時流:榛希のネクタイをDoラちゃん柄にしたのはあんたね、ゆり
ゆり:!
笑夢:…あの、話が見えないのですが
時流:百聞は一見に、ってやつね。見てみましょ
一行はおにぃの自室へ向かいました。
――――
榛希自室
――――
笑夢:こ、これは…何と言うか…Doラちゃんですね
なんということでしょうか。ネクタイがDoラえもんで埋め尽くされていました。
榛希:さすがに参ったよ、これは。新しく買う時間もないからこれをつけていくが
ゆり:えーっ!?
ゆりちゃんが驚きの声をあげました。
時流:なによ?
ゆり:おにぃ、お仕事行っちゃうの!?
榛希:日曜だからって休める仕事でもないからな
そう言っておにぃは肩をすくめました。
ゆり:そんな可愛いネクタイつけていったら恥ずかしいから休もうよぉ
榛希:そうもいかん。大事な会議が…なんだか休日出勤する親父の言い訳みたいだな
自分の言い分に顔をしかめるおにぃ。
なにか嫌な思い出があるのかもしれません。
ゆり:やだよぉ…一緒に遊ぼうよぉ…
ゆりちゃんがおにぃの手を引こうと…
時流:ゆり!
ゆり:ッ!?
しかし、伸ばした手は時流お姉さんに阻まれてしまいました。
時流:一緒に遊びたいって…それでこんなことをしたの?あんたは!
凄い剣幕です。
ゆり:…
笑夢:まぁまぁ、時流さん落ち着いて。ゆりちゃんにも何か事情があって
笑夢お姉ちゃんが宥めようとしますが、
時流:姉さんは一々ゆりに甘いのよ!それじゃこの子の為にならないってわからないの!?
それがまた時流お姉さんの逆鱗に触れてしまいました。
笑夢:どうしたんですか?普段の時流さんらしくないですよ?
時流:らしくない?らしくないのはどっちかしら?姉さんがそんなだからゆりがこんな甘ちゃんに
榛希:時流!
止まらない言葉の奔流を止めたのはおにぃ…榛希さんでした。
時流:っ…ごめん
榛希:…ゆり、君がこの悪戯を?
榛希さんはゆりちゃんと視線の高さを合わせてそう聞きました。
ゆり:…ぅん
しかしゆりちゃんはうなだれて、視線を榛希さんと合わせられません。
榛希:理由を聞いてもいいかな?
ゆり:…おにぃ、最近お仕事ばっかりで大変そうだったし…カズくんもゆりも、お姉ちゃん達も寂しそうだったから…こうすればおにぃ、お仕事休めるかなって…
榛希:…そうか。心配してくれてありがとな
榛希さんは礼を述べると、ゆりちゃんの頭を撫でました。
ゆり:おにぃ…
ゆりちゃんは初めて顔をあげて榛希さんの顔を見ました。
榛希さんは、おにぃの顔で笑っていました。
榛希:…ここで、今日は仕事休むか!って言えたらドラマなんだが、そうもいかないんだ
ゆり:ぅ〜…
榛希:確かに俺が休んだって誰かが代わりをしてくれるだろうさ。だけどな、そのせいで迷惑を被る奴がいる。誰かに迷惑がかかるってわかってて遊んだってきっと楽しくなんてない。そう思わないか?
ゆり:…うん
榛希:それにさ、これは俺の仕事なんだ。それを投げ出すことなんか出来ないししたくない。だってそれはきっと凄く格好悪いから
ゆり:…
榛希:この仕事が終わったら遊びに行こう。それまで待っていてほしい
ゆり:…ん
ゆりちゃんは小さく頷きました。
榛希:ありがとう。それとごめんな…それじゃ行ってくる。あ、そうだ
部屋から出ようとした榛希さんは悪戯めいた笑いを浮かべて三人を見て言いました。
榛希:このネクタイ、似合うと思わないか?愛着がわきそうだよ
時流:…バカね。さっさと行ってきなさいよ。それで周りに自慢すればい
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