全ての本当と真実を隠した街並みを潜り抜け、血の色をしたサイレンを振り切っていく
今晩とて いろは坂だけは変わらず騒がしい街を見下ろし、静かに青い風と星を揃えて佇んでいる
木々の音も草の匂いも、来たときのような恐怖は感じない
むしろそんな事が霞んじゃうくらい、何もかもが吹っ切れた解放間と疾走間で満ち溢れている
一秒が最高級の満足感を生み出し、四人それぞれが噛みしめていた
時間がなくなっても、未来へと続く僅かな手がかりを握り、まとわりつく影に怯えながらも最後の目的地を目指して進んでいた
(私達なら、きっとやれる )
そりゃ怖いよ、だけど、挫ける時間なら疾うに終わったから
私達は終わりへなど進んではいない、逃げてなどいない
私達は私達のやり方で、全ての財産をはたいてこれから戦うんだ
追撃者達の張った縄張りを、これでもかと街一番の弱者は反抗的に闊歩していった
***
丘を巻くつづら下りの坂を無事に下り終え、線路沿いの緩い下り道を行く
いつかの夏の日、手を繋いで帰ったその道を
いつの間にか、あの日と同じように手を繋いで歩いている私達がいた
この暗闇にいつ来るか分からない別れや絶望に、誰も欠けてしまわないよう、しっかり握って並んで歩いていた
しっとりした空気は爽やかで、けれどもどこか背中が不安で物足りない
広く整備された道は、電車が線路を痛めつけて走る轟音と光だけがたまにすれ違っていくだけだった
無灯の二人乗り自転車が物音も立てずにすぐ後ろから通過して
私は思わず防御反応で身を丸めてしまう
「ゆり、大丈夫? 」
優しく穏やかな声がどこからか聞こえた、灯の声だった
「…うん 」
ささやかなその一言だけで、ピリピリ張り詰めていた私の胸はそっと柔らかく解かれた
「冷たいな、相変わらず 」
「…うん 」
そして、繋がったその灯の右腕もまた、少しだけ震えていた
有珠は何度も振り向きながら歩き、ひよりは空を見上げて夜風に浸っていた
押し潰されないよう、私達は絶えず他愛話を続けた
少しだけ恥ずかしい話も、皆への感謝も、締めくくるような大事な言葉も、空に溶けていった
言葉は多くなくても、ありがとうを多用しなくても、伝えたい大切な感情は呼吸と足音でしっかり交わせていた
黒色の寂しい道幅を照らすよう、高校生達は手と手を重ねて賑やかな声で彩り
今しかない澄んだ想いを馳せて、夜を越えた
………
地震も逮捕もアクシデントもなく、裏道経由で私達は学校の裏道に到着した
「着いたね 」
「着いたさね 」
立ち構える学校は不気味で、日中のときとはまるで姿を変えていた
人を寄せ付けない巨大な廃墟のようだった
美弦の携帯にハルからの受信は未だにない
右手に携帯を、左手に保温タッパーを握りしめて立ち止まる
(……… )
これでよかったのかと一瞬迷いがよぎった
けれど、これでよかったのだと、ひときわ涼しい風が横切り、私のまつ毛を撫でた
――何の為に私達にこんな事件が起きたと思う?
そよ風にたそがれで、そんな問が降ってくる
(……それは )
見出だした分岐点、今までの私との別れを告げるように
背筋を伸ばして、そしてはっきりと答えを選んだ
――それはきっと、逆境に立ち向かう為だと思う
ハンデを背負った高校生も、大したことない高校生も、人より劣っている高校生も、トラウマに蝕まれている高校生だって
まるで縁のない夢なんて大それたモノを叶えられるんだって、証明する為だったんだと思う
だから、一度きりの終わりくらい、こ
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