-α1-
俺、岡崎朋也はいつものように愛しい春原の部屋に居座り漫画を読んでいた。
「ねぇ、岡崎」
マイスイート春原が妙に真剣な口調で話し掛けてきた。
「なんだよ」
「キスってさ、どんな味がするか知ってる?」
「…はぁ?」
言葉の意味を理解するのに少し時間が必要だった。これはもしや誘ってるのか?
「キス。魚が喜ぶ鱚じゃないよ。マウストゥマウス、チューのキス」
「…なんで突然そんなことを聞いてくるんだ?しかも俺に」
やべぇ、チューって言ってる顔可愛過ぎ。
「だってさ、岡崎ってモテるじゃん。渚ちゃんに杏に椋ちゃんでしょ?ことみちゃんに智代、有紀寧ちゃんも」
「おいおい…」
「誰か一人くらいはキスしたかなって」
「誤解すんな。俺とあいつらはそんな仲じゃない」
そう、特に俺と杏はそんな仲じゃない。
「えー?みんなあんなに可愛いのに?」
「そうか?…たしかにそうかもな」
と言うか、あいつらの話はいいんだよっ!!お前の口から俺以外の名前を聞きたくないんだよ!!
「かもじゃなくて可愛いんだよ。あぁ、あんなに可愛い彼女欲しいなぁ」
春原のこの言葉で俺の中のナニかがキレた。
「…俺じゃ不服か?」
「はい?」
「だから、俺じゃお前の寂しさを埋めてやることは出来ないか?」
もうダメだった。口が止まらない。溢れ出る想いを止められない!
「いや、そりゃ、岡崎といるのは楽しいけど」
「そうか、俺もだ。考えてみろよ、彼女なんて作ったって面倒なだけだぞ」
俺は春原への説得を試みる。
「そうかな…」
「特にお前に接点がある杏と坂上で考えろ…どんな未来が見える?」
「…彼氏と書いてパシリと読む未来が」
「だろ?その点俺と一緒なら馬鹿やって騒いでいちゃつけるんだぜ」
「そうだね…いちゃつけるってなんですか?」
思わず本音が出ちまったが、ここまできたら進むしかない!!
「なぁ、キスしようぜ」
「は?誰と誰が?」
「俺とお前が」
「なんで?」
「したいから」
「僕ら男同士だよ?」
「俺達の前じゃ些細な問題さ」
「全然些細じゃありませんからっ!!」
「愛してるぜ陽平」
俺は初めて春原…いや陽平を名前で呼んだ。
「じ、冗談だよね?」
「冗談で言えるかよ。ほら、キスするぞ」
俺は陽平ににじり寄る。
「嫌だよ!!」
「安心しろ。俺に任せればいい」
「言う相手を絶対に間違えてるよ!!」
「そんなことない。陽平だから俺はこんなにもキスしたいんだ」
張り裂けそうな胸の鼓動が聞こえそうで恥ずかしいぜ。
「目を覚ませ岡崎!!」
「覚ましたのはお前じゃないか。お前がいたから俺は本当の自分の気持ちに気付けたんだ」
今でも…いや、一生忘れないぜお前との出会いはさ。
心の中で呟くと、俺は陽平を抱きしめた。
「う、うわ!?」
「捕まえたぜ。あぁ…可愛い顔しやがって…顔も声も全てが俺好みだ」
「ひ、ひぃぃぃぃっ!?」
この怯えた表情もマジそそられる。
「この体も…スラっとしてるくせにちゃんと筋肉がついてて…やべぇ、もう我慢出来ねぇよ」
体を撫で回していた俺だが、ご馳走を前に待てが出来るほど躾はなっていない。
「助けてーっ!!杏でも智代でもいいから助けてくださーいっ!!」
おいおい、そいつは無理な相談だ。何故なら…
「杏と坂上なら今頃お楽しみの真っ最中さ」
「な、なにぃっ!?」
やはり知らなかった陽平が驚愕の声をあげる。
「杏はバイだからな…」
俺と杏は互いに性癖をカミングアウトしてる同士だ。
「杏は智代を嫌ってたんじゃ!?」
「知らないのか?俺も杏もツンデレなんだぜ」
「こんな状況で知りたくなかったよっ!!」
と言う
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