第14話

日も落ち、暗い教室の中…電気をつけることも忘れ

灯はお膝に座らせていた有珠ちゃんを静かに下ろし、私たちは動くこともなく言葉を交わすこともなく、微かな光のある闇の中で目を合わせ、立ち尽くしていた
目を合わる、とは言ってもこちらからは灯の顔は全く見えない…
しかし、今の灯からは眼差しは私への疑いの目であることは明らかである

…………
身体も動かせず、15分前まではあんなに幸せ色だった空間は、今や時が止まってしまったのではないかと思うほどに重く苦しくざらざらとしたにがい空間が広がっている

…………

「ねぇ… ゆり… 」
その重い緊張を解く…いや、増すように灯はそう呟き…続けた
「今から駅前とか… 一緒に行けないかな… 」

(…!? )
「今日は…… その ごめん…」
どんどん自分が追い込まれていくのが、まるで秒読みのようなペースで身に傷みとして突き刺さる
昨日見たニュースでは警察は駅前を集中的に捜査し目を光らせていることは間違いない、いや…それどころか監視カメラの増設、パトカーのパトロール
今の駅前に私が行くことは、どうことになるのか…灯にはわかっているんだ
犯人か犯人じゃないか…そんなストレートな問いではなく、間接的な意味で問い詰めて言うあたり…やはり灯らしく思う

「…そぅ 」
目の前に顔を闇で隠している灯は確信したように、そう返事をした

頭が痛い…お腹が痛い…
胸が締め付けられる傷み…
冷や汗が止まらない

…………

しかし、次の瞬間、私を救ったのはひよりだった
「ゆりちゃんはこの通り魔事件の犯人ではありませんよ 」
窓際にいたひよりが呟く

「 ひより…? どうして…?? 」
不意打ちのようなひよりの言葉に灯は驚きながらも疑問で返す
「ゆりちゃんは この件に関しては…いろいろな悩みや痛みを持っております 」
ひよりはそう語りながら闇に包まれていた教室の電気をパチッとつける

「…ねぇ ひより… 」
灯は私ではなく、今度はひよりと話し始めた
有珠ちゃんに関しては事の発端でもある‘私の部屋の押し入れにあるまぐろ’の発言をしてしまったことが今のこの状況を作ってしまったのだと理解したのか…教室の隅で縮こまって目に涙を浮かべてしまっている

「なんでしょう 灯ちゃん 」

「‘どうして……’ひよりがそんなゆりだけのこと知ってるの? 」

(!? ビクッ…っ!? )
灯が深々と痛いところを的確に突いてくる
今の灯は普段の適当な灯とはまるで別人のように鋭く…どこか怖ぃ
「それは…… 」
そしてその問いに初めて見るひよりの困った顔
私がひよりの接触障害のことを他人に簡単に口にできないように、ただでさえ優しいひよりは、私のこと気遣ってくれているのだろうか
今…私の痛みのことを決して口にしようとはしなかった

………
もう…見ていられなかった…っ
「ちっ 違うんだよ灯っ! 」
灯のひよりの間に無理矢理わって入る
「何が違うのゆり…? 」

横に困った顔をしていたひよりに目で合図する…
「その…ひよりには相談に乗ってもらってて…」

「そぅ…… ひよりに… 」

「…ぅん…だから…その 」

苦しい…
灯の目が見れない、私は…逃るように俯き灯から目をそむけた
ひよりも私を助けようとしてくれたのに…今では俯いしまっている
有珠ちゃんにいたっては地べたに座り込み涙をすすってしまっている…

…………
………
四人そのままの状態でさらに10分ほどの時間が経ってしまった
「…ゆり……」

最後にそう呟いた灯は、その瞬間、いきなりこの教室の扉をおもいっきり…ダン
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