第一問 設問一
バカとテストとリトルバスターズ
第一問
秋と出会いとホームラン
「今日は朝礼があるから全員体育館へ移動」
鉄人に促されながらだらだらと体育館へと向かうFクラスの面々。
「ねえ雄二、朝礼ってやっぱりあのことかな?」
「だろうな。他にいうこともないだろうし」
「アキに坂本、何話してるの?」
「うむ、わしも気になるの」
僕と雄二の間に入るようにして会話に参加してきたのは女性としては一部分が若干物足りない(何処のことかは僕の命のために口には出さない)島田美波さんと、性別を間違えて生まれてきた美少女、木下秀吉(♂)だ。というか、二人は性別を入れ替えたらいいんじゃないかな?
「ああ、お前らは知らなかったか今日から『体験編入』の生徒が来るんだ」
「ほお、他校生と言う事はCかDクラスかの」
「いや、僕達Fクラスだって」
秀吉はとても不思議そうな顔をしていたが雄二の「学校側にも色々事情があるんだ」の一言で深く追求するのをやめた。まあ、鉄人が頼み込んだなんて言いたくても言えないしね。
「…………学校は」
「ん?ああ、あそこだよ、えーとどこだっけ雄二」
「俺も名前は忘れたが春ごろにバス事故があった学校だ」
「…………あそこはレベルが高い」
いつの間にか話題に入ってきたのは「寡黙なる性識者(ムッツリーニ)」こと土屋康太だ。僕らの話を聞いたとたん歩きながらカメラのメンテナンスを始めちゃった。全く、レベルが高いとはいえ可愛い子が来てるとは限らないのに、でも10人程度来るらしいからきっと可愛い子もいるだろうし後で焼き増ししてもらわないと。
「アキ、ぼっとしてると置いてくわよ」
美波に声をかけられて我に返った僕は小走りでみんなを追いかけた。
☆
「よく来たさね、歓迎するよ」
「こちらこそ、このような貴重な体験の場を設けていただいてありがとうございます」
「全く、本当にいい学生だよ。うちのバカガキにも見習ってもらいたいさね」
「はは、聞いた話だとFクラスはそうとうやんちゃなようですね。学園長も苦労しているようですし」
今、僕らが居るのは文月学園の学園長室。学園長と挨拶を兼ねて話をしているのは恭介だ。うーん…僕らも他人のこと言えないくらいやんちゃな気がするけどな。
「事前に言ってあるが、こちらの要望とは言え本当にFクラスでいいんだね?」
「はい、かく言う私達も勉強よりも青春を謳歌したい、と言う感じですからね」
「それはこっちも事前に聞いてるさね。まあ、こちらとしては、あのバカどもに少しでもプラスの影響を与えてくれるなら多少のことには目をつぶるつもりだからね」
学園長みたいな立場の人が仕事の場で「バカ」と言ったり、その人たちを改心させるためなら多少のことは許す宣言をするなんて、Fクラスってどれくらい酷いんだろう。
「聞いた話だとFクラスのとある生徒は1学期中に二度校舎の破壊をしたらしい」
Fクラスに若干不安を寄せていると来々谷さんが小声で話しかけてきた。
「それってどういうこと?」
「聞いた話だと言っただろう?私も詳しいことは知らん。まあ、女子風呂覗き事件で学年の男子が全員停学なんてのも有名だな」
「はい?」
「……確か首謀者がFクラスの男子4名ですよね?」
あまりの規模の大きさに目を丸くしてると西園さんが話に加わってきた。
と言うか良く見たら、僕ら以外も普通に小声で話してる。学園長も恭介との社交話に夢中になっているせいかあまりこちらを気にしていないようだし。
「まあ、面白そうなクラスでいいじゃないか。勉強ばかりの堅苦しいクラスよりもその方が私達には合っているさ」
「……それは面白いで済むんでしょうか?」
「僕もそう思うよ」
『頼んで……のは大…夫なん……か?』
『ま…、来…に……備が終……そ…さね』
恭介と学園長との会話の中に不穏当な言葉が聞こえた。心なしか恭介も目を輝かせている気がする。
「きょう――」
コンコン
恭介に何の話か問い詰めようとしたところでドアがノックされる。学園長がどうぞ、と言うとドアが開き筋骨隆々の男性が中に入ってきた。
「失礼します。学園長そろそろお時間です」
「おや、もうそんな時間かい」
「見ろよ謙吾、あいつすげえいい筋肉してるぜ」
「ふむ、確かにすごいな」
「おっと、自己紹介が遅れたな。俺はFクラス担任の西村だ。これから約二週間よろしく頼む」
僕らもよろしくお願いしますと頭を下げた。西村先生はFクラスのSHLがあるので、と言って先に出て行った。
「じゃあ、あたしらも行こうかね」
「おっと、学園長少し待ってくれ」
「なんだい?」
「いや、俺等流の気合入れをな」
そう言って恭介が僕をチラリと見る。僕はみんなを見回す。みんな準備は出来ている。僕は言った。
「ミッションスタート」
☆
『…と言うわけでこちらが今日から来週の金曜日までみんなと勉学に励む方達です』
「何というかすごいね」
「そうだな、これだけレベルの高い女子が6人も居るうえにタイプが被っていないとは」
「男子の方もレベルが高いのう」
確かに普段はあまり騒がない女子も若干色めきたってるように見える。男子は言うまでも無くざわついている。
「…………!!(パシャパシャパシャパシャ!)」
ムッツリーニも指の動きが見えない位写真を撮っている。あの強さであれだけ連打したらカメラが壊れるんじゃないだろうかって位に連打してる。
「ムッツリーニ、いくらなんでも撮りすぎじゃ―」
「…………1枚100円」
「3ダースくらい貰おうかな。ほら、鉄人もこっちを睨んでるよ」
「明久、注文してるぞ」
はっ!何時の間に!
「土屋、アキの分は印刷しなくていいわよ。…きっと要らなくなるだろうから」
「そうですね美波ちゃん、そんなの明久君には必要ありませんものね」
そして、前に並んでたはずの二人は何時の間に僕の後ろに回りこんだんだろう、途轍もない殺気が出てるはずなのに全く気づかなかったよ。
「ってこれじゃ僕の身が危ない雄二に助けを―」
「……雄二、浮気は許さない」
「ま、待て翔子!これは浮気じゃぎゃあああああああ!!」
うん、僕は何も見ていない。
「明久君」
「覚悟は出来てるわね」
「あ、あはは二人とも何のことを言ってぎゃああああああ!!姫路さん首はそっちに回らな―って美波!肘をそんなに曲げたら僕の骨が出ちゃう、開放骨折しちゃう!!」
その後、飛んできた鉄人に頭蓋がミシミシいっていた雄二と、首と両肘があらぬ方向を向いていた僕だけが殴られた。理不尽だ。
第一問
秋と出会いとホームラン
「今日は朝礼があるから全員体育館へ移動」
鉄人に促されながらだらだらと体育館へと向かうFクラスの面々。
「ねえ雄二、朝礼ってやっぱりあのことかな?」
「だろうな。他にいうこともないだろうし」
「アキに坂本、何話してるの?」
「うむ、わしも気になるの」
僕と雄二の間に入るようにして会話に参加してきたのは女性としては一部分が若干物足りない(何処のことかは僕の命のために口には出さない)島田美波さんと、性別を間違えて生まれてきた美少女、木下秀吉(♂)だ。というか、二人は性別を入れ替えたらいいんじゃないかな?
「ああ、お前らは知らなかったか今日から『体験編入』の生徒が来るんだ」
「ほお、他校生と言う事はCかDクラスかの」
「いや、僕達Fクラスだって」
秀吉はとても不思議そうな顔をしていたが雄二の「学校側にも色々事情があるんだ」の一言で深く追求するのをやめた。まあ、鉄人が頼み込んだなんて言いたくても言えないしね。
「…………学校は」
「ん?ああ、あそこだよ、えーとどこだっけ雄二」
「俺も名前は忘れたが春ごろにバス事故があった学校だ」
「…………あそこはレベルが高い」
いつの間にか話題に入ってきたのは「寡黙なる性識者(ムッツリーニ)」こと土屋康太だ。僕らの話を聞いたとたん歩きながらカメラのメンテナンスを始めちゃった。全く、レベルが高いとはいえ可愛い子が来てるとは限らないのに、でも10人程度来るらしいからきっと可愛い子もいるだろうし後で焼き増ししてもらわないと。
「アキ、ぼっとしてると置いてくわよ」
美波に声をかけられて我に返った僕は小走りでみんなを追いかけた。
☆
「よく来たさね、歓迎するよ」
「こちらこそ、このような貴重な体験の場を設けていただいてありがとうございます」
「全く、本当にいい学生だよ。うちのバカガキにも見習ってもらいたいさね」
「はは、聞いた話だとFクラスはそうとうやんちゃなようですね。学園長も苦労しているようですし」
今、僕らが居るのは文月学園の学園長室。学園長と挨拶を兼ねて話をしているのは恭介だ。うーん…僕らも他人のこと言えないくらいやんちゃな気がするけどな。
「事前に言ってあるが、こちらの要望とは言え本当にFクラスでいいんだね?」
「はい、かく言う私達も勉強よりも青春を謳歌したい、と言う感じですからね」
「それはこっちも事前に聞いてるさね。まあ、こちらとしては、あのバカどもに少しでもプラスの影響を与えてくれるなら多少のことには目をつぶるつもりだからね」
学園長みたいな立場の人が仕事の場で「バカ」と言ったり、その人たちを改心させるためなら多少のことは許す宣言をするなんて、Fクラスってどれくらい酷いんだろう。
「聞いた話だとFクラスのとある生徒は1学期中に二度校舎の破壊をしたらしい」
Fクラスに若干不安を寄せていると来々谷さんが小声で話しかけてきた。
「それってどういうこと?」
「聞いた話だと言っただろう?私も詳しいことは知らん。まあ、女子風呂覗き事件で学年の男子が全員停学なんてのも有名だな」
「はい?」
「……確か首謀者がFクラスの男子4名ですよね?」
あまりの規模の大きさに目を丸くしてると西園さんが話に加わってきた。
と言うか良く見たら、僕ら以外も普通に小声で話してる。学園長も恭介との社交話に夢中になっているせいかあまりこちらを気にしていないようだし。
「まあ、面白そうなクラスでいいじゃないか。勉強ばかりの堅苦しいクラスよりもその方が私達には合っているさ」
「……それは面白いで済むんでしょうか?」
「僕もそう思うよ」
『頼んで……のは大…夫なん……か?』
『ま…、来…に……備が終……そ…さね』
恭介と学園長との会話の中に不穏当な言葉が聞こえた。心なしか恭介も目を輝かせている気がする。
「きょう――」
コンコン
恭介に何の話か問い詰めようとしたところでドアがノックされる。学園長がどうぞ、と言うとドアが開き筋骨隆々の男性が中に入ってきた。
「失礼します。学園長そろそろお時間です」
「おや、もうそんな時間かい」
「見ろよ謙吾、あいつすげえいい筋肉してるぜ」
「ふむ、確かにすごいな」
「おっと、自己紹介が遅れたな。俺はFクラス担任の西村だ。これから約二週間よろしく頼む」
僕らもよろしくお願いしますと頭を下げた。西村先生はFクラスのSHLがあるので、と言って先に出て行った。
「じゃあ、あたしらも行こうかね」
「おっと、学園長少し待ってくれ」
「なんだい?」
「いや、俺等流の気合入れをな」
そう言って恭介が僕をチラリと見る。僕はみんなを見回す。みんな準備は出来ている。僕は言った。
「ミッションスタート」
☆
『…と言うわけでこちらが今日から来週の金曜日までみんなと勉学に励む方達です』
「何というかすごいね」
「そうだな、これだけレベルの高い女子が6人も居るうえにタイプが被っていないとは」
「男子の方もレベルが高いのう」
確かに普段はあまり騒がない女子も若干色めきたってるように見える。男子は言うまでも無くざわついている。
「…………!!(パシャパシャパシャパシャ!)」
ムッツリーニも指の動きが見えない位写真を撮っている。あの強さであれだけ連打したらカメラが壊れるんじゃないだろうかって位に連打してる。
「ムッツリーニ、いくらなんでも撮りすぎじゃ―」
「…………1枚100円」
「3ダースくらい貰おうかな。ほら、鉄人もこっちを睨んでるよ」
「明久、注文してるぞ」
はっ!何時の間に!
「土屋、アキの分は印刷しなくていいわよ。…きっと要らなくなるだろうから」
「そうですね美波ちゃん、そんなの明久君には必要ありませんものね」
そして、前に並んでたはずの二人は何時の間に僕の後ろに回りこんだんだろう、途轍もない殺気が出てるはずなのに全く気づかなかったよ。
「ってこれじゃ僕の身が危ない雄二に助けを―」
「……雄二、浮気は許さない」
「ま、待て翔子!これは浮気じゃぎゃあああああああ!!」
うん、僕は何も見ていない。
「明久君」
「覚悟は出来てるわね」
「あ、あはは二人とも何のことを言ってぎゃああああああ!!姫路さん首はそっちに回らな―って美波!肘をそんなに曲げたら僕の骨が出ちゃう、開放骨折しちゃう!!」
その後、飛んできた鉄人に頭蓋がミシミシいっていた雄二と、首と両肘があらぬ方向を向いていた僕だけが殴られた。理不尽だ。
10/02/28 10:34更新 / ツチノコ