第17話


部活動以外の生徒がほとんど下校した後の校舎は、なんとも昼休みとは変わって淋しい
紅色が焦げたような西日が校舎のコンクールを当て付け、影が出来た静かな廊下には年期の入った亀裂に暗い斜陽が積もる

暮れたオレンジをおびた部室の窓辺には、ついさっきまで作戦を行っていたひよりがまだパソコンと睨めっこをしている
……
クラックには後始末も必要なのだとか、隠蔽作業だとか
私にはよく分からない言葉を飛び交えさせながら、ひよりはまた黙々とキーボードを叩く

いつもとは違い、ぼたついたカーディガンや印象の悪い黒ぶちの眼鏡、地味で根暗な前髪の防御を外した少女の姿
下着のラインをくっきりと透かしてしまうほどにくしゃりと汗で肌に張り付いた真っ白のブラウスを見て思う ――

季節外れなカーディガンの上からではわからなかった、ハイウエスト寄りのスカートで引き締まった細いウエスト、けれどもふくよかな胸、血色のいい淡い肌色

9月の鮮やかな夕日に照らされたその少女の姿は、普段の地味な印象とはまるで真逆で…

けれども目の前の‘それ’こそが

…本来あるべき本当の姿だった

……

―――
灯はというと、先程、アイスを買いに前のコンビニに自由行動中

そして有珠ちゃんは
また影が出来た部屋の隅っこに一人
その柔らかそうな銀色の前髪を邪魔にならないよう、片側にヘアピンで斜め前髪に止めて、黙々て学校用ギターを熱心に弾いていた


………
……
授業も終わって、校舎の大半が私達だけの物になったような気が出来るこの時間帯は地味に好きだった

(…… )
しかしながら、冷静にそんな静かな校舎の最上階高く、銀光りする生温い窓の隅に手をかけてひしひしと胸に思う…
窓の外に毎日変わらず続く見慣れた茜がかった街、俯き下を向けば…パサついた砂がグラウンドを舞う

……
「ねぇ、ひより? 」
こんな空間が、目の前からまた消えてしまうかもしれない ――
途切れる、ちぎれることが、……私は怖い

「はい、なんでしょうか ゆりちゃん? 」

……
「その、ひよりのことだから大丈夫だとは思うんだけど… 」
「はい? 」
一つの疑問を聞かずにはいられなかった…

「さっきひよりは…‘これが’‘ウィザードのやり方’って言ってたけど」
「はい、言いましたね 」

「それってことは…去年に騒がれたウィザードと同じやり口だから… ウィザードの仕業だって、N.M.C.にもばれないかな? 」

「一応ですが、一度使用したウイルスやツールはもちろん使っていません、しかし確かにゆりちゃんの言うように、最終的にサイトを完全に破壊すウィザードのやり方は去年と同じですね 」

「それって…大丈夫なのかな? 」
「今まで見つかっていないから大丈夫、とは楽観的に軽視な考えは言いませんが、見つからないようにあらゆる方法は尽くしました それは去年よりも確かに高度にです 」

……
「そっか、ありがとう  …なんかそれ聞いて少し安心した 」

「ですが ただ… 」
(…?)
「ただ?? 」

「恐らく…ウィザードの仕業という事は見つかってしまうと思います  ウィッチか、もしくは新たな第三者か、それは向こうにも把握は出来ないと思います、ですが、警備や捜査が強化される事は間違えないと思います 」
「それはわかった上で同意した事だから大丈夫、どうせ…タイムリミットももうないし 」

「問題は…ウィザードが学生ではないかと、薄々感づかれるかもしれない事です、監視カメラのウィッチの姿からなら十分に学生の線でも捜査される可能性があります 」
「でも
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