「…」
「…」
沈黙が支配していた。
「どうでしょうか?」
静寂を切り裂いたのは西園さんだった。
「どうって…」
聞かれても困る…と言おうとした僕よりも早く、隣にいた恭介が口を開いた。
「没だ」
「没…ですか」
「幼稚園での出し物だぞ?こんなの出来るか」
僕達は今台本作りをしている。
恭介がどんなコネなのか近場の幼稚園の先生からの依頼を受けて、僕達は幼稚園でお芝居をすることになった。
「最近の子供はマセていると聞きますから問題ないかと」
「問題だらけだよ…」
幼稚園でこんな昼ドラはまずいよ。
「そもそも続きは?俺は死んだのか?理樹はこのあとどうするんだ?」
「結末は…あなたの心の中に」
それってつまり…
「出来てないんだな?」
だよね?
「いくつかあります。生きていた恭介さんが罪を償った直枝さんを誘拐、そして同性での結婚が出来る国へ。恭介さんが亡くなった場合は神北さんから事の真相を聞いた直枝さんが泣き崩れ、それでも遺言にある通りに生きていく決意をする。他には」
「もういい…」
頭が痛い…
僕と恭介は二人で頭を抱えた。
「せめて異性の話にする気は?」
「何故ですか?」
「何故って…」
理解出来ませんと言いたそうな顔の西園さん。
むしろこっちが何故同性話なのかを問いたい。
「鈴が俺をお兄ちゃんと呼ぶのはポイント高いんだがなぁ」
「いやいやいや…」
凄いピンポイントだよねそれ。
「なぁ西園、鈴と小毬を題材にした友情(ちょい百合)話で手を打たないか?」
「鈴さんと神北さんの友情(プチ百合)話…」
「…なんか余計な言葉が挟まってない?」
「気のせいだ」
「気のせいです」
本当かなぁ?
「とにかく、さすがに幼児相手にこの内容はNGだな。情操教育云々言うつもりはないが、理解出来んだろう」
「そうだね。童話とかわかりやすいのがいいかな」
「宮沢さんに桃太郎、井ノ原さんに金太郎、恭介さんに浦島太郎をやってもらって直枝さんに憑依する…というのは」
ん?それって…
「それはどこの電車ライダーだ…」
子供、特に男の子は喜びそうだけど…
「冗談です」
「助かるよ…」
そんなこんなで…
演目を決める為に僕らはさらに議論を重ねるのだった。
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