2月13日、世間一般ではバレンタインの前日。モテる男は心を弾ませ気になる女の子からのチョコを待ち、チョコを贈る女の子はどうすれば意中の男に気持ちを伝えられるか、必死に考える日である。
それとは対照的にモテない男どもにとっては少し気分が落ち込む平日であるとともに「もしかしたら一つくらい・・・。」と考えてしまう日である。そうと考えなければやっていられない日とも言える。
「チョコが食べたい・・・。」
「買ってくれば?」
ぼそり、と言ったどう見ても普通の10代男子の望みは、親友の無慈悲ともいえる声にあっさりと切り捨てられた。
「・・・ユージ、俺は自分で買ったチョコが食べたいんじゃない。」
「女の子から貰ったチョコが食べたいんだ!!」
そんなことを大声で言う男はチョコは貰えないだろう、とユージは思う。
「なら直接言ってみたらどうだ?ケンジなら貰えるかもしれないぞ。」
「直接言うのが恥ずかしかったら手紙にでも書いて読んでもらえ。その時は誠意を表わす為に土下座をするのが基本だぞ。」
「土下座をする必要がどこにある!?」
2月13日、ある男子の間ではこんな会話が繰り広げられていた。
「そもそもユージは貰える当てがあるからそんな風に余裕でいられるんだ。」
「俺なんか貰える当てがあるどころか女子との会話すらうまくいかないんだからな!」
それは自業自得というか努力が足りないんじゃないか、とユージは思う。
ユージにはチョコを貰える当てはあるがそのほとんどは義理である。だが貰えるのはありがたいと言ってホワイトデーにはチョコをくれた子全員にお返しをしていた。そんなマメなところもあり、中学時代からユージはチョコ0という記録を残したことはなく、チョコの数は年々微増の傾向にあった。ピーピー泣きごとを言うケンジにもっと努力しろと言いそうになるが、マジ泣き一歩手前のケンジを見て言葉をひっこめ、ため息をついた。ため息を「愚痴を聞いてやる」というユージの意思表示とみたケンジはモテない男子代表として愚痴を並べ始めた。
「そもそも!」
「ん?」
「バレンタインだからってチョコを渡す理由にはならないと思う!」
「・・・はぁ。」
愚痴を言い始めたケンジを見たユージはひとまず愚痴を聞いてやることにした。
「ましてやチョコを贈る事で気持ちを伝えるなんてそんな行事にする必要が無い!」
「伝えたい気持ちがあるなら思い立ったその日に伝えるべきだ!同じ日に気持ちを伝えたら貰った男は返事に困るだろう!」
貰えた試しが無いのに何を言うのだろうか。
その後、ケンジの愚痴は30分ほど続いた。だがその愚痴の大半は要約すると最初と同じ内容で、「バレンタインなんて不要!」「リア充爆発しろ!」「モテる男は俺に女の子を紹介せよ!」の三つだった。そして最後は「彼女が欲しい。」と言って終わるのがほとんどだった。
30分も同じ愚痴を延々と聞かされ続け辟易してきたユージは、愚痴の隙を見計らい反論することにした。
「じゃあお前はみすみす女の子が勇気を振り絞れる日を逃す、って言うんだな。」
「えっ・・・あっ・・・。」
「バレンタインも最初は企業の戦略だったにせよ今は文化として根付いているだろ。」
「今は感謝を伝える日としての認識も広まっているんだ。」
「努力次第でチョコが貰えるのに貰えないからって否定するのはやめろ。」
簡単には返せないユージの意見を聞き、ケンジは押し黙ってしまった。
これで少しは愚痴も治まるか、そうユージが思った時、
「・・・・・・らねーし。」
ケンジは小さな声で言った。聞き取れなかったユージは聞き返す。
「は
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