カズ:これは…!
榛希:素晴らしいな
マーシュ:来てよかった
三原:あぁ…!
ナハト:…眼福だな
たいら:まったくだ
美女、美少女揃いのメンバーである。
男性陣は取り繕うことも、恥ずかしく思うことも忘れ賞賛する。
時流:ふふ、この視線…いいわねぇ
スイ:そうかな…?
ヒメ:さすが時流さん
笑夢:うぅ…知らない人がいっぱいいるのを忘れていました…
楠:…普通の水着にして良かった
ゆり:うぅ…スク水浮いてる…恥ずかしぃ…
そもそも、ゆりがスク水なのは姉達に上手いこと騙されたからだ。
『色違いですが、お揃いの水着ですよ』
なんて言われて着てみたが、スク水で。
当然というかなんというか、スク水率は低く、浮いてしまっている。
アキ:何を恥ずかしがる必要がありますか!とてもお似合いですよ!
何故かビーチバレー用水着を着用したアキがガッツポーズをしてゆりを褒める…はたから見たら試合前に鼓舞しているようだが。
ゆり:アキさん…怖ぃ…
あまりのアキの熱さにゆりは怯えている。
スイ:あーはいはい、今度は男性陣着替えてきていいよー
そんなゆりをアキから庇うように立ったスイが男性陣を促す。
たいら:よっしゃ!行くぞ野郎ども!!
マーシュ:おぅっ!
三原:了解!
先陣をきるは、たいらの兄貴とその子分。
ナハト:おぃっ!教師が率先して走るな!!
怒鳴りながら早足で追う、意外にマナーにうるさいナハト。
榛希:騒がしいな…w
カズ:そうだねw
苦笑しながら、ゆったり歩きだす神谷兄弟。
ショータ:久しぶりだなぁ、泳ぐの
のんびりと、最後に泳いだのはいつだったかなぁ…と、思い出しながら歩くショータ。
ヒメ:…(にやり
アキ:…(にやり
そんなショータを見て怪しく笑う二人。
そして…
ショータ:なんじゃぁこりゃぁぁぁ!?
絶叫がほとばしった。
―
ナハト:…
榛希:…
カズ:…
マーシュ:…
三原:…
ひたすらに無言。
たいら:…おい、どうだよこの俺の水着!
沈黙に耐え切れなかったのか、たいらが水着の披露をした。
ナハト:ブーメラン!?
ちなみにきわどい。
榛希:…どうもこうも、誰が喜ぶんだ?
カズ:…いや、喜ぶ人がいても嫌なんだけど
マッチョ好きは男女問わず、意外にいるものだ。
マーシュ:狙いすぎっすよ、たいら先生w
三原:凄く…ガチムチ…です
三原のは褒め言葉なのだろうか?
たいら:はっはっは!男ならこれくらいのサービスは必要だろ!
漲る筋肉。
上腕筋が、大胸筋が、背筋が、大腿筋が…全ての筋肉が躍動する。
それはまさに…筋肉達の饗宴(凶宴)!
ナハト:だから誰に対してのサービスなんだよ。そもそも、あんたは男じゃなく漢だろうに…
男<漢。
ショータ:無視をするなぁぁぁっ!!
せっかくの物真似を無視されたショータがついに叫ぶ!
榛希:騒ぐな。他の客に迷惑だろう?
相変わらずクールな男である。
ショータ:あ、すみませ…だからぁっ!
普段なら謝って終わりだっただろう。
だが、そうはいかないほどにショータは憤っているようだ。
たいら:…せっかく気を遣ってやったのに、台なしだなお前は
ショータ:僕が悪いんですかねぇ!?
ナハト:…じゃあ聞くが、なんでお前スク水なんか持ってきた?
ツッコミ係がついに仕事をした。
というかスク水である。
カズ:…着るため?
マーシュ:さすが…
三原:マジパネェ…
若手三人は戦慄している。
ショータ:着ないから!
実はツッコミが多いショータ。休まらない。
ナハト:…榛希、気づいているか?
榛希:…あぁ、いつかの銭湯のような空気だな
もちろん、周囲には他の客がいるわけで…先日の銭湯のときのように
『何故女の子が?…いや、男か…だが』
みたいな空気になっていることに気がつく二人。
たいら:しかし、お前の荷物をお前に気付かれずに弄れる奴は限られる。つまり身内の犯行だな
たいら探偵誕生。
ショータ:…ヒメか
ぶっちゃけ他にいない。
マーシュ:ショタさん、取り敢えずそれを着るべきだと思います
ショータ:…他人事だと思って簡単に言うね
三原:…いえ、ヒメさんだけでなく時流さんやアキさんも関わってるかもしれない
ショータ:…くっ
普段は味方が多いが、こういう時は敵が多いのがショータである。
ナハト:どうする?プライドを取るか?
榛希:それとも、ここの平和とヒメ達の笑顔を取るか?
静かに決断を迫る二人だが、脅しているのと同じである。
ショータ:着ればいいんでしょ着れば!!
やけくそだった。
他に道はないのだ。
たいら:よろしい…お前は今日から『漢の娘のショータ』と名乗れ!
ショータ:お断りだよ!
ショータの叫びが虚しく更衣室に響いた。
―
ナハト:待たせた
スイ:遅かったね?
榛希:少しトラブルがあってな、すまない
笑夢:トラブル?
ゆり:大丈夫?
カズ:いや、それが…w
マーシュ:実は…w
三原:…くくっw
大人二人はポーカーフェイスでごまかしたが、三人は耐え切れず笑いがもれる。
スイ:なんなの?というかショタさんは?
たいら:おい、御指名入ったぜ!
ショータ:うわっ!?
体格差を利用し、たいらの後ろに隠れたショータだったが、無理矢理前に押し出されてしまう。
楠:…パーカー?水着持ってこなかったの?
ショータ:…うぅ
女装には慣れているショータだったが、さすがに女装用水着はわけが違うらしい。
ヒメ:ショーちゃんw
アキ:ショタさんw
時流:ショタちゃんw
にやにや笑う三人。ショータは確信する。
ショータ:…やっぱり君達の仕業かこれは!?
やけになりパーカーを脱ぎ捨てるショータ!…だが、すぐにパーカーを腰にパレオの様に巻き付けたのはご愛嬌…というかなんというか…大人の事情である。
女性陣:…
思わず沈黙する女性陣。
そして…
女性陣:スク水キタ━━━(゜∀゜)━━━!!
その時、歴史は動いた。
10/08/14 23:11更新 / ナハト