その2
そうこうしているうちにお昼時で賑わう模擬店の通りをぬけ、講堂前。
正面に掲げられた時計の針は12時20分。
入れ替え時間なのか、直後にドアが開いて少しお客さんが外に出てくる。
「もったいない話だ、この後は絶対にいいものが観られるのに」
「ま、それは人それぞれですからネ」
「わふー、とっても楽しみなのですっ。席があいてるといいですね」
「・・・かなり前のほうで、左側一列だけあいてるみたいだね」
みんなでそこに陣取る。
いっちばーん!って駆け込んだ葉留佳さんは当然ながら結局一番端っこになり、
そのあと僕、クド、唯湖さんの順番で席に着く。
お客さんの入りはすでにほぼ満席、盛り上がってるなぁ。
立ち見で妥協あるいは遠慮している人たちも少しいるくらい。
半分くらいは桜丘の制服姿の女子、
残りは先生方あるいはOBもしくは保護者・親戚筋みたいな人たち、
それより少し少ない割合で招待客みたいな雰囲気の人たち。
・・・はっきり言って、ゴスロリって思いっきりめだってるよね。
女子高、だからか、うらやましそうな視線は多そうだけど。
特に唯湖さんと葉留佳さんは、もともとただでさえ人目を引く人たちだし。
30分前からはじまったのは落語研のステージ。
(これも結構面白かった。
笑点を意識した大喜利構成なんだけど、ネタの工夫が利いてるのと本家大喜利のパロディを織り交ぜたことがうまく働いていて、なかなかの出来。
来ヶ谷さんがクックッと笑うくらい。いわんやクドは大喜びだし葉留佳さんは暴走入りかけ。
止めるのが結構大変だった・・・)
これが終了するといったんカーテンが閉まり、中でがたがたと設置音。
その間にさらに人が増え、しかも場内が期待に充ちてくるのを感じる。
落語研のときにはきっちり働いていたエアコンが、人の熱気に押され始めてる。
「わふー、すごい人気みたいですね・・・」
クドが話しかけてくる。
パンフレットを眺めていた葉留佳さんが笑い出す。
「スゴイ曲名ですな、”ふでぺん〜ボールペン〜(新曲!)”・”私の恋はホッチキス”・
”ふわふわ時間”だって。姉御に聴かせて貰ったのは、プチハードなくらいなのに」
軽いチューニング音がおさまる。
「詩はタイトルそのまんまだよ。そのへんのギャップも彼女たちの持ち味だな」
「かっこいい音がしてましたねー。早くもドキドキしてきましたー」
クドが手を胸の前で合わせると、
「次は軽音楽部、「放課後ティータイム」による、ライブを開始します」
のアナウンスに重なって、場内が減光され、そしてステージのカーテンが引き上げられる。
期待に彩られた黄色い歓声が静まった一瞬をついて。
ドラムスティックの乾いたリズムが3回響いて、演奏がはじまった。
おしとやか、おっとりに見える桜丘の制服姿の女の子たちの、早くも何人もが立ち上がって手を振り出すのが目に入る。
・・・女性5人のバンドにしては重量感ある低重心なサウンド。
特にドラムのパワフルさは強烈に意識させられる。
それにあおられて、すぐに僕の両隣、葉留佳さんとクドが立ち上がってリズムをとりだす。
「やっぱ生の演奏はいいですネー!」
葉留佳さんは速攻でノリノリ。
「わふー、すっごいかっこいいのです、痺れちゃいます!」
クドなんてぴょんぴょん跳ねてる。ヒール大丈夫かな?
ステージの子たちは、一人を除いてすごく個性的なコスチュームをしてる。
浴衣をベースにしているみたいだけど、上も少しボリュームを持たせたうえで下は思い切って裾を短くした、ミニスカート風。
もしかして一人は顧問の先生?結構な長身の黄色いジャケット姿。
彼女と、向かって右手奥にいるツインテールの青い浴衣姿の子がギターかな。
地味だけど枯れた味があって、何よりも恐ろしいくらい正確なセカンドギターに、
寄り添いつつもハードな色をつけるリードギター。
左手奥にいる、緑色の浴衣を着た子がキーボード。
あ、こっち向いた瞬間に軽く手を振った。
それに合わせて、座ったままでリズムをとってた来ヶ谷さんが軽く手を上げた。
彼女が来ヶ谷さんの友達なのかな。
ボーカルをとってる、菫色の浴衣を着たすごく長い黒髪の子がベースだと思う。
いまどき流行りの歌姫と言われてる人たちより、
少し軽いけどその分優しさを帯びた綺麗な声。
うん、素直に可愛いな。ちょっと見た目は唯湖さんに近いけど、性格は違うみたい。
で、ドラム。黄色い浴衣のイメージそのまま、並みの男性ドラマーを後ろから蹴り倒すような勢いでリズムが弾ける。体力的にも大変だと聞くバス・そしてスネアドラムから、
やや荒っぽくちょっとリズムが乱れがちだけど、叩き出される音はタフそのもの。
ただ、ちょっと気になることも。
演奏はすごくいいのに、あんまり笑顔がみえない。
かなり近い席だから彼女たちの表情まで目に入るから、余計違和感が。
割り切ってる様子の先生らしい人はともかく、他の4人は何かを心配でもしているかのように思える。
観客席でもあれ?という反応は見える。
「ゆい先輩がいないね」
「山中先生ってギター弾けたんだ」
という声がかすかに聞こえてくる。
一人いないのかな・・・
そういえば。
「5人編成だと聞いている。リードギターの唯君、セカンドギターの梓君、ベースの澪君、ドラムの律君、それからキーボードの紬君」
どうやら唯君がいない、ということだな。
来ヶ谷さんはそう言った。
そうしているうちに。
休みなしに突入する2曲目。
1曲目より少し抑えた演奏に自然に手拍子が乗る。後半になってギターが交わるように盛り上がるけど、手拍子は変わらない。
むしろ聴衆がみんなで後押しするよう。
いろいろと気になっていた僕も、次第にその手拍子に乗って、曲に集中し始める。
素直にいい曲だな。
リズムセクションが少しおとなしい分、澪さんのボーカルのとろけるような甘さをより感じさせる。
詩は真面目に聞くと結構・・・アレだけど、ちょっと歌詞カードで読んでみたいかな。
「基本はきっちりできてるな。確かに言葉の選び方は背中が痒くなる部分もあるが、そんなことは個性のうちだ。へたくそな韻を踏もうとして、結局言葉が定型化してる似非プロ連中より、よっぽど自分の感性に素直だよ。
結果としてそれが、詩がうまく曲を御せている理由なんだろうな」
たとえば、井上陽水みたいな?
まあ陽水は天才だけどな。あれは真似できるものじゃない。
両脇でぽんぽん跳ねて声援を送る二人の脇で、こっそり会話を交わす。
それに気がついたクドが。
「リキ、来ヶ谷さん、お話してないで一緒に!」
と促してくる。
汗びっしょりだけど本当に楽しそう。葉留佳さんも手を振り上げて奔ってる。
「私が立ち上がると後ろに迷惑だからな、理樹君はクドリャフカ君と一緒に」
と言われたそのとき。
「お姉ちゃんがんばって!」
という声が後ろで聞こえた。
「おー!」
という返事も聞こえ、その直後に僕たちの横を、一人の桜高の制服姿の女の子が走り抜けた。背中にギターをしょってる。
・・・通り過ぎた刹那、目が合ったような。
その姿を捉えた舞台上のみんなが、明らかにほっとした顔をみせた。
そして、ちょうど演奏が終わる。
通路を走り抜けた彼女は、しばらく肩で息をしていたけど、すぐにギターをしょったまま、ステージ下から直接舞台に乗った。
バンドのメンバーが集まる中、膝を乗せ損ねて舞台上でよろけるけど、何とか踏ん張って立ち上がる。
「さわちゃん先生、ありがとう」
彼女の第一声はそれだった。
なにか理由があって離れてたのだけど、代わりにギターを弾いてくれた先生に対する、
澄んだ感謝の言葉。
代役を務めきった先生は、クスリと微笑したのちに、
「じゃ、あとはがんばりなさい」
「山中先生、かっこいいー!」という声の中、振り返らずに舞台袖に消える。
「みんな、本当にごめんなさい。・・・よく考えたら、いつもいつもご迷惑を・・・、
こんな、だ、だいじなときに・・・」
悔悟の涙に濡れた声に、澪さんと律さんが歩み寄る。
「せめて、タイくらいちゃんと結べ」
黒髪の少女が、そう言ってリボンタイを結びなおす。
「みんな、唯が大好きだよ。間に合ってよかった」
おデコの少女がそう言って、そっと首に抱きつく。そのままぽんぽん、と肩を叩く。
「唯ちゃん、泣かないで」
どこかから取り出したハンカチで、唯さんの顔と涙を拭う紬さん。
そして唯一の後輩と聞く梓さんが、その様子を本当に嬉しそうに見つめている。
「がんばってー!」
「唯ー!!」
「お姉ちゃーん!」
暖かい声が会場を彩る。
「わふー、大変だったのですね・・・。間に合って何よりでした」
「姉御姉御ぉ、あの子がメインボーカルなんですよね?
私、あの子の声、MP3で聴いたときから好きなんですヨ。
最近の女性ボーカルって、なんかみんなうまく「見せよう」としてるみたいな大根足な低音系ばっかりなんですもん」
「私もその低音系だが?」
「イヤイヤイヤ、姉御は似合ってるし普段からだからいいのですヨ。
でもほんととにかく、技量が足りなくて声域も狭いのを、
低い声で誤魔化してるようなのばっかりだから」
「それは少し違うだろう。無理に高音を出すくらいなら低いとこに集中するのはそれは選択のうちだ。基本的に、ハイトーンは個性がでにくいし才能でしか出せないしな」
などという言葉を交わしてる間に、涙をとめてギターを取り出した唯さんのMCが始まっている。彼女だけはさすがに制服姿のまま。
「・・・ギー太も忘れてごめん」
苦笑の細波が会場を揺らす。
「わき目もふらずに練習してきたなんてとても言えないけど・・・
でも、ここが、今みんなのいるこの講堂が、私たちの武道館です。
最後まで思いっきり歌います、ふわふわタイム!」
すぐにそれが歓声と手拍子に代わり、3曲目がスタート。
俄然演奏に華やかさと楽しさが乗った。
これが本当の彼女たちなんだ。
うん、すごい。
もう、それしか出てこない。
笑顔が溢れるだけで、たったそれだけで、音楽はまたひときわ煌く。
「・・・本当信じられないな、これが高校生のグルーブか。
しかも唯くんにいたっては、確か部に入ってからギターを始めたと紬くんから聞いたが。
だとしたら、彼女は天才だな」
もう止まらない両脇の二人の横で、来ヶ谷さんが本当に感心したようにつぶやく。
いつのまにか、彼女も指と脚でリズムをとってる。
そして唯さんが加わったとたんに、澪さんのボーカルにも余裕ができる。
どちらかがコーラスではない、ツインボーカル。
ユニゾンにあえて徹してることで、しなやかさと力強さを同時に引き出せてる。
「ツインボーカル最高!放課後ティータイムさいっこう!!」
葉留佳さんが絶叫。
「わふー、もっともっと!!なのですっ」
クドは勢いあまって僕のところに飛び込んでしまう。
「もしかしたら僕たちは、伝説が生まれる瞬間に立ち会えているのかもしれないよ・・・」
クドを助け起こしながら、そう思わずにいられない。
「えへ、ありがとです、リキ」
「大丈夫?気をつけて、クド」
言ってる先から、小さな体でまた熱狂の旋風に飛び込んでく。
いつの間にか、ステージ直前にかなりの女の子が集まってる。
葉留佳さんなんか、彼女たちの中で、一緒に肩を組んで腕を突き上げてる。
そしてエンディング。
旋風からの、唐突な沈黙。
・・・そこから。
ひたすらキーボードに徹してた紬さんが飛び出す。
汗びっしょりの貌にとび切りの笑顔で。
律さんがにやりと笑って追いかけ、
澪さんがビートに跳び乗り、
梓さんがコードを重ねて、
最後に満面の笑顔とともに唯さんが、
振り返って締めのアンコール。
・・・いいな。
恭介たちにも見せたかった。僕たちだけじゃもったいない。
本当にそう思える。
「ありがとー、みんなー!!けいおん大好きー!!!」
「りっちゃん、もう一曲!」
「よっしゃー、いっくぜー!!」
「ちょっと、唯!」
「あ、のどかちゃん」
「もう時間切れよ!」
「えー!?」
あ、オチがついた。
さすがにテンションが上がりすぎて、ちょっとぐったりした様子のクドが心配になって、
僕たちは軽音部が引き上げたところで外にでた。
僕たちを校内の樹たちが冷やした風と、
葉に突進を阻まれて優しさだけが残った陽の光が包み込む。
4人で大きく深呼吸し、空気と体温を入れ替えて、芝生に座る。
「すごかったですー。ほんとにこれしかいえないですー・・・」
自分で持ってきた水筒をそそいで、ほっと一息のクド。
「いやー姉御、やっぱり音楽は生ですナ。
圧縮されたポータブルプレイヤーなんて何も伝えていないって、実感させられましたヨ」
汗を拭い、腰を伸ばしながら葉留佳さん。
「それも少し違うぞ、何よりも彼女たちは、少なくとも「本物候補生」だからだな」
クドに水筒を分けて貰いながら、クールな普段よりは熱の入った来ヶ谷さん。
「僕はそのへんはわからないけど、ただ感動したよ。
もっと普段から聴いてみたいな、それに恭介や鈴たちにも聴いてほしい」
音楽で感動したの、本当に久しぶりだった。
「しまったですね、マイク持ち込んで録音すれば良かったですヨ」
「さしずめボブ・ディランの”グレート・ホワイト・ワンダー”か。」
「きっと将来、高く売れますよ、姉御」
「葉留佳さん、それはめっ、なのですっ」
「やだなぁ、本気でするわけないじゃんか・・・
クド公、突っ込みたぁ生意気な。ちょっとくすぐっちゃる!」
「わふー、やめてくださいなのです葉留佳さん!」
なんてじゃれてるところで。
足音ひとつ。
「こちらにいらっしゃったんですね、来ヶ谷さん」
「ああ、すまなかった。挨拶が遅れたな」
キーボードをやってた、ふんわりした空気をもつ人。
たしか、琴吹 紬さん。
ジャージに着替えているせいか、ステージの熱はすでにおさまってる風。
このとても綺麗な人が、唯湖さんの友達なのか。
「あら、かわいらしい方がお2人もいらっしゃるんですね。
それに格好いい方もお2人、ですね」
「ああ、話しておいた”会わせたい友人”たちだ」
「はじめまして、ですね。放課後ティータイムのキーボード、琴吹紬と申します。
ぜひ気軽に、”ムギ”と呼んでくださいね」
・・・大人だ。それも怜悧な唯湖さん、佳奈多さんとはまた違うタイプの。
育ちのよさ、を自然に納得させる。
「わ、本物だ」
がばっと立ち上がる葉留佳さん。本物も何も・・・。
「はじめまして、来ヶ谷さんを姉御、と慕う三枝葉留佳です。
さっきのライブ、もうノリノリでした。
こちらこそはるちん、はるにゃん、はーたん、ぜひぜひ気楽に呼んでください!」
「後輩さんなのですか?」
「いやー同学年ですヨ。
でもなんていうか貫禄が違いすぎますし、なにしろ格好いい人ですから、
つい慕いたくなっちゃってって感じです」
「そうなんですか、では私たちとも同学年ですね、ぜひ仲良くさせてくださいね」
「・・・うー、育ちのよさをびんびんに感じますネ。
これこそまさしくお嬢様、いや、お姫様!」
「あらあら。でもどうぞお気軽に。」
「はい、ぜひぜひ!」
もはや執事もなにもなくなってる。
講堂に入る前は結構「すごく格好いい女執事がいる」なんてひそひそ言われてたこと、
もう頭の中には残ってないんだろうな。
というかちょっと一押ししたら、それこそ彼女の執事に立候補しそうな勢い。
「あ、それから。こちらの可愛い方々は?」
「うむ、葉留佳君がおさまるまでちょっと待っていようかと思っていた。
まずこちらが能美クドリャフカ君。ロシア系のクォーターなんだ。
それからこっちが直枝理姫君。理科に姫と書いて、”りき”と読むんだ」
「まあ、この方がたが?」
よくメッセで話題にされていますよ、来ヶ谷さんが。
「えー、はるちんは話題にしてもらえてないんですか?」
「いえいえ、そんな。」
とは言っても、さすがの紬さんでもちょっと苦笑は隠しきれないみたい。
「ただ、特によく聞かせていただいてるお名前でしたから」
そう言って、穏やかな、というよりもやわらかい微笑を僕たちにみせる。
「どうぞよろしくお願いします。ぜひ”ムギ”と呼んでくださいね」
「こちらこそ。僕のことは”リキ”と呼び捨てでいいですよ」
「あ、あのあの、ご挨拶が遅れて申し訳ありませんっ。能美クドリャフカと申します。
さきほどの演奏、もうほんっとーに感動しましたっ」
「リキさんと、クドリャフカさんでいいのかしら?・・・クドリャフカって、素敵なお名前ですね」
「クド、でかまいません。リトルバスターズではみんなそう呼んでます。あ、小毬さんは「クーちゃん」ですね」
「では私も、そうしますね。「クーちゃん」、いいですね」
ハートマークを自然に添えたくなる響きで、彼女はにっこりと笑った。
「・・・あ、たいへん。片付けに戻らないと」
「機材のか。ぜひ私たちにも手伝わせてくれ」
「いえ、お客様にそんな」
「何をいう、私たちは友達になりにきたんだ。それくらいさせてくれ」
さりげなく来ヶ谷さんが押し切って、撤収の手伝いを僕たちは始める。
・・・僕はこれでも男だから何とかなるけど、女の子たちだけだと結構手に余りそうな機材の量。しかも搬入先は3階の音楽室。
ムギさんが来ヶ谷さんに負けない力持ちなのにはちょっと目を見張ったけど、いきなり手伝いを始めた派手な格好の4人に、
軽音部のメンバーからは、びっくりされるかと思いきやあっさり感謝された。
ドラムの律さん・・・部長と聞いた・・・は、あっさり仕事を割り振って仕切ってくれるし。しかもなぜか、名前をちゃんと知ってくれてた。
クドだけはあっさり引き抜かれ、「梓と一緒にお茶の準備して」と言い渡されたけど。
まあそれはそうだろうね。
ちなみに実働してたのは、結局来ヶ谷さん、ムギさん、律さん、澪さんと僕。
葉留佳さん?・・・唯さん、顧問の先生とたちまち馴染んで梓さんとクドにちゃっかり給仕してもらってたのは、予想通りということで。
正面に掲げられた時計の針は12時20分。
入れ替え時間なのか、直後にドアが開いて少しお客さんが外に出てくる。
「もったいない話だ、この後は絶対にいいものが観られるのに」
「ま、それは人それぞれですからネ」
「わふー、とっても楽しみなのですっ。席があいてるといいですね」
「・・・かなり前のほうで、左側一列だけあいてるみたいだね」
みんなでそこに陣取る。
いっちばーん!って駆け込んだ葉留佳さんは当然ながら結局一番端っこになり、
そのあと僕、クド、唯湖さんの順番で席に着く。
お客さんの入りはすでにほぼ満席、盛り上がってるなぁ。
立ち見で妥協あるいは遠慮している人たちも少しいるくらい。
半分くらいは桜丘の制服姿の女子、
残りは先生方あるいはOBもしくは保護者・親戚筋みたいな人たち、
それより少し少ない割合で招待客みたいな雰囲気の人たち。
・・・はっきり言って、ゴスロリって思いっきりめだってるよね。
女子高、だからか、うらやましそうな視線は多そうだけど。
特に唯湖さんと葉留佳さんは、もともとただでさえ人目を引く人たちだし。
30分前からはじまったのは落語研のステージ。
(これも結構面白かった。
笑点を意識した大喜利構成なんだけど、ネタの工夫が利いてるのと本家大喜利のパロディを織り交ぜたことがうまく働いていて、なかなかの出来。
来ヶ谷さんがクックッと笑うくらい。いわんやクドは大喜びだし葉留佳さんは暴走入りかけ。
止めるのが結構大変だった・・・)
これが終了するといったんカーテンが閉まり、中でがたがたと設置音。
その間にさらに人が増え、しかも場内が期待に充ちてくるのを感じる。
落語研のときにはきっちり働いていたエアコンが、人の熱気に押され始めてる。
「わふー、すごい人気みたいですね・・・」
クドが話しかけてくる。
パンフレットを眺めていた葉留佳さんが笑い出す。
「スゴイ曲名ですな、”ふでぺん〜ボールペン〜(新曲!)”・”私の恋はホッチキス”・
”ふわふわ時間”だって。姉御に聴かせて貰ったのは、プチハードなくらいなのに」
軽いチューニング音がおさまる。
「詩はタイトルそのまんまだよ。そのへんのギャップも彼女たちの持ち味だな」
「かっこいい音がしてましたねー。早くもドキドキしてきましたー」
クドが手を胸の前で合わせると、
「次は軽音楽部、「放課後ティータイム」による、ライブを開始します」
のアナウンスに重なって、場内が減光され、そしてステージのカーテンが引き上げられる。
期待に彩られた黄色い歓声が静まった一瞬をついて。
ドラムスティックの乾いたリズムが3回響いて、演奏がはじまった。
おしとやか、おっとりに見える桜丘の制服姿の女の子たちの、早くも何人もが立ち上がって手を振り出すのが目に入る。
・・・女性5人のバンドにしては重量感ある低重心なサウンド。
特にドラムのパワフルさは強烈に意識させられる。
それにあおられて、すぐに僕の両隣、葉留佳さんとクドが立ち上がってリズムをとりだす。
「やっぱ生の演奏はいいですネー!」
葉留佳さんは速攻でノリノリ。
「わふー、すっごいかっこいいのです、痺れちゃいます!」
クドなんてぴょんぴょん跳ねてる。ヒール大丈夫かな?
ステージの子たちは、一人を除いてすごく個性的なコスチュームをしてる。
浴衣をベースにしているみたいだけど、上も少しボリュームを持たせたうえで下は思い切って裾を短くした、ミニスカート風。
もしかして一人は顧問の先生?結構な長身の黄色いジャケット姿。
彼女と、向かって右手奥にいるツインテールの青い浴衣姿の子がギターかな。
地味だけど枯れた味があって、何よりも恐ろしいくらい正確なセカンドギターに、
寄り添いつつもハードな色をつけるリードギター。
左手奥にいる、緑色の浴衣を着た子がキーボード。
あ、こっち向いた瞬間に軽く手を振った。
それに合わせて、座ったままでリズムをとってた来ヶ谷さんが軽く手を上げた。
彼女が来ヶ谷さんの友達なのかな。
ボーカルをとってる、菫色の浴衣を着たすごく長い黒髪の子がベースだと思う。
いまどき流行りの歌姫と言われてる人たちより、
少し軽いけどその分優しさを帯びた綺麗な声。
うん、素直に可愛いな。ちょっと見た目は唯湖さんに近いけど、性格は違うみたい。
で、ドラム。黄色い浴衣のイメージそのまま、並みの男性ドラマーを後ろから蹴り倒すような勢いでリズムが弾ける。体力的にも大変だと聞くバス・そしてスネアドラムから、
やや荒っぽくちょっとリズムが乱れがちだけど、叩き出される音はタフそのもの。
ただ、ちょっと気になることも。
演奏はすごくいいのに、あんまり笑顔がみえない。
かなり近い席だから彼女たちの表情まで目に入るから、余計違和感が。
割り切ってる様子の先生らしい人はともかく、他の4人は何かを心配でもしているかのように思える。
観客席でもあれ?という反応は見える。
「ゆい先輩がいないね」
「山中先生ってギター弾けたんだ」
という声がかすかに聞こえてくる。
一人いないのかな・・・
そういえば。
「5人編成だと聞いている。リードギターの唯君、セカンドギターの梓君、ベースの澪君、ドラムの律君、それからキーボードの紬君」
どうやら唯君がいない、ということだな。
来ヶ谷さんはそう言った。
そうしているうちに。
休みなしに突入する2曲目。
1曲目より少し抑えた演奏に自然に手拍子が乗る。後半になってギターが交わるように盛り上がるけど、手拍子は変わらない。
むしろ聴衆がみんなで後押しするよう。
いろいろと気になっていた僕も、次第にその手拍子に乗って、曲に集中し始める。
素直にいい曲だな。
リズムセクションが少しおとなしい分、澪さんのボーカルのとろけるような甘さをより感じさせる。
詩は真面目に聞くと結構・・・アレだけど、ちょっと歌詞カードで読んでみたいかな。
「基本はきっちりできてるな。確かに言葉の選び方は背中が痒くなる部分もあるが、そんなことは個性のうちだ。へたくそな韻を踏もうとして、結局言葉が定型化してる似非プロ連中より、よっぽど自分の感性に素直だよ。
結果としてそれが、詩がうまく曲を御せている理由なんだろうな」
たとえば、井上陽水みたいな?
まあ陽水は天才だけどな。あれは真似できるものじゃない。
両脇でぽんぽん跳ねて声援を送る二人の脇で、こっそり会話を交わす。
それに気がついたクドが。
「リキ、来ヶ谷さん、お話してないで一緒に!」
と促してくる。
汗びっしょりだけど本当に楽しそう。葉留佳さんも手を振り上げて奔ってる。
「私が立ち上がると後ろに迷惑だからな、理樹君はクドリャフカ君と一緒に」
と言われたそのとき。
「お姉ちゃんがんばって!」
という声が後ろで聞こえた。
「おー!」
という返事も聞こえ、その直後に僕たちの横を、一人の桜高の制服姿の女の子が走り抜けた。背中にギターをしょってる。
・・・通り過ぎた刹那、目が合ったような。
その姿を捉えた舞台上のみんなが、明らかにほっとした顔をみせた。
そして、ちょうど演奏が終わる。
通路を走り抜けた彼女は、しばらく肩で息をしていたけど、すぐにギターをしょったまま、ステージ下から直接舞台に乗った。
バンドのメンバーが集まる中、膝を乗せ損ねて舞台上でよろけるけど、何とか踏ん張って立ち上がる。
「さわちゃん先生、ありがとう」
彼女の第一声はそれだった。
なにか理由があって離れてたのだけど、代わりにギターを弾いてくれた先生に対する、
澄んだ感謝の言葉。
代役を務めきった先生は、クスリと微笑したのちに、
「じゃ、あとはがんばりなさい」
「山中先生、かっこいいー!」という声の中、振り返らずに舞台袖に消える。
「みんな、本当にごめんなさい。・・・よく考えたら、いつもいつもご迷惑を・・・、
こんな、だ、だいじなときに・・・」
悔悟の涙に濡れた声に、澪さんと律さんが歩み寄る。
「せめて、タイくらいちゃんと結べ」
黒髪の少女が、そう言ってリボンタイを結びなおす。
「みんな、唯が大好きだよ。間に合ってよかった」
おデコの少女がそう言って、そっと首に抱きつく。そのままぽんぽん、と肩を叩く。
「唯ちゃん、泣かないで」
どこかから取り出したハンカチで、唯さんの顔と涙を拭う紬さん。
そして唯一の後輩と聞く梓さんが、その様子を本当に嬉しそうに見つめている。
「がんばってー!」
「唯ー!!」
「お姉ちゃーん!」
暖かい声が会場を彩る。
「わふー、大変だったのですね・・・。間に合って何よりでした」
「姉御姉御ぉ、あの子がメインボーカルなんですよね?
私、あの子の声、MP3で聴いたときから好きなんですヨ。
最近の女性ボーカルって、なんかみんなうまく「見せよう」としてるみたいな大根足な低音系ばっかりなんですもん」
「私もその低音系だが?」
「イヤイヤイヤ、姉御は似合ってるし普段からだからいいのですヨ。
でもほんととにかく、技量が足りなくて声域も狭いのを、
低い声で誤魔化してるようなのばっかりだから」
「それは少し違うだろう。無理に高音を出すくらいなら低いとこに集中するのはそれは選択のうちだ。基本的に、ハイトーンは個性がでにくいし才能でしか出せないしな」
などという言葉を交わしてる間に、涙をとめてギターを取り出した唯さんのMCが始まっている。彼女だけはさすがに制服姿のまま。
「・・・ギー太も忘れてごめん」
苦笑の細波が会場を揺らす。
「わき目もふらずに練習してきたなんてとても言えないけど・・・
でも、ここが、今みんなのいるこの講堂が、私たちの武道館です。
最後まで思いっきり歌います、ふわふわタイム!」
すぐにそれが歓声と手拍子に代わり、3曲目がスタート。
俄然演奏に華やかさと楽しさが乗った。
これが本当の彼女たちなんだ。
うん、すごい。
もう、それしか出てこない。
笑顔が溢れるだけで、たったそれだけで、音楽はまたひときわ煌く。
「・・・本当信じられないな、これが高校生のグルーブか。
しかも唯くんにいたっては、確か部に入ってからギターを始めたと紬くんから聞いたが。
だとしたら、彼女は天才だな」
もう止まらない両脇の二人の横で、来ヶ谷さんが本当に感心したようにつぶやく。
いつのまにか、彼女も指と脚でリズムをとってる。
そして唯さんが加わったとたんに、澪さんのボーカルにも余裕ができる。
どちらかがコーラスではない、ツインボーカル。
ユニゾンにあえて徹してることで、しなやかさと力強さを同時に引き出せてる。
「ツインボーカル最高!放課後ティータイムさいっこう!!」
葉留佳さんが絶叫。
「わふー、もっともっと!!なのですっ」
クドは勢いあまって僕のところに飛び込んでしまう。
「もしかしたら僕たちは、伝説が生まれる瞬間に立ち会えているのかもしれないよ・・・」
クドを助け起こしながら、そう思わずにいられない。
「えへ、ありがとです、リキ」
「大丈夫?気をつけて、クド」
言ってる先から、小さな体でまた熱狂の旋風に飛び込んでく。
いつの間にか、ステージ直前にかなりの女の子が集まってる。
葉留佳さんなんか、彼女たちの中で、一緒に肩を組んで腕を突き上げてる。
そしてエンディング。
旋風からの、唐突な沈黙。
・・・そこから。
ひたすらキーボードに徹してた紬さんが飛び出す。
汗びっしょりの貌にとび切りの笑顔で。
律さんがにやりと笑って追いかけ、
澪さんがビートに跳び乗り、
梓さんがコードを重ねて、
最後に満面の笑顔とともに唯さんが、
振り返って締めのアンコール。
・・・いいな。
恭介たちにも見せたかった。僕たちだけじゃもったいない。
本当にそう思える。
「ありがとー、みんなー!!けいおん大好きー!!!」
「りっちゃん、もう一曲!」
「よっしゃー、いっくぜー!!」
「ちょっと、唯!」
「あ、のどかちゃん」
「もう時間切れよ!」
「えー!?」
あ、オチがついた。
さすがにテンションが上がりすぎて、ちょっとぐったりした様子のクドが心配になって、
僕たちは軽音部が引き上げたところで外にでた。
僕たちを校内の樹たちが冷やした風と、
葉に突進を阻まれて優しさだけが残った陽の光が包み込む。
4人で大きく深呼吸し、空気と体温を入れ替えて、芝生に座る。
「すごかったですー。ほんとにこれしかいえないですー・・・」
自分で持ってきた水筒をそそいで、ほっと一息のクド。
「いやー姉御、やっぱり音楽は生ですナ。
圧縮されたポータブルプレイヤーなんて何も伝えていないって、実感させられましたヨ」
汗を拭い、腰を伸ばしながら葉留佳さん。
「それも少し違うぞ、何よりも彼女たちは、少なくとも「本物候補生」だからだな」
クドに水筒を分けて貰いながら、クールな普段よりは熱の入った来ヶ谷さん。
「僕はそのへんはわからないけど、ただ感動したよ。
もっと普段から聴いてみたいな、それに恭介や鈴たちにも聴いてほしい」
音楽で感動したの、本当に久しぶりだった。
「しまったですね、マイク持ち込んで録音すれば良かったですヨ」
「さしずめボブ・ディランの”グレート・ホワイト・ワンダー”か。」
「きっと将来、高く売れますよ、姉御」
「葉留佳さん、それはめっ、なのですっ」
「やだなぁ、本気でするわけないじゃんか・・・
クド公、突っ込みたぁ生意気な。ちょっとくすぐっちゃる!」
「わふー、やめてくださいなのです葉留佳さん!」
なんてじゃれてるところで。
足音ひとつ。
「こちらにいらっしゃったんですね、来ヶ谷さん」
「ああ、すまなかった。挨拶が遅れたな」
キーボードをやってた、ふんわりした空気をもつ人。
たしか、琴吹 紬さん。
ジャージに着替えているせいか、ステージの熱はすでにおさまってる風。
このとても綺麗な人が、唯湖さんの友達なのか。
「あら、かわいらしい方がお2人もいらっしゃるんですね。
それに格好いい方もお2人、ですね」
「ああ、話しておいた”会わせたい友人”たちだ」
「はじめまして、ですね。放課後ティータイムのキーボード、琴吹紬と申します。
ぜひ気軽に、”ムギ”と呼んでくださいね」
・・・大人だ。それも怜悧な唯湖さん、佳奈多さんとはまた違うタイプの。
育ちのよさ、を自然に納得させる。
「わ、本物だ」
がばっと立ち上がる葉留佳さん。本物も何も・・・。
「はじめまして、来ヶ谷さんを姉御、と慕う三枝葉留佳です。
さっきのライブ、もうノリノリでした。
こちらこそはるちん、はるにゃん、はーたん、ぜひぜひ気楽に呼んでください!」
「後輩さんなのですか?」
「いやー同学年ですヨ。
でもなんていうか貫禄が違いすぎますし、なにしろ格好いい人ですから、
つい慕いたくなっちゃってって感じです」
「そうなんですか、では私たちとも同学年ですね、ぜひ仲良くさせてくださいね」
「・・・うー、育ちのよさをびんびんに感じますネ。
これこそまさしくお嬢様、いや、お姫様!」
「あらあら。でもどうぞお気軽に。」
「はい、ぜひぜひ!」
もはや執事もなにもなくなってる。
講堂に入る前は結構「すごく格好いい女執事がいる」なんてひそひそ言われてたこと、
もう頭の中には残ってないんだろうな。
というかちょっと一押ししたら、それこそ彼女の執事に立候補しそうな勢い。
「あ、それから。こちらの可愛い方々は?」
「うむ、葉留佳君がおさまるまでちょっと待っていようかと思っていた。
まずこちらが能美クドリャフカ君。ロシア系のクォーターなんだ。
それからこっちが直枝理姫君。理科に姫と書いて、”りき”と読むんだ」
「まあ、この方がたが?」
よくメッセで話題にされていますよ、来ヶ谷さんが。
「えー、はるちんは話題にしてもらえてないんですか?」
「いえいえ、そんな。」
とは言っても、さすがの紬さんでもちょっと苦笑は隠しきれないみたい。
「ただ、特によく聞かせていただいてるお名前でしたから」
そう言って、穏やかな、というよりもやわらかい微笑を僕たちにみせる。
「どうぞよろしくお願いします。ぜひ”ムギ”と呼んでくださいね」
「こちらこそ。僕のことは”リキ”と呼び捨てでいいですよ」
「あ、あのあの、ご挨拶が遅れて申し訳ありませんっ。能美クドリャフカと申します。
さきほどの演奏、もうほんっとーに感動しましたっ」
「リキさんと、クドリャフカさんでいいのかしら?・・・クドリャフカって、素敵なお名前ですね」
「クド、でかまいません。リトルバスターズではみんなそう呼んでます。あ、小毬さんは「クーちゃん」ですね」
「では私も、そうしますね。「クーちゃん」、いいですね」
ハートマークを自然に添えたくなる響きで、彼女はにっこりと笑った。
「・・・あ、たいへん。片付けに戻らないと」
「機材のか。ぜひ私たちにも手伝わせてくれ」
「いえ、お客様にそんな」
「何をいう、私たちは友達になりにきたんだ。それくらいさせてくれ」
さりげなく来ヶ谷さんが押し切って、撤収の手伝いを僕たちは始める。
・・・僕はこれでも男だから何とかなるけど、女の子たちだけだと結構手に余りそうな機材の量。しかも搬入先は3階の音楽室。
ムギさんが来ヶ谷さんに負けない力持ちなのにはちょっと目を見張ったけど、いきなり手伝いを始めた派手な格好の4人に、
軽音部のメンバーからは、びっくりされるかと思いきやあっさり感謝された。
ドラムの律さん・・・部長と聞いた・・・は、あっさり仕事を割り振って仕切ってくれるし。しかもなぜか、名前をちゃんと知ってくれてた。
クドだけはあっさり引き抜かれ、「梓と一緒にお茶の準備して」と言い渡されたけど。
まあそれはそうだろうね。
ちなみに実働してたのは、結局来ヶ谷さん、ムギさん、律さん、澪さんと僕。
葉留佳さん?・・・唯さん、顧問の先生とたちまち馴染んで梓さんとクドにちゃっかり給仕してもらってたのは、予想通りということで。
10/10/07 08:34更新 / ユリア