ヒメ:…なんで、二人がこんなことを?
私は漫画で見たことあるようなカプセルに閉じ込められていた。
ナハト:…正直に言えば気が進まないんだが、これも仕事でな
そう言うナハトさんの表情はサングラスでよくわからない。
スイ:強引なエスコートだったのは謝るよ。だけどね、ゆっくりしていられなくなったんだよね
ヒメ:…なにを?
スイ:これ…ヒメさんはなんだと思う?
ヒメ:…棺桶?
家でテレビを見てたら意識が遠のいて…気がついたら閉じ込められて…そして棺桶…わけがわからない。
スイ:その通り。吸血鬼なんかがよく入ってるやつだね。この中に…何があると思う?
ヒメ:…吸血鬼?
スイ:メルヘンな答えをありがとー。だけど残念、違うのです
ナハト:開けるぞ
スイ:よろしく。ではでは…棺桶オープン!
ヒメ:!…うそ…
棺桶の中…横たわるそれは…私だった。
―
昔、雪の日にわたしは拾い者をした。
可愛いらしい顔で、でも鋭い目をした男の子。
絶望したわけでもなく、ただ静かに死を待っていた。
わたしは彼を助けた…ううん、契約した。
内容は…
ショウタ:俺の死に場所の予約を頼む
ヒメ:わたしの胸の中でいいよね
ショウタ:…あぁ、それは魅力的だな
馬鹿なこと言ったわたしに、彼は初めて笑ってくれたのだ。
―
ナハト:白遊綺姫。大手企業の白遊綺グループの令嬢
スイ:白雪姫なんて素敵な名前だよねー
ヒメ:…
ナハト:数年前、暗殺者の少年を拾った。名無しの少年だ。君はその少年をショウタと名付け、ボディガード兼世話係として雇った
ヒメ:…調べたの?
ナハト:仕事でね
ヒメ:あなた…なんなの?なんで…
なんでショーちゃんが暗殺者だったなんて知ってるの?
スイ:なんでかなー。不思議だねー
ヒメ:ふざけないでっ
ナハト:共に生活する内に二人の間にある感情が生まれた
ヒメ:…っ
ナハト:まぁ、この辺はボカすが、ともかく二人は恋人になった。おめでとう
スイ:おめでとー
パチパチと拍手をする二人…こいつらっ
ヒメ:あんたたち…っ
ナハト:ここで一つの転機があった。高校を卒業した君は彼を連れて実家を出た
スイ:やるよね。お嬢様の行動力っていつの時代も驚かされるよ
ナハト:大学に通いながら、慎ましく二人暮らし。昔の歌謡曲みたいな生活だった。そこで…事件が起きた。君は病を患ってしまった。現代医学では手の施しようのない特殊な病気だ。君はみるみる衰弱し、機械の助けがなければ生命活動すら行えなかった
ヒメ:…
渦巻いていた怒りが萎えて恐怖へと変わっていった。
だって…不本意ながら実家の力でその辺りは知られてない…知られるはずない事情だから。
スイ:だけどヒメさんは元気になった。それまでの病気が嘘だったみたいにね。だけど、思い出してみて。その辺りの記憶あやふやでしょ?
ヒメ:…
その通りだった。
わたしは…ある日目覚めたらショーちゃんと寝ていた。
体はすこぶる快調…信じられない奇跡だった。
でもそれが何故なのかはわからなかった。
だって…それを不思議と思わなかった。思えなかった。
スイ:それはそう、だってヒメさんの体はまだ眠ってるんだから
ナハト:つまり、今の君は生き霊なわけだ
ヒメ:そんな…
なにを…言ってるの?
ナハト:特殊な事態だったが、無害だろうと我々は放置していた
スイ:だけどね、ヒメさんはあたし達が思う以上に危険な状態だった。心に巣くい、心を食べてしまう悪魔に憑かれてしまっていたの。発見が遅かったから既にその悪魔は災厄獣
lt;ディザスター
gt;になって
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