その1

8月も終わり、新学期。
今年は割りに早く、季節は秋の装いを急速に進めていく週末。
私の目の前にはPCがひとつ。
もともとはメーカー製だったが、改造を重ねたフルタワー。
液晶モニタにオプションでつけてあるのは、メッセ用の小型カメラ。
他のリトルバスターズメンバーには教えていない趣味が、メッセでのチャット。
もちろん相手はかなり選んでる。
SNSとかで無制限に自分を売り込むようなまねはしていない。
自慢ではないが、(ほとんど無条件に伸びきった鼻の下を眺めながらでよければ)
男子でよいならば、私なら相手は選り取りみどり。
しかし、理樹少年ならともかく、
人を征服の対象としかみていないような男どもに期待通りに振舞う私ではない。
画面の前で、実年齢よりも少しばかり大人びた微笑を向けてくれるのは。
ネットをぶらついていたときにブログを知ったことがきっかけで話をするようになった、
近くの有名女子高に在学する少女。
栗色よりも心持薄めの髪と、
いまどきめずらしく手を入れていないことがかえって個性的でキュートな、
大きな眉をもつ娘。
体つきは中庸を装うが、明らかに着やせ型。
透けるような青い瞳が、生まれが少し特別なことを物語る。
・・・うむ、おねーさんでも気を抜くと思わずハァハァしたくなる。
何度か話をするうちに、実は結構な資産家の一人娘だということを教えられた。
最初はまさかと思ったのだが、あの家の娘だとは。
いままで会ったことがなかったのがある意味不思議だ。
まあ私が、素直に家族と連れだって行動することが幼少期以外ないこともあるのだろうが。
立場は、どうやら私とそんなに変わらないらしい。
もっとも資産は、あちらのほうはうちの10倍ではすまないレベルらしい・・・。

「それでは、私たちの学園祭にきていただけるんですか?」
うちの小毬君に通じる、優しいながらほのかに芯の強さを感じる声質。
仮にも光だがしょせんメッセの音質ながら、その本質が見えなくなるほどではない。
「ああ、他ならぬ琴吹女史の願いだからな。
紬くんたちのバンドの演奏は、ぜひ生で聴きたいと願っていたし、お誘いはありがたく受けさせていただくよ」
傍に置いてあったマグカップのコーヒーを一口。
「嬉しいです、軽音部のみんなにも話さなきゃ」
そう言ってから、彼女もティーカップに少し口をつける。
「いや、どちらかといえばサプライズにしたいな。
紬くんの友達に逢えるのは楽しみで仕方がないが、私の側も紹介したい友人が何名かいるのでな。できればそのときに一緒させてもらえればなによりだ」
「ええ、それはすごく楽しみです。
来ヶ谷さんのご友人なら、みなさんとてもすばらしい方でしょうから」
「ああ、興味が尽きないメンバーであることは保障するよ」
私の頭の中では、すでに連れて行く候補のリストアップは終わっている。
彼女が話してくれた部活のメンバーたちに初対面で対抗させるなら、やはりこの3名がベストだろう。日程の調整と説得がつけばだが、まあいざとなったら言うことを聞かせるだけだ。
願わくばあと鈴君だが、残念だがたしか小毬君と予定があったはず。
「うふふ、とても楽しみです。ますます演奏がんばらなくっちゃ」
嫣然、という言葉にはまだ素直な笑みが、ウィンドウの中にいる彼女を彩る。

入場チケットは全員分も確保してもらえたこと(一人当たり最大5枚らしい。家族の分は、と聞いたが、そこは特別枠適用だから気にしないで、ということだった)それから日程と時間を確認して、私は挨拶を交わすとメッセを切った。
リトルバスターズの集合写真を飾ってあるデ
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まろやか投稿小説 Ver1.30