その17

なんだかんだやってた澪さんと唯さんが、ステージの上で笑いあって、
4曲目にきた「ふでペン〜ボールペン〜」を締めくくる。
時間もタイミングも丁度よいころあい。
僕と鈴が美魚さんに指導してもらって淹れた中国茶(白毫銀針。白茶の一種で、けっこうな高級品なんだって。水出しとお湯と両方用意)を配る。
さらに小毬さんと佐々美さんがあらかじめ用意してた、おやつ代わりのちょっとだけ点心気分、桃包(桃饅頭)と小籠包子(肉まん)もそえて。
・・・折りたたみ机の上にティーセットという、ちょっとしまらない状態なのは目をつぶってほしいな。

「はぁ、やっぱりいいなぁ」
律さんが、ひざの上のクドに肉まんをあーんさせて。
「今回はめちゃくちゃ喉が乾いたぁ。りっきゅんりんちゃん、お茶ちょうだい」
・・・やっぱりそういうことだったんだ、唯さん。
「それにしても、このステージはすごく音がいいですね。よく響くのに、インカムの助けもあるのでしょうが、私たちの音がきちんと聴こえるのはすごく助かります」
特に調子がよさそうだった紬さんが満足そうに、赤ちゃん持ちした茶碗に口をつける。
「普段はそれほどでもないんだがな。校長の朝礼なんかだと音はこもり気味だし」
謙吾が追加で出てきた饅頭を、みんなにとりわける。
「あらかじめ検討を加えておいたかいがあってよかったわ。もう少し微調整が必要かしら?
佐々美さん、来ヶ谷さん」
佳奈多さんが桃饅頭のかけらを飲み込んで。
「いえ、おそらくこれでよいかと思います。
強いて言うならステージ構成が変化するときのシミュレーションをもう少し考慮しておきたいところですが、それは曲目が確定してからでないと」
佐々美さんが、マッカートニーに少しだけ肉まんの中身をよりだしつつ。
あ、ちょっと補足。
実はこの肉まん、葱は入ってないからね。さもなければ佐々美さんがあげるわけないし。
「現状で悪くはない。ただもう少し詰めたいな」
唯湖さんはあっさりと改善の余地を指摘しつつ、僕が差し出した茶碗を受け取る。
「恭介氏がいまいないのが残念だ。彼の耳とセンスはなかなかだからな。それとさわ子先生も。
次はかならず2人にいてもらわないとな」
珍しくアイスの方を選んだ唯湖さんは、一気に半分くらいを干して机に置く。
・・・でもなんだか。
不思議なんだけど。

みんながやっぱり感心なり感動なりしているなかで。
唯さんたちのテンションがあがりっぱなしななかで。

・・・唯湖さん、少しイライラしてないかな?

その唯湖さんに、ひとり黙っていた澪さんが視線を向けていた。

「おぅ、ちょっとそこでうろうろしているのに気がついてな」
そこに唐突に響いた、真人の声。
「ほら、気にしないで入っちゃえよ。まだ時間あるし、もう1・2曲はやるとおもうぜ」
「え、でも井ノ原くん、わたしやっぱり部外者だし・・・」
「何言ってるんだよ、聞いたぜ昨日皆と一緒になったって。ムギを連れて来てくれたのもお前なんだろ?第一俺が見られなかった理樹のナー・・・」
フルダッシュ。真人の口に肉まん突撃。
そうしたらほぼ同タイミングで。
「死ねばーか!こんなところで理樹を困らせるようなことをいうな、バカ真人!!」
鈴のフルスイングキックが、真人のみぞおちに直撃。

「もが、もがががもがあもが」
真人が外でじたばたしてるのがさすがに気になるけど・・・
あ、それでも肉まんが口からこぼれない。これはこれですごいかな。
「理樹・・・くん?」
「真人、変なことを思い切り外で言わないでよ」
「理樹、くん?」
「まったくもう、ごめんね杉並・・・さ・・・」

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