〜幸せとはなんでもないようなこと〜


榛希:ただいま
時流:帰ったわよ

秘密のデート(?)から帰った二人は、明かりのついていたリビングに顔を出した。

笑夢:お帰りなさい。あの…お話があるんですが
榛希・時流:?

神妙な顔で迎え入れてくれたのは、相坂三姉妹長姉笑夢。
榛希と時流は笑夢の話を聞くことにした。

―説明中―

榛希:なるほど…給湯器が壊れたか
時流:うちのお風呂入れないってわけね?

家の給湯器が故障し、今現在冷水しか出ないというのが笑夢の話だった。

笑夢:営業時間外で、修理を呼ぶのも明日になってしまいます。なので、今日は銭湯に行かれたらどうでしょう?

銭湯なんて、ほとんど経験ないな…笑夢の提案を聞いてそんなことを思った榛希は、パートナーに声をかけた。

榛希:銭湯か…時流はどうする?
時流:どうって…あたしらだけで?
笑夢:壊れたのが私とゆりちゃん、カズ君が入ったあとだったので…お二人でどうぞ

どうやら、自分達以外は行かないらしい…そう聞いて時流は少し考える。

時流:ふむ…

不特定多数の人間がいるであろう公衆浴場か…それともホテル?
銭湯と較べれば割高だが、しかしながら最近シてないし…どうせなら…
などと、時流が思考の海に潜っていたら…

榛希:嫌ならスイ姉に頼むなりしてもいいが

榛希は時流が気乗りしないように見えたようだった。

時流:…いいわよ。一緒に行きましょ、榛希

何やら榛希は乗り気のようだったので時流は付き合うことにした。

笑夢:ではこれを
榛希:…なんだ?

榛希が手渡されたのは…赤い布だった。

笑夢:赤い手ぬぐいです。銭湯に行くカップルはこれをマフラー代わりにして行くそうですよ

笑夢はこれぞ名案と、提案をする。

時流:姉さん…今夏よ?

しかしながら、今は夏目前であり、マフラーなど不要だった。

笑夢:あ…迂闊でした

一転、しまったという顔になる笑夢。
しかし…

榛希:時流、突っ込み所はそこじゃない

冷静が信条の榛希のツッコミは…

笑夢・時流:?
榛希:笑夢さんの言った話、元ネタは歌なんだが…相当昔の、だ。取り敢えず、元号は一つ前

想像以上に地雷で、苛烈であった。

笑夢:…
時流:…

沈黙。
それは笑夢の心に深い傷をつけ、えぐった。

笑夢:…どうせ、どうせ私は旧世代ですよ…ジャンプは黄金世代ですよ…ジョジ○立ちしたくて筋トレしてましたよ…らっきょ食べてラッキ○マンになりたかったですよ…実は変態○面愛読してましたよ…ライジング○ンパクトが読切→打ち切りエンド→復活したのだって知ってますよ…なんであの作者さんサンデ○に移ったんでしょうね?

途中から何を言いたいのか自身でもわからなくなってきていた笑夢だが、取り敢えず言い切ってみた。

榛希:知るか

だが榛希は両断する。

時流:榛希、どうでもいいから早く行くわよ

そして、時流もまた存外、姉に冷たかった。

笑夢:どうでもいい!?どうでもいいとはどういうことですか!?ねぇ!?時流さん!?待って!泣いちゃいますよ!?お姉ちゃん泣いちゃいますからね!?

非常にも扉は閉じられ、次いで車のエンジンがかかる音。
そして車が出る音。

笑夢:…くすん、本当に行っちゃった…いいですよ…お酒飲んじゃうもん…ゆりちゃぁぁぁん(泣

二人は知らない。
家に一匹の虎が現れたことを。
二人は知らない。
家に帰ったあと、どんな苛酷が待ち受けているのかを。
10/05/29 00:02更新 / ナハト
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まろやか投稿小説 Ver1.30