夜の公園を一人の女が歩いている。
世界を包むは夜の闇。
?1:…見つけた
闇から現れる男。
彼はその身にも闇を纏い、その手には鮮血の如き紅に染まった刀を携えている。
?2:え?誰?
戸惑う女。
男の顔は影がかかり女からは見えない。
?1:誰でもいい…家族の敵討ちだ、死んでもらうぞ魔王!!
闇を纏う男は一足で女との距離を詰める!
その距離およそ5メートル。
しかし…
?2:うわっと!?なんかの間違いじゃない?
焦りながら…焦った風に見せながら女はギリギリで斬撃を回避する…ように見せた。
?1:とぼけるな!貴様の顔を忘れたことなんかなかった…魔王翠っ!
回避されることは想定内だったのか、男は再び刀を構え、魔王と呼んだ女を見据える。
スイ:ふーん…誰かわかってて喧嘩売ろうって?いい度胸じゃん。名前くらい聞いておこうかな
魔王と呼ばれた女の気配が変わる。
悲鳴をあげるように震える空気。
呼応するように、怯えたかのように遠ざかる小さき命達。
何より、闇すらも喰らい尽くす程の圧倒的な存在感。
この女こそが闇を統べたる魔王。
その名を魔王翠。
?1:霧坂…霧坂霊次
怯むことなく名乗る男、霧坂。
その顔に浮かぶは追い求めた仇に出会えたことを喜ぶ暗き歓喜。
スイ:霧坂…なるほど、そういうことか。いいよ相手してあげる
知った名前なのか魔王は遊ぶことを承諾した。
霧坂:後悔するなよ
スイ:させてみなよ
魔王は軽く手を広げてみせる。
王たる者に構えなどいらぬと言うように。
対して、霧坂は油断なく魔王を睨む。
霧坂:でぇぇいっ!
先手を霧坂!
紅き刀で魔王へと斬りかかる。
??:そこまでだ
しかし、魔王を庇うように新たな影が現れ、その手に持った大鎌が霧坂の刀を受け止めた。
霧坂:邪魔をするなっ!
吠える霧坂だが、大鎌は揺るがない。
スイ:…なんでいるの?ナハトさん
魔王…いや、スイは自分を守った影、死神ナハトに問い掛ける。
ナハト:お仕事だよ。魔剣使い、退け。あんたとは戦いたくない
霧坂:勝手なことを…
霧坂は二人から距離をとり構えなおす。
その目は邪魔をしたナハトへの憎悪に燃えている。
ナハト:お互い様だ。どうしてもと言うなら俺が相手になろう
大鎌を構えるナハト。
霧坂:貴様…っ!!
スイ:ちょっと、ナハトさん
スイは自分の楽しみを奪おうとするナハトへ抗議しようと…
ナハト:逃げろ。あんたでも相手が悪い
ナハトはスイの抗議を最後まで聞かずに撤退を要求する。
スイ:あの刀…もしかしていわゆるアレ?
ナハト:近い性質だな
魔を穿ち、神を殺し…世界を焼き尽くすモノ。
神々の間ですら伝説として語られるモノ。
それこそがラグナロクの至宝の一つスルトの剣。
無論霧坂の持つそれはレプリカである。
ではあるが、その刀身に込められた憎しみを糧に超常たる者を断つことすら可能とするだろう。
スイ:なるほどね…霧坂くん、次に会う時には万全の状態で相手するよ。それじゃねー
逃げることに悔しさはない。
あるのは自分を楽しませてくれる存在が現れたことへの喜び。
スイは笑顔で手を振りながら去った。
霧坂:待てっ!
ナハト:通さん
追う為に駆け出そうとした霧坂だったが、ナハトが立ち塞がる。
霧坂:あくまで邪魔するか死神!
ナハト:復讐が間違ってるだのなんだの言うつもりはない。だが、お前が仇だと呼ぶあいつを慕う奴がいる。お前が家族を慕っていたようにな
霧坂:何が言いたい?
ナハト:お前には仇だと追われる覚悟が、殺される覚悟が
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