病院から出る。
カウンセリング…なんて言ってもそんなにたいした話はしていない。
どちらかと言えば、両親へのカウンセリングが主なのかもしれない。
父が車を回している間、俺は咲き誇る桜の花を見ていた。
季節は春。
なんの感慨もなく俺は高校三年生になった。
通信制…というやつのおかげだ。
…いつまで、俺はこんなことをしていくのだろうか?
医師が言うには不登校っていうのは真面目な奴ほどなるそうだ。
だからこんなことを考えていては負のスパイラルに引き込まれてしまうそうだが、性格なんて簡単に変わるわけがない。
「ん?」
誰か来た。
俯いた女の子だ。
その横には両親らしき大人の姿。
「…」
顔は見えなかった。
だが何か…引っ掛かるものがあった。
―
引きこもりのイメージは暗い部屋で、ゲームやネットばかりしていて…なんてものだろう。
あながちハズレでもないが、うちは両親の理解があるからそこまで引きこもってはいない。
食事だって両親と食べている。
「はぁ…」
ベッドに寝転がる。
考えるのは病院で見たあの女の子。
顔はよく見えなかったが、なにかの病気か、それとも俺の同類か…
まぁ、それがわかってもどうしようない。
女の子に話し掛ける勇気なんか俺にはないんだから。
「…」
そんなことを考えながら俺の意識は闇へと落ちていった。
―
「―し――も――し―」
「…」
「も――し――し――」
「……」
何か聞こえる…?
「もしも――も―もし」
「………」
なんだろ?…寝られないから静かにしてほしいんだけどな。
「…。すぅ〜」
「…………」
あぁ静かになった。よし、寝よ。
「起きろぉぉぉぉっ!!」
「うわぁぁぁぁぁっ!?」
耳元で叫ばれた!
誰だ!?何だ!?
「うわぁっだって!あっははは!」
「はぁ?」
俺の前に見覚えのない女の子がいた。
…?
「女の子っ!?」
「わ!?なに?」
俺の声に今度は女の子が驚いたが、そんなことに構ってられない。
「な、なんで女の子が!?」
「それこっちの台詞」
「え?」
「あたしの部屋でなにしてんのよ?」
あたしの部屋って…
「ここはお…僕の部屋のはずで…君こそなんでここに?」
女の子相手に緊張しているのか、『俺』が『僕』になっていた。
「はぁ?どこがあんたの部屋…?あれ?」
言いながら女の子は辺りを見回す。
そして言った。
「ここどこよ?」
「どこって…」
俺は辺りを見回してから言った。
「どこ?ここ?」
青い地面。
緑の壁。
赤い天井。
それが世界の全てだったのだ。
「なんか頭痛くなりそうよね」
「同か…?」
「どしたの?」
女の子は不思議そうに俺を見る。
「君、誰?」
「あたしも同じことを聞きたいわ。あなた誰?」
「僕は…」
同じ質問を繰り返すのも何なので名乗ろうかと口を開き…
「あ、ちょい待ち」
「?」
止められた。
「これ夢…よね」
「…そうだろうね」
こんな赤青緑の部屋に初対面の異性といる…夢に決まってる。
「ならさ、あんたはあたしの夢の登場人物。あたしが名前つけてあげるわ」
女の子はそう言った。
だが待ってほしい。
「え?待ってよ、君が僕の夢の登場人物でしょ?」
「はぁ?これはあたしの夢よ」
「いや、僕の夢…のはず」
「む!」
女の子が凄い目つきで睨んでくる。
はっきり言って…凄く怖い。
「いいわ。勝手に名前つけるから。あんたは今この時をもってマモルよ。夢烏(ゆめお)マモル」
ユメオマモル…ゆめおまもる…ゆめをまもる…夢を守る!?
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