量産型ゆりちゃんが、こんなにおバカなわけがない!

※大好評にお答えしてなんとなく書いてみた。

『兄の動きはあまりに緩慢すぎる』
『なんだとテメェーーー!』
『散れ、千本桜』

昼間にアニメの再放送をやっているから、と、CS放送が繋がっているあたしのラボにお菓子とお茶とコタツを持ち込んだゆり(オリジナル)。どこかの貴族なイケメン兄様が刀を桜っぽい刃に変えて相手に飛ばすあたり、相当卑怯じゃないかななんて思いながら、声だけ背中で聞いていた。

「ねぇときるお姉ちゃん!」
「なにー?」
「次量産型ゆり作るときは、びゃくやさんみたいに高速にしてっ」
「何に使うのよ」
「んーと…」
考えてなかったらしい。
「かっこいいから!」
そんなほえほえーっとしたあんたの顔でかっこいいって言われてもね。
なんてツッコミを入れ、ぷんすかするゆりに適当に相槌を打ち、またパソコンに向き直る。

カタカタカタカタッ、よし。エンター。
「量産型ゆりって壊れやすいの?」
「どうしてそう思うの?」
「だって…」
あたしのラボには、全国各地のユーザーさんから送られてきた量産型が10機くらい。そりゃ確かに粗悪って下手すれば思われるかもしれないけど。
「違うわよ。何しろ神谷インダストリアル製の素体を使ってるんだから壊れるわけがないわ。安心なさい」
「じゃなんでこんなに多いの?」
「それはね」

量産型ゆりはその使用用途に合わせた点検やメンテナンスを行っている。
農作業向けファーマーゆりにゃんは全身に掛かる負担が通常のゆりにゃんに比べ大きいため半年1回の無料点検を3年間サービスでつけているし、ボディーガード向けのSPゴスにゃんはいざと言うときに稼動しなかったら何の意味もないため、10年間の長期無料・メンテナンス保証をつけている。まぁその代わり高いんだけどね。
「これはみんなそういう特殊用途向けのゆりよ。だから点検しなきゃいけないの。榛希の会社の生産ラインは作る技術はあっても、メンテの技術はない。そこで技術者のあたしの出番ってわけ」
「ふーん」

アニメも終盤に差し掛かり、オサレ先生お得意の先延ばしと『なん…だと…』が入る頃。
「…あーもー。このおっさん、ゆりを何に使ったのよ」
「…下ネタですか?」
「違うわ」
残念なことに量産型ゆりには『そういった』システムは搭載していない。
「ヘンなところに穴開けて使おうものなら千切れるか血塗れになるだけだからね」
「何がですかっ!」
「大人の事情よ」
「むー」
そのファーマーゆりにゃんは、どうやら農家のおじさんが許容量以上のものを持たせたためアームが折れてしまい、素人知識で腕を分解、勝手に金具をはめ込んだために油圧がおかしくなって腕が動かなくなっていた。
「素人知識で余計なことしてクレームなんて、これだからアカのどん百姓は嫌いなのよ。聖母マリア様を敬うと言いなさい!」
「ときるお姉ちゃん怖い…」
「ホントラボは地獄だぜフゥーハッハッハ!」
「…くすんっ」
いかんいかん、危ない危ない危ない。

「しかし、次の量産型は相当キツそうね」
「ふぇ?」
おせんべバリバリしながら設計図を覗き込んでくるゆり。お行儀悪いし設計図汚したらタダじゃ済まないわ。そうね、チョコレート菓子全面禁止令出しましょ。
「設計図汚したら許さないわよ。それにしても超高高度偵察型ゆりとオトリ捜査用ゆりなんて、国家権力が介入してくると何かと厄介ね。あたしの妹は兵器ではないわ。断じて」
「お姉ちゃん…」
「別に金儲けしたいわけじゃないし、この案件は没。防衛省と警視庁にはお断りの電話を入れるとして…」
もう一枚の設計図に目を通すと。

『Ms.
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まろやか投稿小説 Ver1.30