第一話
IFの世界
第一話
――あの、一番辛かった日々。
――両親をなくしたすぐの日々。
――毎日ふさぎ込んでいた日々。
――そんな僕の前に、4人の男の子が現れて、僕に手をさしのばしてくれたんだ。
「強敵があらわれたんだ!きみの力がひつようなんだ!」
「きみの名前は?」
――「…なおえ、りき」
「よし、いくぞ、りき!」
―― 一方的に手を掴んで、僕を引きずるように走り出す。
――「ね、きみたちは!?」
――こけないよう、必死についていきながら、そう訊く。
「おれたちか?」
「悪をせいばいする正義の味方」
「ひとよんで…」
「リトルバスターズさ」
「…い、おい!」
「…ん、もう着いたの?」
「いや、でももうすぐ着くからその寝ぼけた顔をどうにかしとけよ」
僕は軽く伸びをして自分のほほを軽くたたいた。
叔父さんは運転しながら画面を見ずにメールを打ってる、わき見してないからって…片手運転はやめようよ…。
「もうすぐか…」
もうすぐ僕はある学校に着く。5月なんて中途半端な時期だけど、成長した自分の姿をみんなに見せたくて、みんなの成長した姿を見たくて、叔父さんに無理言って転校を決めた。
「だからあんな夢見たのかな…」
僕が見てたのは昔の、本当に、大切な記憶。両親をなくした僕の元にやってきた、僕を助けてくれた4人の、ヒーローの、記憶。
「…着いたぞ、とりあえず今日は学校側に挨拶と寮のほうに荷物だな」
「うん、ごめんね。叔父さんも忙しいのにわざわざ二日も空けてもらって」
叔父さんは「一日半だよバカ」っていいながら来客用の玄関へと歩いていく。
「心配するな、ってことかな?」
私は小走りでその背中を追いかけた。
野球の練習も終わり、少し早めの夕飯でもと言うことで俺たちはゾロゾロと食堂に向かっていた。
「おい謙吾っち、あの車カッコよくね?」
「ほう、確かに中々いい車ではないか」
真人の指差した方向にあったのは真っ黒の車。左ハンドルだから恐らく外車だろう。
「あれは、ジープだな」
「わふ?ジープってあの軍人さんの乗ってる奴ですか?」
「まあ、あれはそれと同じジープブランドの物だと言うことだ。私もさすがに車のことまでは網羅してないから詳しい説明は出来んがな」
「ですが、外国車と言うのは少なからず日本車よりも値段が張りますし…。この学校の教員で使っている人は…」
西園がみんなの方を向くとみんな「知らない」と言って顔で首を振る。西園は「居ないみたいですね」と続けた。
となると、小金持ちな保護者か、他校の校長・教頭クラスの人間…って所か。
その話題はそこで終わり食堂へ向かい始めると来客用の玄関から一人の男性が出てきた。高そうなスーツの割りにネクタイを締めてなかったり、シャツの上のボタンを開けてたりと少しラフな感じの男性だ。
「あの人が持ち主か…」
「おい、バカ兄貴さっさと来い」
「おー、今行く」
みんなの下へ走っていくと、視界の端に女の子の姿が見えた。先ほどの男性を捕まえてなにやら話している。
…良くは見えなかったけど何だか見覚えのある子だった。
「恭介、どうかしたのか?」
「いや、見覚えのある女子がいたんだがどうにも思い出せなくてな」
「お前がその程度しか感じないなら昔チョコでもくれた奴だったんじゃないか?お前はモテルしな。それより…」
俺は謙吾の言葉に適当に相槌を打ちながら後を見た。彼女はもう居なかった。
〜翌日〜
「そういや…」
「ん?」
「あいつらに連絡したのか?転校するって」「してないよ」
「即答かよ」
ちなみに今は叔父さんの車の中だ。昨日のうちに寮に入らなかった理由としては、大体の荷物を運んだのはいいけど何気に荷物が多くて整理が終わらなかったから寮は今日から入ることにして昨日は帰ったんだけど。…実はもっと重要な理由があって。
「驚かせたいんだ、みんなを」
叔父さんは呆れた顔でこっちを見てる。うん、その顔昔から苦手なんだよねって…。
「叔父さん!前!前!」
「ん?ああ」
信号が赤に変わっていたため前の車に追突しそうになったんだけど、叔父さんは特に気にもせずブレーキを踏んだ。なんでこうも何時も何時も落ち着いていられるんだろうこの人。
そういえば、昔言ってたっけ?『俺は落ち着いてるんじゃない、興味が無いだけだ』…いや、自分の身の危険に興味ないのもどうなの!?
一人で悶々としてるうちに車は目的地に到着していた。
「それじゃあ、お前は職員室行って来い。俺は寮母さんとお話してお前の部屋に残りの荷物入れたら帰るから」
「あ、うん分かった」
僕は上機嫌な足取りで校内へと入った。
「よお」
いつも通りカバンを自分の席に置いて窓から鈴たちのクラスに入る。案の定、みんな集まっておしゃべりをしている。
「おはようございますです、恭介さん」
「恭介さんおはよ〜」
「ああ、おはようだ。能美に小鞠にみんなも」
みんなも口々に「うむ、おはよう」、「おはようございます…」など言ってる。ちなみに、俺は先ほど手に入れたある情報を言いたくてうずうずしている。
「恭介さん…何か危ない顔してますヨ」
「あ、危ない顔ってなんだよ」
多分うずうずが顔に出てたのだろう。しかし、「危ない」ってなんか酷くね?
「はい、能美さんを舐めるように見てました」
「うむ、『能美のツルペタロリプニボディたまんねぇぜ、ハァハァ』という顔で見ていたな」
「見てねぇ!」
相変わらずヒデェ言いがかりだぜ。そんなに俺をいじめて楽しいかよ、泣くぞコラ。
「この…変態ロリコンバカ兄貴ーーーーーー!!!」
ああ、何時もはすぐ来るはずの蹴りが来なかったのは助走をつけてたからなんだな、ハハハ。と言うことは俺はこれから力学的エネルギー保存の法則にしたがって吹き飛ぶわけだな。
メキと首がなった刹那のうちに俺は机をなぎ倒しながら吹き飛んでいた。さすが我が妹ちゃんと人の居ないほうに蹴ってやがる。…泣いてなんていないぞ、これは汗だ。俺は眼球から汗を出してそれをビームのように発射できるんだ。
「ふえええ、り、鈴ちゃ〜ん駄目だよ〜」
「わふ、すっごい飛んでいったのです」
「やはは…これは恭介さん可哀相ですネ…」
鈴たちとは別のところで2人で話していた真人と謙吾が机を除けて俺を起こしてくれる。ありがとう、友よ。
俺たちが立ち上がると同時にクラスの奴が机を直し始める。正直、申し訳ないな俺のせいではないが。
「まあ、俺が変な顔をしていた、と言うのは心当たりがあるから認めよう。蹴られたのは…この際忘れよう」
俺が話し始めると「鈴君のあの蹴りをくらって平然といるとは」とか来々谷が言っているが、ぶっちゃけかなり辛い。だが、俺はこいつらの驚く顔が見たいから頑張るぜ。
「実は…」
「このクラスに転校生が来ることなら…みんな知っていますよ」
「何だ知ってたのか」
てことはさっきはその話でもしてたのかな?だが…。
「だが、俺を嘗めてもらったら困るな」
「ほう…では、何か別の情報でもあるのか」
「ああ、その転校生が超絶的な美少女であると言うことだ」
俺の言葉にみんな「ふーん」と言った顔をする。来々谷は…なんか既に獣の目になってるな。
「それって姉御以外にはあんまり有益な情報じゃないですネ」
「そうですね」
「まあ、俺たちは男子だから全く興味が無いと言えば嘘になるが。しかし恭介、その手の情報は鵜呑みにするとがっかりするパターンが多いのではないか?しかも、リトルバスターズは見ての通りレベルの高い女子が集まってるし…あまり期待できたものじゃないんだが」
「俺は筋肉があればオッケーだぜ」
「ふむ、さりげなく私達を褒めている謙吾少年の言うことはもっともだな。そこら辺の情報は確かなのか」
お前もさりげなく真人をスルーしてるな…。まあ、確かに今更考えてもリトルバスターズって結構レベル高いよな。
「まあ、どの程度可愛いかは置いといて。転校生が美少女って言うのは確かな情報だ、俺にその事を教えてくれた奴はそこら辺の基準はしっかりしてる奴だからな。それでだ、ミッションをしよう、謙吾ちょっとここを持ってくれ」
俺はズボンにさしていた円筒状の紙を取り出し、その端を謙吾に持たせてそれを一気に広げる。
「『噂のあの子をゲットだぜ!ドキドキ勧誘大作戦!』だ。転校生をリトルバスターズに勧誘するミッションだが、無理矢理は駄目だ。転校生が入りたいと思うような勧誘をするんだ。」
言い終わったところでチャイムが鳴り三枝はダッシュで自分のクラスへと帰り、他のメンバーもゾロゾロと自らの席へと戻っていた。
全く自由奔放な奴らだぜ…。
「恭介さんよ、自分のクラスに戻らなくても言いのかい?」
「ん?ああ、俺は転校生を見ていく」
俺は空いてる席に腰掛けた、真人は一瞬呆れた表情を見せていたがすぐ前を向きなおした。鈴の席の方から「あいつバカだ!」なんて聞こえたがきっと幻聴だろう。
「おら、お前ら席に着けー」
教師が入ってくる。教師は俺を一瞥しただけで前を向いて話し出す。スルーすることに決めたのだろう。
「もう知ってる奴も居ると思うが、今日このクラスに転校生が来る」
「入って来い」と教師が言うとざわついていたクラスの連中は途端に静まり返った。
カラカラとゆっくりと開けられるドア、3分の2ほど開いたところで転校生が入ってくる。制服が出来ていないのだろうか?出てきたスカートは学校指定のものではなかった。そして、しっかりとした足取りで教壇の中央へと歩く。
横顔を見てか男子(と来々谷)の目が光り輝いている、んだが…俺と真人と謙吾と鈴の反応は違った。俺たちは固まっていた。
転校生が90度回転してこちらを向く。推測が確信に変わり、次の瞬間には確信は確定に変わった。
「えっと、直枝 理樹《ナオエ リキ》です。よろしくお願いします」
「「「「「うおお「「「「なにーーーーーーーーーー!!!!!!!!」」」」
クラスの男子の雄たけびは俺たち四人の驚愕の声に掻き消された。
第一話
――あの、一番辛かった日々。
――両親をなくしたすぐの日々。
――毎日ふさぎ込んでいた日々。
――そんな僕の前に、4人の男の子が現れて、僕に手をさしのばしてくれたんだ。
「強敵があらわれたんだ!きみの力がひつようなんだ!」
「きみの名前は?」
――「…なおえ、りき」
「よし、いくぞ、りき!」
―― 一方的に手を掴んで、僕を引きずるように走り出す。
――「ね、きみたちは!?」
――こけないよう、必死についていきながら、そう訊く。
「おれたちか?」
「悪をせいばいする正義の味方」
「ひとよんで…」
「リトルバスターズさ」
「…い、おい!」
「…ん、もう着いたの?」
「いや、でももうすぐ着くからその寝ぼけた顔をどうにかしとけよ」
僕は軽く伸びをして自分のほほを軽くたたいた。
叔父さんは運転しながら画面を見ずにメールを打ってる、わき見してないからって…片手運転はやめようよ…。
「もうすぐか…」
もうすぐ僕はある学校に着く。5月なんて中途半端な時期だけど、成長した自分の姿をみんなに見せたくて、みんなの成長した姿を見たくて、叔父さんに無理言って転校を決めた。
「だからあんな夢見たのかな…」
僕が見てたのは昔の、本当に、大切な記憶。両親をなくした僕の元にやってきた、僕を助けてくれた4人の、ヒーローの、記憶。
「…着いたぞ、とりあえず今日は学校側に挨拶と寮のほうに荷物だな」
「うん、ごめんね。叔父さんも忙しいのにわざわざ二日も空けてもらって」
叔父さんは「一日半だよバカ」っていいながら来客用の玄関へと歩いていく。
「心配するな、ってことかな?」
私は小走りでその背中を追いかけた。
野球の練習も終わり、少し早めの夕飯でもと言うことで俺たちはゾロゾロと食堂に向かっていた。
「おい謙吾っち、あの車カッコよくね?」
「ほう、確かに中々いい車ではないか」
真人の指差した方向にあったのは真っ黒の車。左ハンドルだから恐らく外車だろう。
「あれは、ジープだな」
「わふ?ジープってあの軍人さんの乗ってる奴ですか?」
「まあ、あれはそれと同じジープブランドの物だと言うことだ。私もさすがに車のことまでは網羅してないから詳しい説明は出来んがな」
「ですが、外国車と言うのは少なからず日本車よりも値段が張りますし…。この学校の教員で使っている人は…」
西園がみんなの方を向くとみんな「知らない」と言って顔で首を振る。西園は「居ないみたいですね」と続けた。
となると、小金持ちな保護者か、他校の校長・教頭クラスの人間…って所か。
その話題はそこで終わり食堂へ向かい始めると来客用の玄関から一人の男性が出てきた。高そうなスーツの割りにネクタイを締めてなかったり、シャツの上のボタンを開けてたりと少しラフな感じの男性だ。
「あの人が持ち主か…」
「おい、バカ兄貴さっさと来い」
「おー、今行く」
みんなの下へ走っていくと、視界の端に女の子の姿が見えた。先ほどの男性を捕まえてなにやら話している。
…良くは見えなかったけど何だか見覚えのある子だった。
「恭介、どうかしたのか?」
「いや、見覚えのある女子がいたんだがどうにも思い出せなくてな」
「お前がその程度しか感じないなら昔チョコでもくれた奴だったんじゃないか?お前はモテルしな。それより…」
俺は謙吾の言葉に適当に相槌を打ちながら後を見た。彼女はもう居なかった。
〜翌日〜
「そういや…」
「ん?」
「あいつらに連絡したのか?転校するって」「してないよ」
「即答かよ」
ちなみに今は叔父さんの車の中だ。昨日のうちに寮に入らなかった理由としては、大体の荷物を運んだのはいいけど何気に荷物が多くて整理が終わらなかったから寮は今日から入ることにして昨日は帰ったんだけど。…実はもっと重要な理由があって。
「驚かせたいんだ、みんなを」
叔父さんは呆れた顔でこっちを見てる。うん、その顔昔から苦手なんだよねって…。
「叔父さん!前!前!」
「ん?ああ」
信号が赤に変わっていたため前の車に追突しそうになったんだけど、叔父さんは特に気にもせずブレーキを踏んだ。なんでこうも何時も何時も落ち着いていられるんだろうこの人。
そういえば、昔言ってたっけ?『俺は落ち着いてるんじゃない、興味が無いだけだ』…いや、自分の身の危険に興味ないのもどうなの!?
一人で悶々としてるうちに車は目的地に到着していた。
「それじゃあ、お前は職員室行って来い。俺は寮母さんとお話してお前の部屋に残りの荷物入れたら帰るから」
「あ、うん分かった」
僕は上機嫌な足取りで校内へと入った。
「よお」
いつも通りカバンを自分の席に置いて窓から鈴たちのクラスに入る。案の定、みんな集まっておしゃべりをしている。
「おはようございますです、恭介さん」
「恭介さんおはよ〜」
「ああ、おはようだ。能美に小鞠にみんなも」
みんなも口々に「うむ、おはよう」、「おはようございます…」など言ってる。ちなみに、俺は先ほど手に入れたある情報を言いたくてうずうずしている。
「恭介さん…何か危ない顔してますヨ」
「あ、危ない顔ってなんだよ」
多分うずうずが顔に出てたのだろう。しかし、「危ない」ってなんか酷くね?
「はい、能美さんを舐めるように見てました」
「うむ、『能美のツルペタロリプニボディたまんねぇぜ、ハァハァ』という顔で見ていたな」
「見てねぇ!」
相変わらずヒデェ言いがかりだぜ。そんなに俺をいじめて楽しいかよ、泣くぞコラ。
「この…変態ロリコンバカ兄貴ーーーーーー!!!」
ああ、何時もはすぐ来るはずの蹴りが来なかったのは助走をつけてたからなんだな、ハハハ。と言うことは俺はこれから力学的エネルギー保存の法則にしたがって吹き飛ぶわけだな。
メキと首がなった刹那のうちに俺は机をなぎ倒しながら吹き飛んでいた。さすが我が妹ちゃんと人の居ないほうに蹴ってやがる。…泣いてなんていないぞ、これは汗だ。俺は眼球から汗を出してそれをビームのように発射できるんだ。
「ふえええ、り、鈴ちゃ〜ん駄目だよ〜」
「わふ、すっごい飛んでいったのです」
「やはは…これは恭介さん可哀相ですネ…」
鈴たちとは別のところで2人で話していた真人と謙吾が机を除けて俺を起こしてくれる。ありがとう、友よ。
俺たちが立ち上がると同時にクラスの奴が机を直し始める。正直、申し訳ないな俺のせいではないが。
「まあ、俺が変な顔をしていた、と言うのは心当たりがあるから認めよう。蹴られたのは…この際忘れよう」
俺が話し始めると「鈴君のあの蹴りをくらって平然といるとは」とか来々谷が言っているが、ぶっちゃけかなり辛い。だが、俺はこいつらの驚く顔が見たいから頑張るぜ。
「実は…」
「このクラスに転校生が来ることなら…みんな知っていますよ」
「何だ知ってたのか」
てことはさっきはその話でもしてたのかな?だが…。
「だが、俺を嘗めてもらったら困るな」
「ほう…では、何か別の情報でもあるのか」
「ああ、その転校生が超絶的な美少女であると言うことだ」
俺の言葉にみんな「ふーん」と言った顔をする。来々谷は…なんか既に獣の目になってるな。
「それって姉御以外にはあんまり有益な情報じゃないですネ」
「そうですね」
「まあ、俺たちは男子だから全く興味が無いと言えば嘘になるが。しかし恭介、その手の情報は鵜呑みにするとがっかりするパターンが多いのではないか?しかも、リトルバスターズは見ての通りレベルの高い女子が集まってるし…あまり期待できたものじゃないんだが」
「俺は筋肉があればオッケーだぜ」
「ふむ、さりげなく私達を褒めている謙吾少年の言うことはもっともだな。そこら辺の情報は確かなのか」
お前もさりげなく真人をスルーしてるな…。まあ、確かに今更考えてもリトルバスターズって結構レベル高いよな。
「まあ、どの程度可愛いかは置いといて。転校生が美少女って言うのは確かな情報だ、俺にその事を教えてくれた奴はそこら辺の基準はしっかりしてる奴だからな。それでだ、ミッションをしよう、謙吾ちょっとここを持ってくれ」
俺はズボンにさしていた円筒状の紙を取り出し、その端を謙吾に持たせてそれを一気に広げる。
「『噂のあの子をゲットだぜ!ドキドキ勧誘大作戦!』だ。転校生をリトルバスターズに勧誘するミッションだが、無理矢理は駄目だ。転校生が入りたいと思うような勧誘をするんだ。」
言い終わったところでチャイムが鳴り三枝はダッシュで自分のクラスへと帰り、他のメンバーもゾロゾロと自らの席へと戻っていた。
全く自由奔放な奴らだぜ…。
「恭介さんよ、自分のクラスに戻らなくても言いのかい?」
「ん?ああ、俺は転校生を見ていく」
俺は空いてる席に腰掛けた、真人は一瞬呆れた表情を見せていたがすぐ前を向きなおした。鈴の席の方から「あいつバカだ!」なんて聞こえたがきっと幻聴だろう。
「おら、お前ら席に着けー」
教師が入ってくる。教師は俺を一瞥しただけで前を向いて話し出す。スルーすることに決めたのだろう。
「もう知ってる奴も居ると思うが、今日このクラスに転校生が来る」
「入って来い」と教師が言うとざわついていたクラスの連中は途端に静まり返った。
カラカラとゆっくりと開けられるドア、3分の2ほど開いたところで転校生が入ってくる。制服が出来ていないのだろうか?出てきたスカートは学校指定のものではなかった。そして、しっかりとした足取りで教壇の中央へと歩く。
横顔を見てか男子(と来々谷)の目が光り輝いている、んだが…俺と真人と謙吾と鈴の反応は違った。俺たちは固まっていた。
転校生が90度回転してこちらを向く。推測が確信に変わり、次の瞬間には確信は確定に変わった。
「えっと、直枝 理樹《ナオエ リキ》です。よろしくお願いします」
「「「「「うおお「「「「なにーーーーーーーーーー!!!!!!!!」」」」
クラスの男子の雄たけびは俺たち四人の驚愕の声に掻き消された。
10/01/06 01:22更新 / ツチノコ