はじめての遊び

ある休日、僕は珍しく一人で部屋で本を読んでいた。
特に天気が悪いわけでもなく、体調が悪いといったわけでもない。
逆に天気は良いくらいで、いつもならみんなで何かをして遊ぶような天気だった。
だけど最近は皆用事があって忙しいらしく、学校が終わったら帰ってしまう。
真人も最近は謙吾の部屋に泊まりに行っていて、たまに帰ってくるくらいだ。
・・・実はちょっとだけ寂しかったりする。

「理樹っ!何も言わずこれを着てくれ!!」
最近は部屋に閉じこもっていた恭介がめっちゃ良い笑顔でノックもせずに部屋に入ってきた。
持っていたのは薄いピンクのゴスロリ服、そしてお揃いの帽子だった。
とりあえずちょっとひいた。

なんでこんな服を、と言おうとしたところで、
「何も言わずに着てくれ。頼むっ!」
と手を合わせ、頭を下げてきた。
最初に入ってきた時の、俺今テンション最高!、的な顔と今の必死さに押され考えるヒマもなく自然と僕は頷いていた。

少し恥ずかしくも恭介に部屋から出てもらって着ようとすると、
「おっと、これを忘れたら元も子もない。」
恭介が持ったのはセミロングのウィッグにコウモリのような羽。
おそらく背中につけるのだろう、1メートルはある。
…女装の次はコスプレか。
さすがに断ろうとすると、
「……もしかして、着てくれないのか。」
泣きそうになりながらプルプルしている!
うわぁ…必死に涙こらえてるよ・・・。
断れるわけもなく着替えていると、
「あ、悪い。これも履いてくれ。」
カボチャパンツだった。
・・・恭介はホントに変態さんなの?

「よし!着てくれたか、理樹!」
「まぁ・・・ね。」
さすがにカボチャパンツは穿かずに返した。
っていうか顔に叩きつけた。
っていうかなんで持ってる。
「次は・・・」
まだあるのか!
「そのままの格好で手を胸に当てて、う〜☆、ってやってくれ!」
てっきりまだ装飾品があるのかと思っていただけに、そんなことを言うもんだから(これだってかなり変だが)僕は半分理解しきれないまま、
「…う〜☆」
とかやってた。
恭介は微笑を浮かべながら、
「…理樹、これは遊びなんだ。
 もっと笑顔でやろうぜ。
 ほら、う〜☆って」
何の遊びか気になるけど、それ以上にこの☆は必要なのだろうか?
でもこれが遊びだというのなら確かに楽しまなきゃ損だ。
最近は皆とも遊べなかったし、少しくらい恥ずかしくても良いかもしれない。
「うん、そうだね。」
「恭介も一緒にやろうよ。」
「ああ、もちろんだ!」
「いくよ、せ〜のっ!」
「「う〜〜〜〜〜〜☆」」

ブッ!!

恭介が勢いよく鼻血を噴きだした!
「き、恭介!?」
「だ、だいじょーぶだ。」
「大丈夫じゃないよ!」
ティッシュを持って顔を向けさせる。
「ちょ、待っ…」
クイッ

ブバァッ!!

さっきより盛大に噴き出した!!
「えええええええええええええ!?」
さすがに驚いて思いっきり叫んでしまった。
僕の声が聞こえたのか、真人と謙吾が来てくれた。
「「どうした!?理…樹。」」
「真人、謙吾!」
「理樹、その服は…。」
二人ともなぜか固まっている。
だけど今は!
「恭介が鼻血を大量に噴いちゃったんだ!」
「理樹大丈夫だ、落ち着け。」
「ああ、俺は大丈夫だ。」
「そんな訳・・・。」
見事に止まっていた。
「なっ、大丈夫って言ったろ?」
僕はかなり長い安堵の息を吐いた。
誰だってあんな出血量を見たら不安になる。
どうやって止めたかはもう気にしないことにした。
「良かったよ、ホントに…。」
「心配掛けさせたな。」
これでひと段落、かと
次へ
TOP
投票 感想
まろやか投稿小説 Ver1.30