第39話 灯編


あたしはレズだ

それもかなり痛いほうのね

あたしね、結構中学のころは中々リア充しててさ
友達も普通にいたし、別に孤独とかはなかった

学校が終われば安いカラオケ行ったり、マックに行ったり、やたら外食したがったり
ディズニーで盛り上がったり、ちゃんと並な女子の生活してた

でもさ、あたしってね、ずっと自分の‘青春’ってものに憧れてて

ジャニーズのライブについていったり、学校帰りのしりとりで負けたら罰ゲームとかおごりとか
親をウザいとか言って皆でうなずいたり
男子の前だと猫かぶりして笑って話してボディータッチもして

次にその男子はどうだったか話のネタになると
また笑って、ちょっと愚痴っぽく言って、ここは良かったたけど、あそこであれはないとか、ホントくだらなく言って

そういうの、どっか違うと…思い始めた

素直に笑ってたのに、楽しくて充実してたのに…

私の思う‘青春’とはなんか違ってた

だからさ、いつも遊んで帰るとどっと疲れてて、家の中だとふぅっと息が出て
それでいて、どっか苛立ってたんさよね

あたしは、そういう生活と友達の輪の中にいた
皆幼い中学生、大人も先生も親もうっさいキモい
感情豊かに機敏で、何かあるとすぐ悩んで愚痴る
髪も服も顔も性格も着飾って、それでいて周囲と理解し同調し、必ず共有化する

もしドタキャンしたり、勝手に部活をやめたり、価値観が外れたりして
その輪から外れると、陰口やいじめ、悪い部分をこれでもかと特徴付けたあだ名を言われたりする

ずっと疑問を抱えながら、そんな生活を送って

…なんか疲れちゃってさ

集団の優等生の中の評価し合う生活がつまんなくて

だから、……やめた


ある日、友達全員とめっちゃ喧嘩した
マジあんたってなんなの、みたいに怒鳴られて…キレられて、一人はずっと泣いちゃってた

そこで、あたしは携帯に登録していた全アドレスを消した

一秒とかからず、一瞬で全てが消えた
何もなかったかのように、友達と呼ばれる人達と絶交した…

なんていうか、あたしってさ…こんなだからさ
飾りもしない、ずっと素顔の正しい自分でいたら、いろいろとクラスで浮いちゃって

自分は正しいって思って他の子に言ったら先生に怒られたり、こんなテンションで色々言うと必ず決まって皆離れてった
意味不明、重い、疲れる、理由はいっぱいあったんさ

そんなんで、クラスってのはあっさり諦めた
でも一人ぼっちって…やっぱりきつくて、中学生のあの時期だと尚更で

だから、あたしは街に自分の存在を証明しようとあがいてた
あたしが望む青春がきっとあるんだって信じてた

中学生なりに、人から構ってもらえる方法を探して
パソコンは家にもなかったし、さっぱり使い方もわかんなくて無理だった

中学生のガキ一人
うざくなって黒板消しを勝手に捨てたり、むかついて火災報知器鳴らしたり
マンホールに消えない落書きしたり
学校のブレーカー切ったり、雑巾燃やしたり
枠や輪に入らない意味も込めて、髪も染めた

前を歩く女子三人組が同じ飲み物買って飲みながら帰ってるの見たりして
それと同じ飲み物万引きしたりしてさ

クラスの連中に見つからないよう、夕方の駅前で男装して、ベースの弾き語りで歌ったりしたこともあったな
日頃のうっぷんをBUMPの歌詞に乗せて街中に響かせると最高だった

あとは、道の真ん中で死体の真似とかもしたんだ
死体の真似は一番強力でよかった

色んな方法を考えた
いつもどんなのがいいか考えてた、なんか安心できた

存在の証明と青春論理、あたしは同時進行で
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