――むかしはよかったなぁ…。
自身の年齢に不相応な思考に囚われた男は沈みゆく夕日をぼんやりと眺めながらつくづくそう思った。
これでも少し前までは結構モテた。
幼馴染み達には及ばないがクラス内の級友達との気の置けない関係も気に入っていた。
だが、それも今では見る影も無い。
なんら普段と代わりばえのない日々。
されども充実していた日常。
しかし凋落は確かな形で男の頭上に訪れたのである。
たったひとつ。
たったひとつの噂が男の周囲の環境、その全てを変えてしまった。
安寧なる日は沈み落ち、いわれの無い揶揄恥辱に耐え続ける。
気がつけば…、そんな日々に生きて居た。
所詮は噂だ。
時間が経てば、皆が飽きれば自然に消失するに決まっている。
そんな苦し紛れの言い訳を胸に屈辱の日々に耐えるも、降り注ぐ雪のように絶えずのし掛かる辛苦に男の意志は早くも挫けかけていた。
そして思う。
あの噂さえ…。
あの噂さえ無ければと……。
↓ちなみにあの噂↓
『ロリ疑惑』
恭介は思った。
ロリコン扱いはマジ勘弁してください! …と。
なんせ噂が表に出てからというもの、自分を見る女子の視線があきらかに訝しげなものに変貌した。
その上男子もどこか一歩引いたようなよそよそしい態度を取るようになった。
何故か一部男子は逆に親しげに同士と呼んでくれるようになったが、なんの慰めにもなりゃしなかった。
まぁそれはともかくだ。俺は現状に大いに不満があった。
なぜならそもそも俺はロリコンなどではない。
ロリ疑惑が浮上した一件にしたってその場限りの冗談のつもりで発言したに過ぎない。
――もっともアレを鈴に聞かれてしまったのは痛恨の極みであったが…。
あれ以降というもの、鈴に対する兄の威厳は没落の一途を辿りまさしく変態扱い、真人や謙吾が俺をからかうネタとしてロリロリ言いだす始末。
それだけなら…っ、それだけならまだよかったんだ…ッ!
だが状況は俺にとって最悪の方向へと推移していく。
あの日、何気ない会話の中で真人がいつものように言い放った。
「まっ、お前ロリだしな!」
いつもなら「何度も言うが俺は別にロリじゃねえッ!!」と、返す所だがこの日に関しては少し事情が違った。
偶然、本当に偶然ふたりの人物がその場に出くわしてしまったことである。
件のふたり…、来ヶ谷 唯湖と三枝 葉留佳。
………最悪だ。
なんせ双方共に基本楽しけりゃOKで生きている人間である。
ああ……、もし本当に天上の神々が実在するのならば声高らかに問い質したい。
なんで毎度狙ったかのように最悪のタイミングで一番出くわしてはいけない人物と遭遇するのかと。
視線が交じ合う。
ニヤリ――と弄り甲斐のあるオモチャを見つけ、心底嬉しそうに表情を歪めるふたり。
「ま…」
待て――と止める猶予すらありはしなかった。
ふたりは瞬時に踵を返すとあっという間にその場を離脱。
恭介はあわを食って後を追うも相手はイリュージョンと称し何故か視認不可能な速度で動ける来ヶ谷と、普段から風紀委員相手にルパンととっつぁ〜んよろしく珍走劇を繰り広げている三枝である。
結局その影すらも捉えることが出来ず、半ば確信めいた不安を覚えながら帰宅の途につくことになる。
そして翌日。
……手遅れだった。
敢えて言うならば認知度100%だった。
文字通りあっと言う間に広がりジャ○ネットの社長もビックリなくらいオマケがごってり装備の大サービス。
ちなみに配信担当三枝、編集担当来ヶ谷だそうだ。
後日、本人達曰く。
「
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