所変わって、白遊綺邸。
相坂時流からヒメを取り戻したショータと楠。
ヒメは夜も遅いからと楠を家に招待するが、それは罠だった。
楠はヒメに手紙を手渡す。それは白遊綺グループ会長からのものであり、そこには衝撃の事実が書かれていた。
明けて翌日。
ショータ:…
楠:……
その手紙が元で、二人の間に流れる空気は更に険悪になっていた。
殺気が飛び交い、沈黙が支配するリビング。
ショータ:なんで、君がここにいるんだい?
静寂を先に破ったのはショータだった。
楠:お嬢様のことを大旦那様に頼まれたのよ。あんたじゃ頼りないんでしょうね
大旦那…つまりはヒメの祖父のことであり、グループ会長…手紙の差出人である。
ショータ:…
ヒメとショータはヒメの両親…現当主の許しを得て二人暮らしをしている。
が、先代はそれを快く思っていないらしく、今だ学生の二人に同棲など不謹慎であるとして(実際は重度の孫バカ)、監視役としてメイドの少女が送り込まれたのである。
ヒメ:はーい、ご飯が出来ましたよー
対立する二人の殺気など知らぬとばかりに平然と現れるヒメ。
その手には大量のソーメンが入ったボール。
楠:お嬢様
ヒメ:楓の口に合うかわからないけど…
茹でただけのソーメンに使う言葉ではあるまい。
楠:いえ、口を合わせる所存ですお嬢様
合わさねばならないほどにソーメンが嫌いなのだろうか?
ヒメ:ショーちゃん
ショータ:ん?
ヒメ:ご飯食べたら買い物行こう。楓の服
麺つゆ(三倍濃縮)を水で割りながらヒメ。
ショータ:…持ってきてるんじゃないの?
ヒメ:メイド服とパジャマしかなかった
私服がない。
楠:お嬢様、お言葉ですが、私はこの作業着と寝巻さえあれば
ショータ:…こんな街でメイド服を着た人間なんかいたらすぐに噂になってヒメが恥ずかしい思いをするだろうね
ヒメ:ボクは別に恥ずかしくなんか…あ、話題にはなるよね
話題にならないのは特殊な街であったり、とある祭り会場、喫茶店くらいではなかろうか?
楠:恥ずかしい、とか女装してる奴に言われたくないわー
目は合わせない楠。
言われてみたら恥ずかしいかもしれない。
少なくとも、履歴書に書くには厳しい趣味と言えるだろう。
ショータ:…
楠:…
ショータ・楠:やんのかごるぁぁぁ!?
双方、ともに立ち上がり構えを…
ヒメ:食事中に席を立たない、暴れない!
とろうとしたところに響き渡るヒメの喝。
ショータ:う…
楠:あぅ…
立ち上がった二人は、しかしすごすごと座るしかなかった。
ヒメ:喧嘩上等!だけどね、最低限のルールは守らないとダメ!わかる?
ショータ:…
楠:……
顔を背けるショータと、気まずそうに俯く楠。
ヒメ:わ か る ?
そんな二人の頭をガシッと掴むヒメ。
もはや、二人に逃げ場はなかった。
ショータ:…わかったよ
楠:…はい
二人は奇しくも、初めて同じ事を思った。
『目の届く所での喧嘩はしないようにしよう』
奇妙な同棲生活が始まろうとしていた。
―
そして、神谷・相坂家。
朝食も済み、リビングでまったりする五人。
笑夢:へぇ、マーシュさんに楠さんですか。また賑やかになりそうですね
満面の笑みの笑夢。別に酔っているわけではなく、愉快な友人が増えるのが嬉しいのだ。
時流:そうね
ゆり:会うのが楽しみ♪
ついにお姉さんキャラデビューだとゆりは内心喜んでいるのだが、お姉さんキャラはもはや飽和気味である。
榛希:ふぅ…銭湯に行っただけなのに色々とありすぎたぞ
昨日一
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