第12話

私はここ数日の新学期を迎えたとともに生活は大きく変化した

いい意味でも
…悪い意味でも

-9月4日-(木)-

-お昼休み-

しかし相変わらずここはいつもと変わらない平凡な風景が広がっている

昼下がりの教室から見える空には入道雲が漂い、清んだ青々とした快晴の空はどこまでも高く広がっている
そんな空のもとで私たちの日常は繰り広げられている
灯と向かい合うように席をくっつけ、ひよりがお弁当を持ってやってくる
人と仲良くなるとは不思議なもので、ひよりとはもうすっかり仲良く話せるようになれた気がする

「また灯ちゃんはいつものパンでしょうか? 」
「もちろん! 」
灯は即答するとまたもこの学校最強の不人気パン、抹茶いちごメロンパンをぐいっと強調して私やひよりに見せびらかす
「灯… たぶん早死にすると思うよ…」
「なっ! どうゆう意味だー このちびっこ」
そう言いながら灯は私の頭を雑にわしゃわしゃし始める
「にゃ〜 髪がぁ〜」
「…お二人とも じゃれあうのはいいですが お食事の後にしましょうね」
灯と私がそんなことをしていると静かに横でお弁当を食べていたひよりに冷静に注意されてしまう

(ぁ …そういえば )
ふと教室の時計を見る、もうどこのクラスも4時間目の授業が絶対終わっている時間だ
(有珠ちゃん… 来れないのかなぁ やっぱり B組 覗きに行ってみようかなぁ )

「灯 ひより ちょっと用事思い出しちゃって… 」
「?? ぉぉー いってらー 」
「はぃ いってらっしゃい 」

半分食べかけのクリームパンとほとんど飲んでいないリプトンを机の上に置いたまま、灯とひよりのいる教室からいったん出ようとした

…そのときだった

ふと視界を斜め下に向ける
するとそこには私たちのいるE組の教室の扉の隅にこそこそ隠れて一人縮こまって中の様子を伺っている子がいた

(ビク…っ!? )
つい二度見してしまう
それはまるでモルモットやハムスターのような小動物を思わせる姿だった
(な、なんだろう…この変な生き物…)

しかし…それはよく見れば
…銀色の髪に、小学生並の身体

そう…まさしく有珠ちゃんだった

…っ!!?
「ぁ 有珠ちゃんっ!? …どうしたの!?」
自分でもこんなあわてふためく発した声に驚く

「ぁ ゆりさん… こんにちは」
扉の隅からこっそり中を覗き込むように縮こまっていた有珠ちゃんは悠長に私に向けてそのままの体制でペコッとお辞儀をした
「ぁ こんにちは 」
「エヘヘーッ 」
ニコッと可愛い笑顔を向ける有珠ちゃん

…………
「って こんにちはじゃないからっ 」

「はぅ…!? …ご、ごきげんよう?? 」
「そっちでもなぃっ どうしてその形状でここにいるかだからっ 」
「ぁ…ぅぅ ぇっと… 」
有珠ちゃんは立ち上がりもじもじし始める

(もしかして…)
………
「一人で入って来るのが怖かった…のかな? 」

「…こくっ…」

よく考えれば、私だって人見知りで、ひよりとだって初対面のときは怖かったし、有珠ちゃんが今同じ状況にあることを考えれば迎えに行ってあげるべきだったと、いまさらながら後悔する

振り向き灯とひよりのほうを見る、今は私たちのほうではなく校庭のほうを見て話しているようだった
「有珠ちゃん じゃぁね 私と一緒に行こう? ね?」
「…はぃ 」
有珠ちゃんは私の左腕をしっかりにぎりしめ私に隠れるようにして、灯とひよりの元へ戻る
こうしているとまるで妹が出来たようなことを思ってしまう

「ぉー ゆり お帰りさー」
「ゆりちゃん お帰りなさ
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