「よぉ」
「遅かったのね」

今日もこの夢。
赤緑青の三色、RGBの部屋で愛と二人きり。

「ちょっと面白い動画を発見してね」
「なになに?どんなの?」

なんてことない会話に花を咲かせる。
初めて出会ったあの日から何日経ったのか。
俺はどうせ夢だと自分の境遇を話していた。
そしたらなんと、愛も同じ(引きこもり)だった。
しかもなったのはつい先日らしい。

「ねぇ」
「ん?」

愛とはまるで昔からの友人のように話が出来る。
だが、今日の愛は少し様子がおかしかった。

「キスしよっか」
「はぁ?」

頭と耳がおかしくなったかと思った。

「キス」
「OKOK、ジェニファー落ち着け。君は疲れているんだ」
「ジェニファーって誰よ。しかも疲れてるってスカリーがモルダーに言った台詞でしょ」
「なんでわかった…」
「主題歌がB'zだったから見てたのよ」
「く…」

なんて奴だ…。

「ってそんなことはどうでもいいのよ。キスよ。したいの?したくないの?どっち?」
「したいです」

…しまったぁぁ!?正直に答えてしまった!!

「じゃあ、しよ」

擦り寄る愛。
俺は両手を突き出し、ストップストップと愛を止める。

「待て!お前は」
「お前じゃない」
「…愛はいいのか?」
「だって夢だし」
「そんなあっさり…」
「なんならそれ以上もいいよ」
「…なに?」

何て言ったこいつ?

「だからキスより先もしたいなら」
「おい」

カッチーンときた!

「なによ」
「喧嘩売ってるのか?憐れんでるのか?」
「別に。あたしだって興味あるし。夢なら失敗しても大丈夫かなって」
「…なにかあったのか?」

…やけになってるのか?

「え?」
「夢でしか会えない俺達だけど…今日の愛はおかしい」
「なにもないわよ…」
「ならお前…どれだけ俺に失礼なこと言ってるかわかってるか?」
「…!」

愛が息を呑むのが伝わってきた。
何が失礼って…

「俺が失敗なんかすると思ってるのか?」
「ってそっちかい!」

愛が思わず俺にツッコミを入れた。

「俺のPCの中がどうなってるかも知らないでよくもそんなこと言えるな」
「…こいつヤバイ!?」
「ベッドの下なんかに隠す時代じゃないんだぜ」
「威張るな!飛翔はそんなの持ってないって思ってたのに!最低!」

いやいや愛君、MAXコーヒーより甘いんじゃないか?

「はん!エロに興味がない男子高校生がいるはずないだろ!愛の読んでる少女漫画にだってエロいシーンあるだろ!」
「あれはエロじゃない!純愛よ!飛翔にはわかんないの!?美少年同士の絡みの美しさが!」
「BLだった!?胸毛に腕毛にすね毛の生えた男の絡みが美しくあってたまるかよ!」
「美少年にそんなの生えてないわよ!」
「二次元と三次元を一緒にすんな!」
「そっちこそ!」
「なんだと!?」
「なによ!!」

キスでもすんの?みたいな距離感で俺達は顔を突き合わせた。

「がるるる!」
「ぐるるる!」

通産何度目かの睨み合いだった。

「はぁ…調子出てきたんじゃないか?」
「う…」

馬鹿な話を振った甲斐があった。
…本当だぞ?

「話してみろよ」
「…うん」



愛の話はこうだった。

厳しい両親、優秀な姉妹に囲まれてつらいこと。
自分のことを近所の主婦がネタにしているらしいこと。
そして、そのことに母親と姉妹は怒ってご近所さんと険悪らしいこと。

「…良い家族じゃん」
「それがプレッシャーになるって…飛翔にだってわかるでしょ」
「あぁ…まぁ…」

ここでの態度からはわかりにくいが、現実(リアル)での
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まろやか投稿小説 Ver1.30