序章:All Along The Watchtower

帝国暦358年、「自称」聖教暦1127年。
遥か1000年前、聖教の台頭とともに歴史の闇に沈んだ
大帝国の後裔と称する帝国が分裂し、継承権を3人の実力者が争いはじめてから74年。

その少女が5歳、妹が4歳の時。
姉は母に見限られ、幽閉された。
妹はその姉により添い、自ら汚濁の空間に身を沈めた。

姉妹は2年後、母の死とともに幽閉を解かれた。
しかし普通には戻れなかった。
姉が抑えられなかった能力のせいで。

姉妹は3年後、魔術師ギルドに送られた。
その力を誰も止めることができなかったから。
妹の前以外では。

そこで2人は、
まだ幼い天才魔術師と、義理の妹の見習い僧侶と出会う。

3年後。
姉はかろうじて力を抑えるすべを見出した。
妹は魔法ではなく、剣に支える道を。

そしてそのことで、
姉と妹は、ある土地と都市、そして称号の継承権を回復した。
貴族と王家と、司教たちの思惑の下で。

姉に与えられた虚名は、伯爵。

3年後、姉妹の下に双子の姉妹が迷い込んだ。
小さな権力(ちから)を盾に、姉妹は2人を迎え入れた。
何かを2人に、そして「自分たち」を2人に見出したから。

そして7年後、魔術師によりそう僧侶が司祭候補生に任じられたそのとき。
2人と姉妹に別れが訪れた。
もはや何度目かも記録する手さえ止まる、
滅びかけた帝国の継承を争う戦の再開で。

前後して、
姉は正式に叙勲を受けた。
代官の不正が発覚したことで、他に封土を統べる者がいなくなり。
姉は妹と、双子と、1人の学者の卵を連れて。
北の内海に面した、故郷に帰った。

1ヵ月後。
姉はあることを知ってしまった。
そして、妹は姿を消した。

姉はあることを始めた。
領地を連れて行った3人と、新たに見出した者たちにゆだねて。

そして、それから、2年後。

彼の地に、何かが起きはじめていた。
反乱とみなした討伐軍が2度にわたり、姉の名を持つ軍の前に殲滅された。
赴いたものたちは、言葉通り誰も帰還しなかった。

天才魔術師は、貴種たちと魔術師ギルドの切り札として、
姉の意思と、彼女が隠していることを見極めるために。
そして1人の聖騎士の称号をもつ青年が、
姉が棄てたかに見える神への信心を回復させんと。

仲間たちとともに、彼の地を訪れようとしていた。




"There must be some way out of here,"
Said the Joker to the thief,
"There's too much confusion,I can't get no rilief.
Businessman,they drink my wine,Plowmen dig my earth,
None of them along the line know what any of it is worth."




およそ死を運命付けられたものが作るものに、永遠は存在しない。
すべての存在には始まりがあり、そしていずれ終焉が訪れる。

知恵があると自称するものたちであろうと、それは例外ではない。
彼らが作り出すものとて、いや、
彼らが作り出すものほど、他者にとっては無益で、愚鈍で、
そしてそれが滅びる時には多大な迷惑を撒き散らすものだ。

そして、彼らが作り出す最悪の創造物のひとつとして、
「社会」を引き伸ばした世俗の集合体、「国家」がある。

知恵があると称して、実際には何も考えることをしないものたちが寄り集まって、
外害から身を守るだけに作られるもの。
しかも人は人として寄り集まると、考え
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まろやか投稿小説 Ver1.30