「直枝、私はつくづく思うのよ。葉留佳の姉で良かったって。葉留佳が私の妹で良かったって」
「うん、そうだね」
嬉しそうに語る佳奈多さんだけど、この話はいいかげん耳にタコが出来そうなくらいに何度も聞かされている。
「葉留佳さんも佳奈多さんと姉妹で嬉しいって言ってたよ」
でもここで耳タコだよなんて言えば正座させられて、妹がどれだけ愛しい存在なのかを完全下校時刻まで延々と語られるから僕はきちんと話を聞いて返事をする。
「あぁ葉留佳…あなたはなんでそんなにも可愛いのかしら」
母娘とかロミジュリタイプの恋人みたいに思ってたけど、この溺愛ぶりは祖母と孫(目に入れても痛くない)みたいとも言えるのかも知れない。
しかし…恐くて言えないんだけど、これってある意味自画自賛なんじゃないだろうか?
「知ってる?直枝」
「な、何が?」
焦った…心を読まれたのかと思った。
「葉留佳がね、この間寝言でね、お姉ちゃん大好きぃ〜って言ってくれたのよ!」
知る訳がない。
「そ、そうなの?凄く可愛かったんじゃない?」
「じゃない?じゃないわ。凄く可愛いのよ。訂正しなさい」
失礼ながら、過保護な飼い主とそのペットみたいだとも思わなくない。
「あ、うん…そうだね、葉留佳さん可愛いよね」
「あなたに葉留佳のなにがわかるの?」
「えぇっ!?」
どうしろと…
「ううん…わかってないのは私…あの子をあんなにも苦しめて…」
「か、佳奈多さん!?」
たまに昔を思い出してネガティブになってしまう佳奈多さん。こうなると慰めないとどうにもならない。
「葉留佳…こんな私でごめんなさい…葉留佳…葉留佳っ」
ちなみにこの佳奈多さんを放っておくと泣き出してしまう。そのつもりはなかったけど一度泣かれてしまって、しかもそれを人に見られた。恭介、あーちゃん先輩、そして来ヶ谷さんと西園さん。その衝撃は僕を再びナルコレプシーの強制睡眠へと誘うのではないかと思うほどだった。
「佳奈多さん、大丈夫」
「直枝…?」
「だってさ、今の二人は幸せなんでしょ?」
「…うん」
「葉留佳さんも幸せだって言ってた。だからさ、これからもっと幸せになるように、なれるように頑張ればいいんだよ」
「直枝…そうよね。私頑張るわ!必ず葉留佳を幸せにしてみせるっ!」
正直…プロポーズは本人に言ってほしい。
基本的にはいつもクールな佳奈多さん。実は葉留佳さんを前にしていても、趣味になったアニメや漫画を見ていてもそれは崩れない。
それでも以前と比較すると纏う空気は軟化しているし、新しくファンも獲得している。
確か『佳奈多お姉様を慕う妹達の集い』だったかな。ちなみに目下の敵は僕らしいと聞いている。妹の葉留佳さんやクドを愛でる佳奈多さんを見たい彼女達にとって、佳奈多さんと親しい異性である僕は百合色の世界には邪魔らしいと西園さんに言われた。
更には男子有志による佳奈多さんファンクラブの『佳奈多様にもっと冷たい目で蔑まれ隊』も同意見らしい。
解決するには女装するしかないな理樹君!ふははははーっ!なんて来ヶ谷さんに言われたけど、とてもそれで解決するとは思えないから実行はしていない。
「直枝、さっきは失礼なことを言ったわ。ごめんなさい」
「いや、構わないよ」
「ありがとう」
以前鼻で笑われたり邪険にされていたことを考えると、今の佳奈多さんと仲良く出来ることを役得と思わなくもなかったりする。
「あなたやクドリャフカがいてくれたから今の私がある。あなた達がいてくれたから今の葉留佳がいる。感謝してもしきれないわ」
そう言って微笑む佳奈多さんに高鳴る僕の胸。この佳奈多さんを見られ
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