魔王の娘。
魔界の王女。
蝶よ花よと、上にも下にもつかないような扱いであたしは育った。
昔はそれを平然と受け止めていた…いや、疑問が生まれる余地すらもなかっただけ。
だけど、あたしは彼女に出会ってから外を知ったのだ。
レリエル…片翼の天使。
―
スイ:始めようか。ヒメちゃんの体に巣くう災厄獣
lt;ディザスター
gt;を今から祓うから
厳かに告げるは魔王と呼ばれるのを嫌う魔王…その名をスイ。
ヒメ:…それって
スイ:生きたいよね?死にたくないよね?
他の答えなど認めない…言外にそう感じさせる口調。
ヒメ:…うん
スイ:死にたくないってヒメちゃんに強く思ってもらう為にこんなことをしたんだよ、ごめん
スイは頭を下げた。
ヒメ:…
スイ:無事に済んだらビンタでもなんでもしていいよ。痛いのは嫌だけど我慢する。我慢して、あとでナハトさんをぶん殴るからさ
ナハト:いや、お前は共犯者を殴ろうとするなよ
タイミングを待っていたように黒衣の男、死神が現れた。
スイ:ナハトさん、あっちは?
あっち…暗黒の鷲
lt;ダークネス・イーグル
gt;とアサシンの戦場である。
ナハト:人との戦いに慣れてないのか、アサシンが優勢だ。魔剣使いが魔剣を解放する前に始めた方がいい
スイ:ん。ヒメちゃんは生きたいって強く思っててくれたらいいから
ヒメ:…
緊張しつつ、ヒメはきつく目を閉じる。
スイ:信じられないかもしれないけど、今だけは信じて
ヒメ:…うん
儀式が…始まる。
―
ショウタ:…
だらりと下げた両手に一本ずつ、合わせて二本のナイフを持つアサシン。
霧坂:…速いっ
対するは、長大な魔剣を携えた剣士、霧坂。
ショウタ:違うな
霧坂:な!?
ショウタ:貴様が遅い
目にも止まらぬ…いや、見えない速度で霧坂に斬り掛かるアサシン。
霧坂:く…っ
その速度に対応仕切れない霧坂は急所を守るのが精一杯だった。
ショウタ:血塗られた刃
lt;ブラッディ・エッジ
gt;とは武器の名前じゃない。俺自身のことだ
霧坂:アサシン風情が…
ショウタ:そうやってせいぜい見くびるがいい、魔剣使い
霧坂:…貴様は何故魔王の味方をする?何故魔王を信じられる?奴はあの霊体の女を取り込むつもりかもしれないんだぞ
ショウタ:…オカルトには疎いから詳しい事情はわからんが、本当に大事な局面で嘘をつくほどあいつらも腐ってはいないだろうし、なにより魔王を討つ為と、ヒメを斬ろうとした貴様を許す気にはなれないからな
霧坂の言葉にアサシンは動きを止めて、そう返した。
霧坂:許してもらう気などない…まずは貴様を倒し、魔王を討つ
霧坂が魔剣を構えなおしアサシンを見据える。
ショウタ:言うだけなら誰だって出来る
アサシンもまた、二本のナイフを構える。
霧坂:…魔剣よ、全てを焼き尽くす魔剣よ。我が血を代価にその力を解き放て!
霧坂は魔剣で己の腕を斬り、血を魔剣に捧げる。
ショウタ:…っ!
そして…世界が炎に包まれた。
―
ナハト:っ!魔剣を発動させたか…
魔剣の発動を死神は察知した。
スイ:…
ヒメ:…
スイとヒメは意識を集中させ、精神世界
lt;アストラルサイド
gt;へ行っている為に気がつかない。
ナハト:スイの邪魔をさせる訳にはいかない…だがどうする?
二人の、特に術者であるスイの精神が乱れる…それはつまり儀式の失敗である。
??:こっちは任せなさいよ
そんな時、死神が予想しなかった人物が目の前に姿を見せた。
ナハト:…あんたは
??:スイ
次へ
TOP 目次投票 感想