-灰皿でテキーラなら、ウチは便器型深皿でカレー出すぜ?-

 そんな相坂と百合愛だが、相変わらず関係は深い。
というより、件のプロポーズ事件(百合愛命名)から、それは更にエスカレートしている。
この店舗の予定表はちゃらんぽらんお花畑店長ことえみる(ひどいです!w)に変わり、百合愛が作ることになっているのだが、それをいいことに、必ず休憩シフトは面白いことになる。
百合愛の後に、必ず相坂が来るのだ。
休憩終了5分前になると、百合愛は事務所を出る。そして申し合わせたかのように5分前、相坂もバックヤードに入ってくる。目が合う二人。そして、最初のキス。
「んっ…」
「んんっ…」
唇を重ねるだけの簡単なキスに始まり、そして。
「ときるんちゃんに、バトンタッチ…」
「うん、バトンもらった。でも休憩終わるの少し早いでしょ?」
「……はいっ♪」
二人は、人目を憚るように女子トイレに向かい…。

 「んふぅっ、んちゅぅっ…」
鏡の前、後ろから抱き締める相坂の後頭部に手をまわし、むさぼるように吸いつく百合愛の唇。彼女の太ももの付け根を摩りながら、愚直に唇を吸う相坂。
バトンタッチはあれから更に過激度を増し、もう正直管理人さんがそろそろ『15禁でお願いしますねっ(にっこり)』と念を押しそうな勢いだ。
「んぁっ、んあっ!」
触られただけで軽く達した百合愛を後ろから抱きとめて。
「もう、ホント可愛いんだから」
「やぁっ…」
時計が、残酷にもちょうど5分、百合愛が売り場に戻らなければならない時間を差す。
「これじゃ、我慢できなくなっちゃいます。売り場に戻りたくありません」
ギュッとしがみつく、すっかり可愛くなった姉貴分。
「でも帰らないとお店が回らないわ」
「そんなの、店長の自業自得ですから」
本人が聞いたら怒りそうなフレーズだ。
そんな彼女に相坂は。
「……あんまり駄々こねると、お家に帰ってから『お嫁さんラブラブコース』してあげないわよ?」
「!!!」
どこかの作戦部長が一日の楽しみをビールにしているように、その寵愛が一日の楽しみのすべてである百合愛の顔から血の気が引き。
「そ、それだけはイヤっ!絶対イヤっ!」
壊れたおもちゃのように首を横にブンブン振る。
「ときるんちゃんとのふわふわ時間取られたらわたし、死んじゃう…うさぎさんだから、しんじゃう…」
年上なのにすっかりウサギになってしまった嫁に相坂もさすがにひきつり笑いで。
「分かったらさっさと売り場に戻る!あたしもそろそろ椅子に座ってゆっくりしたいし」
「はい…あ、でも」
「ん?」
返事をする間もなく、百合愛が耳元で囁く。
「帰るまでの残り時間、ときるんちゃんを想いながらほっこりするのは、アリですよね?」
「…常軌を逸しない程度にはね」
「はいっ」
そうして、もう一度フレンチキスを交わし。
「行ってらっしゃい、あなた♪」
「えぇ。あんたもね」
そうして相坂は事務所へ、百合愛は売り場入り口のスイングドアへ。
「…でも胸を触ってくれないのは、わたしがぺったんこだからでしょうか」
はぁ。と大きなため息を出し、次の瞬間に。
「それに、名札、気づいてくれたでしょうか?」
胸の名札は、昨日まで『あきやま』となっていたのに『あいさか』に変わっていた。
「……気付いてくれないなら気付かせるまでですね。そうですね」
そしてにやけた顔を仕事モードのいつものカッコイイ自分に戻し、百合愛は再び、戦場へと舞戻るのだった。

 そのころ、パソコン前でぐーたらしていた翠は。
「うー。たーいくーつだー♪」
退屈と言いながらもパソコンをいじる手は止めない。
「今日はこれで首相官邸のサーバーにとむはっくしちゃおー」
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まろやか投稿小説 Ver1.30