「オオオオオオォオォオォオォオォッッッッ!!!」
咆哮と共に職員用の机が宙を舞う。
「避けよ!」
グイと手を引かれる。
「え? ひぃやっ!?」
――ガオンンッ!!
職員用机があたしがいた場所のタイルを削り取って後方にすっ飛んでゆく。
「ド阿呆がっ! 気を抜くなと言っておろうっ!!」
そんなことを言ってもこんな経験がないからすぐに対処できるわけないじゃないっ!
一般女子高生でこんな経験をしている人がいたら今すぐここに出てきて欲しいっ!
「く……っ!?」
横では洋介が飛んできた瓦礫をギリギリでかわした。
「か、かわすだけなら問題ない。いいからお前は自分の心配だけしていろ」
いつもの様にクールに言うが、その顔には余裕が一切ない。
「ク……ッ、猫の手程度には助けになるかと思いきや――飛んだ期待外れよの」
獏が何かつぶやいたが、あたしたちはもちろんその声を拾えるほどの余裕なんてない。
「男、女!」
獏から声が飛ぶ。
「お主らはそこで呆けておれ! 死なぬ程度にな」
それだけ言うと、
地面が爆(は)ぜた。
一瞬だった。獏が既に悪夢の間近まで飛んでいた。現実では在らざる速度だ。
悪夢の反応は全く追いついていない。
「ぬおぉおぉおぉおぉおぉおぉォォォッ!!」
悪夢の目前で急激に体を捻り、遠心力がたっぷりと蓄えられた蹴りが放たれた。
ひしゃげていた左腕を喰うかのように食い込む白い脚。それでも回転は止まらない。
筋肉に覆われた分厚い左腕が肉塊と化し千切れ飛ぶ。
「つ、強い……」
あたしからなのか洋介なのからか、自然と口からそんな言葉が漏れる。
獏の攻撃は止まることを知らない。
「フンッ!」
爆音を伴い掌底が悪夢の顎を確実に捉えた。
突き上げられた頭が天井を破り、削り、その巨躯が大きく仰け反る。
すかさず丸太のような右腕を抱え込む獏。
くるりと回り、悪夢に自分の背をつける。そして。
「おおおおおぉぉぉぉぉぉーーーッ!!」
腕を抱え、背で巨躯を跳ね上げた。
ぶっきら棒な背負い投げだ。だがスケールは全く違う。
暴力的な力によって跳ね上げられた巨躯が天井を粉砕し、校舎2階に衝き抜け、2階のあらゆる設備を破壊しながら半弧を描く。
廊下へ叩きつけられても尚勢いが止まらない巨躯が、あたし達と反対側の校舎側面を瓦礫にしながら校舎外へと飛ぶ。
「――終いじゃ」
いつの間にか上空へ舞った獏が、アスファルトに横たわる化物の直上からしなやかな脚を掲げ急降下した。
それは落雷を思わせるほどに地を響かせた。
獏の貪欲とも言える力が篭められた踵落しが悪夢の腹部に喰い込んでいた。
土煙が収まり廃墟に不気味な静けさだけが残った。
全ては刹那の出来事だ。
あたしと洋介は、ただその光景をあんぐりと口を開け見ているしかなかった。
何が起きたのかも理解に及ばない。
――スチャッ。
「腑抜けたツラをしおって」
あたしたちの前に獏が立った。長い髪を手で払う。同時に土ぼこりが舞う。
まるで猫がねずみを取ったのを自慢しに来たような、そんな顔だった。
「奴には今まで散々に苦戦させられたが、いざ本気になると大したことがないものよ」
戦いの余韻か、勝利の喜びなのか、獏の目は子どもの様に輝いていた。
「ば、獏って……」
「なんじゃ」
「……すごいね」
そんな単純な言葉しか出なかった。だが獏は、
「そうであろう。フンっ、あの程度の悪夢なんぞ妾に掛かれば造作もない」
嬉しそうだった。
あー……意外と感情が顔に出やすいタイプなのかも。
呆けていた洋介も、
「……オレたちは助かったのか?」
ようやくメガネを直し、言
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