ドリームメイカー
――物語はいつだって唐突だ。 大抵の女の子は空から降って来るし、闇の組織は突然命を狙ってくる。 ロボットは乗れば動くし、メロスに至っては冒頭から激怒している。 全ては夢物語の産物であり、突拍子もないことだと思っていた。 現実では起こり得ない。わかっている。 ただ世の中には『事実は小説より奇なり』という言葉があるらしい。 あたしは朝日が差し込むベッドの中、そんな無駄な思考を巡らせていた。 ぐいっ。 パジャマの裾を引かれた。 温かいものがあたしの腕に触れる。 再度、その温かいものを見た。 「……すぅ……すぅ……」 あたしの手を取り心地良さそうに眠るのは小学1年生くらいの女の子。 寝息と共に揺れるおかっぱの髪、ちっちゃい口、ちっちゃい手。 とっても愛くるしい。 ぐ……そんなことは、どうでも良くて。 「……ん……っ……ぁ」 女の子が目を覚ました。 眠気眼を擦りながら、もぞもぞと体を起こし、にぱぱ〜っと天使のような笑顔をあたしに向けた。 「おはよ、ママ」 「マ、ママ……?」 「うん、おはよ、ママ」 「……あ……あたし?」 「ママ」 「ええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇーーーーっ!?」 あたし、御門美月は高校2年生にして―― ママになったらしい。 | ||||||||||
|
≪ TOP ≫