俺は嘘をついた。
些細な嘘なら誰だってつくだろう。
些細じゃない嘘…
俺は嘘をついた。
彼女を救う為に。
彼女の為ならば…
俺は世界だって敵にしてみせる。
―
ヒメがさらわれた。
犯人はわかっている。
『黒衣の死神』と『超越者』…ナハトとスイ。
最近になって活動を再開した『漆黒の鷲』と一悶着あったらしいが、完全に油断していた。
死神のような男と魔王の如き女…戦えば無事ではすまないだろう。
それでも俺には戦う理由がある。
―
殺し屋…記憶にある限りは、俺は幼少からそう育てられた。
理由など知らない。
養育者がそうだったのだろう。
とある任務で遭遇した化け物じみた姉弟との戦闘で不覚をとった俺は静かに死を待っていた。
そこで出会ったんだ。
??:そこで寝るのはどうかと思うよ?
ヒメに。
―
ヒメ:なんかお姉さんが喜びそうなショタ顔だからショウにする?ショウタかな?
ヒメに拾われた俺はまず名前を付けられた。
言っている意味がわからず、だがあまり良い理由ではなさそうだったが、断る理由などなかったので受け入れた。
ヒメ:んふふー。ショーちゃんは可愛いから私とお揃いだよ
よくわからないが、俺は『可愛い』らしく女装をさせられた。
以前、任務でも女装経験はあったので特に気にはならなかった。
ヒメ:喋り方が似合ってないから改めて。
初めて理不尽と思った命令だった。
ショウタ:俺がどんな喋り方をしたって構わないだろう
ヒメ:いーや、構うね。ショーちゃんはこれから自分を僕、そんで可愛く喋る!
ショウタ:…命令か?
ヒメ:命令です
ショウタ:わかったよ。これからは僕って言うようにするよ。それでいいかな?
ヒメ:OK!
―
裏路地。
俺はある情報屋を訪ねていた。
ショウタ:魔王を探している
情報屋:ふーん。俺が情報屋って知ってるなんて兄さん…
ベラベラ喋る情報屋の額に俺は銃を突き付けた。
ショウタ:喋るのが好きなら額にもう一つ口を用意してやるが?
情報屋:…そんなことしてこの世界…いや、界隈で生きていけると思ってんのかい?
ショウタ:敵なら殺す。そうでないなら利用する。魔王も死神も魔剣使いもな
情報屋:…本気かい?
ショウタ:お前で試してやろうか?
突き付けていた銃を更に力をいれて押し付けてやる。
情報屋:…学校さ。近くの高校にいるよ、魔王も死神も魔剣使いも
ショウタ:そうか。これは謝礼だ
俺は昔溜め込んだ金塊を見せた。
だが…
情報屋:いらねーよ。兄さんは危険だからここで消えてもらう
ショウタ:…
路地を取り囲む気配…ザコが徒党を組んだようだった。
ショウタ:光栄に思え。『血塗られた刃
lt;ブラッディ・エッジ
gt;』の手に掛かれることを…!
―
ヒメには大きな秘密があった。
ヒメは一度、病で死にかけた。
いや、この言い方は正しくない。
今も原因不明の病で意識不明なのだ。
だが、今ヒメはいる。
しかもさらわれたのだ。
オカルトに弱い俺だが、実物を見れば信じないわけにはいかない。
幽霊の存在を。
―
ショウタ:ここか…
ザコ連中を死なない程度に痛め付けた俺は近くの高校へ急いだ。
高校…ヒメに拾われ、ボディガードとして雇われて一緒に通った。
良い所のお嬢様なのに庶民な高校を選び、さらにはメイド喫茶でバイトを始めようとしたのをヒメの家族と俺で止めたこともあった。
ショウタ:ヒメ…今行く
今思い出に浸っても仕方ない。
そんな時間は有り余るくらいにあるのだから。
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