第1章その1の1:Ballad Of Thin Man

You raise up your head
And you ask, "Is this where it is ?"
And somebody points to you and says
"It's his"
And you says, "What's mine ?"
And somebody else says, "Where what is ?"
And you say, "Oh my God
Am I here all alone ?"

But something is happening here
But you don't know what it is
Do you, Mister Jones ?


「帰還決定、とりあえずおめでとう」
表向きやや皮肉の混じった、しかし穏やかな男性の声。
「アキコ小母様によろしくっ、ふたりともっ」
跳ねるような明るい少女の声。
「お母さんに、わたしは元気だよっ、って伝えてね」
優しさと切なさを、明るい声の中に封じた少女の声。
「アキコ姉さんによろしゅうな。まあ今回はちょこっとうまくいかんかったやけど、
すぐに取り返す機会はくるやろ、ムギちゃんとリリィちゃんなら」
東方訛りが強い、そして力強い女性の声。

友人たちの笑顔と声に囲まれて。
ふたりの姉妹は、頷いて笑った。

「今回はみなさんに、迷惑をかけてしまってごめんなさい」
黒と濃緑の狭間にある色合いの、柔らかい線を持ったスーツの上に、
上級魔術師(ハイ・ウィザード)だけが着用を許された白と銀のケープをまとう。
金髪碧眼というには、茶色にわずかにくすんだ色合いをもつ髪の持ち主の女性。
ローブとケープは巧みに身体のラインを隠しているが、それでも豊麗な胸は否が応でも、
周囲の目を奪う。
姉、ツムギ・コトブキ。通称ムギ。
若手の魔術師たちの中でも、北部連邦で最上級の実力をもつ俊英。
「忙しいところに、お見送りいただいてありがとうございます。
今回はみなさんに本当にお世話になりました、改めてお礼申し上げます」
首元を経て舞い降りる黒い髪には、柔らかさと艶がある。
姉と呼ばれる少女も取り立てて背が高いわけではないが、それよりもさらに小柄。
細い、しかし実は姉と同じく豊麗と呼び得るボディラインを。
白い、やや実用性にはかけるように見えるフリル付のドレススーツと、
従軍聖職者用の灰色のハーフコートでカバーする、漆黒の瞳の少女。
妹、リリス・コトブキ、通称リリィ。
司祭として任官を果たしたばかりだが、その能力は嘱望の眼差しを集めて久しい。
北部連邦ではよく見られる、2つのタイプの美少女・・・姉はそろそろ少女を脱しつつあるが、
いずれにせよ美女と呼ぶに誰のはばかりもない。

「迷惑なんかなにもかかってないさ。今回は少しばかり性質の悪い任務だったってだけのことさ」
短く刈りこまれた黒髪、精悍さを主張する陽に灼けた浅黒い肌。
鍛え上げられた戦士としての身体。
細く切れ長で、実は明るい場所をやや苦手とする深い灰色の瞳。
新任の聖騎士のひとり、この場では唯一の男性、カイン・ナハト。
「そうそう、判ってて悪い任務を割り当てた人が悪いんだよねっ、ハルコ将軍」
明るい声にそれとなく刺を加える、通称「スイ」。
時として光の加減でプラチナブランドのような輝きを放つ。
オレンジかかった長い亜麻色の髪を、2つのおダンゴに纏めて。
2本の赤いリボンと五芒星の飾り。それと、好奇心に輝く碧い瞳。
通気性のよい綿の、クリーム色のローブに鷲の略式章を付けている。
「わ、スイさん、ハルコ叔母様を悪
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まろやか投稿小説 Ver1.30