読切小説
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あいさかけ番外編 -私、ホントは-
あ、ありのまま、さっき起こったことを話すわ…!
『あの笑夢姉さんが、久々にキレた』
な、何を言っているのか分からないと思うけど、あたしも何されたかサッパリ分からなかった。

頭がどうにかなりそうよ。

倒錯とか、そんなチャチなものじゃ断じてないわ!
もっと恐ろしいものの、片鱗を味わった気がするの…。
(相坂 時流 談)

【語り・相坂時流】
ある日の昼下がり。
「ねーカズくーん、ちゃんと支えててねー?」
「う、うん」
ゆりが突然ポスターを貼りたい、と言い出したの。
貼ろうとしたのは、さっき笑夢姉さんとあたしと榛希とカズ坊で遊びに逝って来たゲームセンターの記念品。何故かDoラちゃんのポスターという、これまたコアなアイテムだけど、姉さんが取ってくれたから、とはしゃいでたっけ。
あたし?榛希と一緒に競馬ゲームに興じてたわ。
えぇ、そりゃもう天使の力をチートに使い放題。大穴当てまくり。
彼途中から真っ青になってたっけ。え、リアルの競馬?
行かないわよ。儲け過ぎてこの世界の金融に打撃を与えたくないわ。
でも途中からメダルの山に流石に店員さんも涙目になってたし、やめてあげた。次回から行けなくなったらつまらないもの。
ゲーセン、昔お忍びで人間界に来たとき以来だけど、あの頃は確か…そう!スペー○イン△ーダーってドコに消えたのかしら。懐かしすぎるわね…。

と、脱線脱線。

そのドRaちゃんなポスターを一生懸命貼るゆり。
ろくに高くない身長で必死になるあたり、笑夢姉さんが萌えるのも分かる気がするわ。こう、小動物?いいえ、蹴伸びするアマガエル?後で怒られそうだからやめとこ。
しかしまぁ、アレよ。
ミニスカートで椅子の上に乗って必死で伸びるゆり。
幸いあたしが座っている位置からは見えないけど、下にいるカズ坊は。
ほら、気になるのか前かがみよ。
ったく、俺はストイックだ!なんてオーラ出しながらとんだムッツリね。
これはどこかの蛇口が壊れた誰かさんといい勝負じゃない。応援してるわよ。
ともあれ、ホントにムッツリ。
もう読者諸君はあえて言わなくても分かってるでしょ。
ゆりのパンツよ。まったく。警戒心ない愚妹も悪いのだけれど。
ちょっとは注意してやるとか、そういうのがあってもいいんじゃない?
そんな風に思いながら、アールグレイを一口。うん、温かくて美味しい。

そんなときだった。
「カズくーん、ちゃんと押さえてるー?」
「う、うん、大丈夫!大丈夫だから!」
「ほんとー?」
ゆりがお尻に感じる妙な視線に身体を動かした。
ってかそれでも気付かないのねこの愚妹は。きっと痴漢さんが堪能した後に気づくんじゃないかしら。ってそれはいくらなんでもないか。
でもカズ坊も成長したわね。
出逢った頃は谷間を見せるだけで目をそらしてたのに、今じゃコレよ。
ゆりが気付いてないと知るとまた少し前かがみ。思春期大爆発ね。
おねーさん嬉しいわ。
っと。
「カズくーん、なんか視線を感じるよー?」
「ど、どどどど、どこに!?」
ど、どどどどど童貞ちゃうわ!でしょそこは。ボケのセンスないわね。
「お尻ー」
「え、そ、そそそそ」
「きゃっ!」
ほら、動揺するからそうなるのよ。
ゆりが乗ってる椅子は背もたれの無い、普通の丸椅子。
それがカズ坊の手で保持されているのだから、彼が動揺すれば揺れてしまうのは当然。あーあ、バランス崩しまくり。
え、天使の力でなんとかしろって?イヤよ面倒臭い。
それにほら、倒れたら倒れたで何か面白そうなシチュエーションじゃない。


案の定、椅子が倒れる。
カズ坊、ゆりを庇う。
ゆり、何故か半回転。
カズ坊、支えきれず。

ちょうどバックで…げふんげふん。カズ坊がゆりを後ろから襲っている感じに倒れこむ。直後、音を聞きつけた笑夢姉さんが飛び込んでくる。

「ゆりちゃん!いま大きな音が…ッ!?」
「あーあ、姉さんタイミングよすぎよ」

そして、張り詰める空気。冒頭に戻る。


==============笑夢VIEW===============

こんにちは!あなたの街の笑夢です!w
っと、今日は珍しくはしゃいでしまいましたw
ゆりちゃんが大好きなどらChanのポスターも取ってあげたし、久々にいいお姉ちゃんになった感じです。さぁ、明日からまたお仕事ですね。頑張らないと。
問題集を作るのも大変だけど、生徒さんたちのためです。
みんなには、いい学校に進むことも大事だけど、知識溢れるいい大人になって欲しいから。さぁ、頑張りましょう!w

どすーん

っと、大きな音がしました。
これは…隣のゆりちゃんの部屋から!?
なんてことでしょう!ゆりちゃんに怪我でもあったら…っ!
そんな最悪のシナリオを考えながら、私は音がした場所に全力疾走。
…って30歩もかからないじゃないですか!ばたんっ!

=====================================

「いつつつつ…ッ!?」
「お膝とお尻、いたたい…っ」
笑夢姉さんの目の前には、ちょっと危険なポジショニングの二人。
一気に笑夢姉さんの顔から血の気が引き、そして。


ゴゴゴゴゴゴゴ

この霊圧を、一度感じたことがあるわ。
そう、あれは。

お父様が、笑夢姉さんの部屋に無断で入り、机の上の色々アブないことを殴り書きしたノートを見てしまったとき…。
あの時はそう、確か天界の事業の一部が滞ったわね。

「カズさん、何をしているんでしょうか?」
「え、あっ!」
で、今頃気付いても遅いわよ。もうあんたはロックされてるわ。
せめてあんたが五体満足で生還できることを祈ってるから、ね?
「そ、その、ば、バランスを崩して!そう!足がふらついて!」
「あらあら、それは大変ですねw」
「そ、そうですねー!」

チャキッ。
白刃が煌めく。
その霊子のカタマリは。
「姉さん!人間界でグングニルはアレだけ出すなって!」
「時流さんは黙っててくださいね。お相手は後で好きなだけして差し上げますから」
あー。ダメだこりゃ。姉さん本気だわ。カズ坊乙。
「え、えーと、笑夢先生、そ、ソレは!?」
答えなどなし。その代わりの解答は。


「そのヤクタタズの両手足、叩き斬ってあげますよ」
何が起こったのやら。それは語りたくないわ。
続きは次回?
10/04/09 01:06更新 / 相坂 時流

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 キタコレ 12/04/11 12:20 評価:とても良かった!
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