アイデアを求めて

「失礼しま…佳奈多さん何してるの?」
寮長室にやってきた僕は中にいた新女子寮長の佳奈多さんを見て固まってしまった
「あら、直枝じゃない。私はこれよ」
「涼宮ハルヒの憂鬱…?」
佳奈多さんが僕に見せたのは人気のライトノベルだった。でもそれだけじゃない。机の上は佳奈多さんとは思えない程に散らかっている。サイズ的に漫画、小説に…ゲームまで!?
「葉留佳が最近読み出したみたいで、話をする為に小説に漫画にゲームにアニメをチェックしてるのよ。そうだ、直枝、あなたダンスしない?」
修学旅行事故から佳奈多さんは変わった。変わってしまった。簡単に言うなら…
『まるで葉留佳君が二人いるようだな…』
という来ヶ谷さんの言葉が的確だと思う。風紀委員の任期を終えた佳奈多さんは葉留佳さんと共謀して注意するかしないか絶妙なレベルの悪戯をするようになった。同時に趣味を探そうということで色々させられた。そしてハマったのが何故か二次元だった。西園さんのような趣味はないそうだけど、葉留佳さんやクドを見る目が時折来ヶ谷さんのようになっているのを僕は知っている。
それはともかく…
「恭介が見てたから知ってるけど、あのダンスのお誘い?」
「えぇ」
にべもない。当然と首を縦に振る佳奈多さん。
「こんな時期に?」
テスト前なんだけど。
「葉留佳を笑わせてあげたいのよ、私は」
彼女の行動理由は葉留佳さんであり、力の源も葉留佳さんだ。仲直りをして、家庭問題も解決に向かっている彼女は葉留佳さんとの『今まで』を取り返すかのように『これから』を満喫している。
ただし、染み付いてしまった外面は中々変わらないもので『素っ気なく愛想なく見えるクールで(オタクで)妹大好きな(ツンデレ)お姉ちゃん』…と自分で言っていた。自分でツンデレって言ってる佳奈多さんを見ると何故かたまに視界が涙で滲む。
「…考えておくよ」
「ちなみに断ったらもってけ!セーラー服の刑ね」
「いやいやいや!」
凄い事を言い出した!
「もしくは女装してCAGAYAKE!GIRLSの刑。ふわふわ時間でもいいわよ」
「恥ずかしいからっ!放課後ティータイムは男には辛いから!」
もってけ〜は電波な歌だから開き直れば平気なんだけど、放課後ティータイムの歌は男が唄うには恥ずかしいよ…
しかも女装って…みんな僕を女装させようとしすぎだから。
「ふん。その顔で男を語らないでよ」
「うわ…さすがに今のは傷ついたよ」
自覚しているとは言えダメージはある。
「今のはツンデレのツンの部分よ」
「えぇっ?」
「徐々にデレるわ」
昔の佳奈多さんは何処へ行ってしまったのか…
「…もういいよ。わかったよ踊るよ」
僕には最初から選択肢はなかったんだ。
「あら、そう?ありがとう直枝。既に西園さんと神北さんには協力を取り付けてあるのよ。直枝はキョンポジションね。私がハルヒで西園さんが長門で神北さんがみくる」
佳奈多さんはちゃっかりと主役をやるつもりらしい。しかも西園さんと小毬さんまで。
でも…
「メンバー五人だよね?足りなくない?」
「そうなのよね。いっそ来ヶ谷さんでいいかしら。下手に棗先輩を誘って卒業出来ませんとか洒落にならないし」
「…そうだね」
それは本当に洒落にならない。真人の進級で手一杯だから恭介には自力でなんとかしてもらいたい所存だ。
「それで、深刻な顔してたみたいだけど?」
と、今までと変わらない口調ながらも、違う空気を纏って佳奈多さんは聞いてきた。
「え、見てたの?」
「見えたの」
…絶対に見てた筈だ。本人が言うツンを実践してるんだと思うけど…もう少し照れ臭そうにして
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まろやか投稿小説 Ver1.30