第30話

***
-軽音楽部 部室-

私は、さっき起こったことを洗いざらい、全てを灯に話した
部室の塗料の事、有珠ちゃんのいじめの事、明後日の事

それらすべてを打ち明けた

「…そっか、有珠が 」
灯も先程とは表情が変わった

「…うん、 多分 こういうのはこれが初めてじゃないと思う、むしろ頻繁に 」

「明後日かぁ、有珠はどうするんかな、作戦を選ぶのか、あたしらの居場所と自分の為に一人で戦うのか 」
灯がさらに表情を濁らせる

「灯… やっぱり追いかけたほうが 」

「…さっきの授業のときも言ったけど、有珠ならそっとしておくべきだと思う 」

「どうして…! 有珠ちゃん あんなに辛そうに、現場を見てないから灯は」

「有珠はさ…っ! 」
私の張り上げた声以上に真剣な灯の声が響いた

「有珠はさ…、この四人の中で一番プライドが高いんさよ 」

「…?? 」

「転校してきて自分がいじめられて、なのにも関わらず、弱音一つこぼさずにゆりを助ける道へ参加した 」

「でも有珠が一番、自分の事で迷惑がかかる事、足手まといになる事、その不安をずっと抱えてるんさよ、それを有珠は一番嫌ってるんさよ、だからスイミーのときは本当に嬉しそうだった 」

「有珠はさ、自分が傷つくならいいって、むしろきっとそう思ってるんさよ 」

灯がいったん呼吸を整えて、また話し始める

「でもそれがどう?、今チョークの粉を被って泣いてる自分のところになんて仲間に来られたら、迷惑だとか、有珠が思わないわけがない、いたずらに…また有珠が傷つく 」

「それは…… 」

「それに有珠の痛みを助けれるのは、ゆりの場合と違って、有珠本人だけなんだ 」

「……? どういう」

「ねぇ、ゆり?‘カルマの法則’って知ってる? 」

「ぁ…ぅん 」
前にひよりに教えてもらった法則だった
灯も知っていた事に少しだけ驚いた

「ゆり知ってるんだ そんでね、カルマの法則は‘痛み’でも同じことが言えると思うんだ 」

「どういうこと? 」

「有珠の場合の【原因】は、まぁ多分、あの他人と少し違う身なりとか性格だろうね 」
「そんで【縁】はあのクラスにあいつらがいたこと 」
「そして【結果】有珠はいじめられるという結果に至った、一つのカルマ、一つの痛みの完成さよね 」

「そんな…他人事みたいに… 」

「そしてカルマの法則とは【縁】を変えて【結果】を避けたとしても【原因】が消化されない限り…何度でも、その人間には【縁】が生じて、必ず【結果】を招く 、これは痛みの法則としても同じ 」

「つまりさ、あたしが何を言いたいかと言うと、今ゆりが屋上にいる有珠を追っかけて、もし助けられたとしても【原因】の有珠本人が自分であいつらを倒せるようにならなくちゃだめなんさよ 」

「……」

「有珠の、他人との見た目の偏見の痛みは、あたしらとは違って、ずっとこれからも生涯抱えていく痛みなんさから 」

「今助けてあげられても、また来年も、高校卒業しても、仕事に就いた環境でも、このカルマは生じると思う、そうなったとき、ゆりは生涯ずっと有珠の側にでもいて助けてあげられるの? 」

「…それは 」

「有珠は、自分で戦わなくちゃいけない、ゆり…あたしらが有珠を助けたら、確かに助けられるとは思うよ、でもね、それは一番有珠を傷つけてちゃう方法でもあるんだよ 」

「でもだからって…これからもずっと見てるだけなの?、それじゃあ周りの子と変わらないよ 」

「やってあげれることはあるさよ、さっき言ったように、そんな痛みがあるから、有珠は誰か
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