幕間


榛希:改めておめでとう。乾杯

ワイングラスが高い音を奏でます。

時流:乾杯。今更だけど、走るの嫌いなのよね
榛希:…胸か?

おにぃは無遠慮に時流お姉さんの胸を凝視します。

時流:そうよ。特に膨らみ出した思春期の頃なんて男が思うよりずっと痛いのよ
榛希:…それはいわゆる男が第三の足を攻撃されたときみたいなものか?

最悪な返しです。

時流:わかるわけないわ。あたし、女だもの
榛希:まったくだ。ちなみに本当に痛いのは…
時流:榛希

NGワードをぶちまけそうなおにぃを時流お姉さんが遮ります。

榛希:ん?
時流:あなたねぇ、夜に男女が二人きり、しかも疲れてるのを我慢してまでお誘いにノってあげたのに下ネタしか言うことはないわけ?
榛希:ふむ…すまん、緊張してるんだ
時流:…誰が?
榛希:俺がだ。時流みたいなイイ女と二人でいるんだ。それで緊張しないほど遊んではいないつもりさ

口を湿らせるようにワインを含みながらおにぃは言います。

時流:ふふ、そうなの。奇遇じゃない、榛希
榛希:?
時流:緊張ほどではないけどね。言っておくけど、あたしは周りが思うような軽い女でも安い女でもないわよ?
榛希:そう思う奴の目は曇ってるな。時流の魅力に気がついてないのさ
時流:褒めたってなにもでないわよ

言いながらも満更でもなさそうな時流お姉さん。

榛希:こうして二人で酒が飲める。充分だろ。違うか?
時流:駆け引きを仕掛けてるのかしら?それともヘタレなだけかしら?
榛希:ヘタレなのさ
時流:よく言うわ

おにぃの返答に時流お姉さんは笑います。

榛希:お互い様だろう
時流:あたしは仕掛ける時には仕掛けるわよ
榛希:勝算がある時に?
時流:えぇ
榛希:なら同じさ。今の時流にこれ以上を求めても「だが断る」…だろう?
時流:どうかしら?
榛希:そうなのさ。時流はエロトークやその態度でカモフラージュしているが…

言い淀むおにぃ。

時流:…なにかしら?

挑発的な笑みを浮かべる時流お姉さんにおにぃは言います。

榛希:…乙女なのさ
時流:…あんまりからかうようならこっちにも考えがあるわよ?

想定外の言葉に時流お姉さんは驚きました。

榛希:酔っ払いの戯言ってやつさ。聞き流してほしい
時流:…ふぅ

まるでおにぃの言葉を飲み込むように、時流お姉さんは残ったワインを煽りました。

榛希:ほら

おにぃがワインを注ぎます。

時流:ありがと。お返し
榛希:あぁ

いつの間にか空になっていたおにぃのグラスに時流お姉さんがワインを注ぎます。

時流:…
榛希:…ふぅ

新たに注がれたワインを飲む二人。

時流:…ねぇ
榛希:ん?
時流:酔っ払いさんが襲いたくならないくらいにあたしには魅力がない?

アピールするように脚を組む時流お姉さん。
クラクラしそうなほどフェロモンが溢れてます。

榛希:馬鹿言え。なけなしの理性で押し倒したいって本能を押さえ付けてるんだよ

言葉の割に、おにぃは軽く言います。

時流:そう…
榛希:俺は?
時流:ん?
榛希:思わず襲いたくならないか?

冗談だとわかるように笑いながらおにぃが言います。

時流:どうかしらね
榛希:そうか
時流:…
榛希:…

また、静かに酌み交わす二人。

榛希:…なぁ
時流:なに?
榛希:いつまで…一緒にいられるんだ?
時流:…夢が醒めるまで、かしらね
榛希:…俺達は夢のキャラなのか?
時流:今ここにいるあたし達は蝶が見ている夢なのかもしれない
榛希:胡蝶の夢?
時流:えぇ。だって、そうでもなければ種族の垣根を越えて
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まろやか投稿小説 Ver1.30