………
「…… … 」
灯の放った言葉の意味が分からなかった
――さっき灯が言った事
・ウィザードとは、去年一時期ネットで騒がれた聖蹟に潜む危険なハッカーであり犯罪者だった人物
・そしてその犯罪者とは、…誰よりも優しい私たちの頼れるお姉さんみたいな友達、…ひより
双方の真逆が、街の視線では…同一人物だったなど…到底信じられるわけがない
いや、信じたくない…
「ひよりはさ、あたしらと出会うずっと前、中学生だったころ… ウィザードって名前でこの街にいた …そうだよね ひより? 」
「……… 」
ひよりは灯の問い掛けに答えることもなく、ただ深く俯き垂れ下がった前髪で表情は隠しているだけだった
「ひより…ゴメン 隠れてこっそりあたしだけひよりにウィザードだよね?って声かける事もできた、ゆりや有珠に黙って裏でウィザードに頼んだって事にも出来たんだけど… やっぱりこういうのだけは、違うと思ったんだよね 」
「……… 」
何を返すわけでもなく、相変わらずひよりはぐったりと首を垂れ下げているだけだった
「その…さ?、相談もしないでひよりの気持ち傷つけちゃってたら… ほんとにゴメン 」
あまりに普段と掛け離れたひよりの姿に言い出した灯が甲高い声から弱気な声へと変わる
…
……
(ひより… )
真昼のセミの鳴き声も部室の中では悲鳴へと変わった、私と有珠ちゃんは…ただ後ろで戸惑い困惑するだけった
――
「………で… 」
(…?? )
一瞬 微かにひよりの唇から音が落ちたような気がした
「ひより…先輩 ? 」
伺うような表情で有珠ちゃんの怯えた声が部室を漂う
……
「 …どこで……私がウィザードだということに気がついたんですか… 」
(――ッ!? )
驚いた…
顔をあげたひよりの眼が、いつもと…違う
普段のあんなに優しくて穏やかなひよりの姿は何処にもなく
ただ見つかった事に対する怒りか…悔いか驚きか、悲しみとも言葉が一致しない瞳
前髪越しに眼鏡越しに灯に届ける静かな殺気と睨むような眼差し…
「そ、その…っ 前の委員会のとき ひよりさ…っ、めっちゃパソコン操作詳しかったし、タイピングとかめっさ早かったでしょ…?、 それだけだったら、別にひよりはオタだし…ただパソコンが上手い人で終われたんだけど… 」
その視線に珍しく灯も戸惑いながら話しを続ける、今までに感じたことのないような異様な緊張が部屋の隅々まで包み込む
「けどさ、確信したのは…昨日だった、 昨日の作戦が終わった夕方、駅から出ようとしたら夕立降ってたよね? 」
「あのときみんな買った物とか濡れないようにカバンの中に入れてて、そんでたまたまひよりがさ…そのとき、そのカーディガンの左ポケットから、USBメモリーの端末…取り出すの 見つけちゃったんだ…」
「…! 」
一瞬ひよりがピクリと反応する
「書いてあったから…‘Wizard,【ウィザード】って 」
………
「そんな…ひよりが 」
「ひより先輩…どうして 」
……
「実はまだあたしも半信半疑だった、ただの…偶然なんじゃって けど、今のひよりの反応で完ぺきにわかったよ、 ねぇ、ひより? …そのカーディガンの…ポケットの中 見させてくれないかな? 」
「……… 」
ひよりは何も答えることもなくただ立ち尽くす
……
空気が重い、確か今はお昼休みのはずなのに…
(…同じだ )
先週の私が灯とちょうど此処で私の痛みで揉め事になって
暗い部室の中…私は馬鹿で灯を悲しませちゃって、そのまま走り去ってしまった夕方のこ
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