何気ない日常とその終わり

『あさー、あさだよー。朝ご飯食べて学校行くよー』

カズ:うぅ…眠い…

朝。軽い睡眠障害の俺は夜に中々寝付けない。
だがそんなの関係無しに朝は来るし、学生の朝は何気に早いから毎日起きるのが辛い。

コンコン

カズ:ふぁーい

ダメだ…なんか口が上手くまわらない…

??:入るぞ…相変わらず朝に弱いなお前は
カズ:ん…

苦笑しながら入ってきたのは榛希兄さんだった。
両親が遠い異国へ出張に出てから、俺と兄さんは二人で暮らしているのだが、毎朝毎朝俺は兄さんに起こされていた。

榛希:飯は出来てるから遅刻しないように食って学校行けよ
カズ:…あぃ

本当ダメだ…「はい」すら言えない。

榛希:まったく…それといいかげんその目覚ましを止めてくれ。これから頑張らないといけないのに力が抜ける

『あさー、あさだよー』

カズ:…うわぁっ!?

そうだった!!恥ずかしい目覚ましに変えたらちゃんと起きられるかと思って変えたんだった!!

榛希:はははっ。それじゃ俺は先に行くからな
カズ:い、行ってらっしゃい、兄さん
榛希:おぅ!

―――

カズ:はぁ…

学校へ向かう道。通い慣れた道を俺は早くもなく遅くもない速度で歩いていた。

??:朝からため息なんてどしたの?
カズ:あ、スイ姉さん

出会ったのはスイ姉さんだった。

スイ:おはよ
カズ:おはようございますスイ姉さん

姉さんと言っても血の繋がりはないし、別に義理の姉でもない。本人がそう呼べって言ってるからそう呼んでいる。

スイ:はい、おはよー。それでなんかあったの?榛希に怒られたとか?

スイ姉さんは兄さんの一つ上で、兄さんを呼び捨てで呼ぶほど仲が良い…らしい。兄さんはスイ姉さんを見ると脅えてたりするけど。

カズ:いえ、また兄さんに恥ずかしい寝起きを見られて自己嫌悪に…
スイ:あはは、なんだなんだ、そっかぁ。心配して損したよ
カズ:ごめんなさい…

いつも笑いを浮かべていて、よく俺をからかってくる人だけど、この人はとても優しい人だ。だから心配してくれたのが嬉しくて、申し訳なくて素直に頭を下げた。

??:なんだ、またカズを虐めてるのか?スイちゃんは

と、横合いから妙に低い声が聞こえた。

スイ:あ、にゃはとさんおはよー
ナハト:にゃはとじゃない、ナハトだ

ナハトさん。国籍以外よくわからない全身黒い怪しい人。声は低く人相は悪く、泣く子も逃げ出しそうな雰囲気を纏っている。

カズ:おはようございますナハトさん
ナハト:あぁ、おはようカズ。虐められたらちゃんと言えよ
スイ:酷いな、あたしがカズ君を虐めたりするわけないじゃんか
ナハト:どうだか
スイ:まぁ冗談だけど
ナハト:冗談かよ…

この二人は顔を合わせると毎回のようにこんな話をしている。端から見るには面白くていいんだけど…

スイ:だってさ、カズ君の困った顔ってさ、なんか萌えるぢゃん
ナハト:いや、萌えるぢゃんって言われても
スイ:カズ君もそー思うよねー
カズ:ちょ…っ

いつもこれ。俺を見たらからかわないと気が済まないらしいのだ。

スイ:あはは、そーそー、その顔が見たかった!
カズ:うぅ…
ナハト:まったく…ほどほどにしとけよ
スイ:はーい。おっと、スイさんはそろそろ行きますよ。じゃーねー
カズ:行ってらっしゃい

走り去るスイ姉さんの背中に俺は声をかける。振り返らずに片手を上げてひらひらさせるその姿は妙に様になっていた。

ナハト:行てらー…って俺も行かないと。じゃあなカズ
カズ:はい

いつの間にかナハトさんの勤め先と俺の通う学校への分
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まろやか投稿小説 Ver1.30