第6話

リリスを押し入れにしまってから、急にみんなも緊張の糸が切れてしまったのだろうか
それとも今日の部室の大掃除に疲れてしまったからなのだろうか
現在 私の部屋のベットには、ひよりと、その胸にそっと寄り添い抱きしめるような形で眠る有珠ちゃんが横になって、ふたりとも寝息をたてて静かに眠っている

思えば眼鏡を外したひよりを私は初めて見た
普段はその前髪に黒ぶちの眼鏡に素顔を隠しているひよりの顔は
(綺麗… )
街を歩いていたら男の人も女の人も誰もが一度は振り向いてしまいそうなくらい清楚で美人な顔立ちだった
(どうしてコンタクトにしないんだろぅ )
そしてその寝顔はいつもの皆のお姉ちゃんのようなイメージとは違って
寝息をたてる無垢で純粋な子供のような、ついいじりたくなってしまうような可愛さがあった

そんな微笑ましい優しいひよりと有珠ちゃんの光景を見つめながら私の隣には今
灯が甘える子供のように私の腕に抱き着いている

「ゆりぃ〜 」
「なぁに 灯? 」
「さっきはまぐろ…ゴメンね? やっぱり辛かったかなぁ? 」
「ぅぅん、大丈夫だよ ありがとうね灯 」
シュンとした灯の髪を軽く撫でてあげる
「ゆりぃ〜 だぃすきだよ 」
「…私も‘友達として’灯のこと大好きだよ 」
「ぅんっ …スリスリ 」

「ゆりぃ〜 」
絶対ひよりや有珠ちゃんがいるときじゃ出さないような甘い甘い声で灯が腕に頬を寄せ付けてくる
制服の半袖から覗かせる私の二の腕に灯の柔らかい髪の毛が気まぐれにふわふわ当たって心地いい
「灯、その… 頭とか…撫でてもぃぃ? 」
「…こくっ …撫でてほしぃ 」
もう半分くらいしか開いていないとろんとしたとろけそうな瞳で灯は私を見つめながらそう小さく唇を動かした

いつもの表の強がりなきゃぴきゃぴした男子みたいな灯からは想像できないくらい、今の灯は可愛いくて
まるで子猫みたいに大人しい

頬をほのかに赤らめながら、今か今かと私に頭を撫でてもらえるのを待っている

(かわぃぃ )
灯の柔らかい栗色の髪に手をあてて、そのままサーッと指を絡ませながら撫でてあげる
「…っ// 」
一瞬灯はピクッと身体を震わすと、さっきより一段と顔を赤らめては、恥ずかしそうに…それでもどこか幸せそうな顔で
ちゃんと大人しく私に頭を撫でてもらっている

撫で終わると同時に、さらに私の腕にぎゅっと甘えた身体を寄せる
もう寄り掛かっていると言ったほうがいいかもしれなぃ
制服のスカートから覗くふとももをお互い擦り寄せる…
灯の柔らかいふとももから伝わる温もりが愛おしい
「…ゆりぃ 」
どこか色気のある切なげな声で私の名前を何度も呼び、さらに私に寄り掛かる灯
熱をおびた火照った息が呼吸するたびに私の首筋にかかる

目の前には眠っているとはいえ、親友がふたりいるのにも関わらず…

(灯の匂ぃ…好き )
いまさら意識する仲でもないのに視線を合わせた上目使いの灯の瞳になぜか胸がキュンと染みる
「あかりぃ… 」
(…っ! 私 今なんて…っ )
不可抗力だった
気付いたときには、今までに自分でも出したことのないような甘ったるい声で私まで灯の名前を呼んでしまっていた

そのときだった

ヴーッ!… ヴーッ…! ヴーッ…!
辺りに転がっていた灯の携帯電話がいつもの着メロのフレーズのメロディーとバイブレーションを鳴らしながら そんな私たちの雰囲気を断ち切った

「ぁ… ゆり ちょっとごめん、メール 」
「ぁっ…ぅん 」
スッと私の身体から手を引く灯
(……ぁ )
ちょっとそれが名残惜しく切なくて、携帯を取
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まろやか投稿小説 Ver1.30