その1

おはようございます、平沢憂です。

朝の光が、薄い絹のカーテン越しに柔らかく降ってきます。
真昼には外に出ることもままならないくらい
強い光と熱にさらされるのですが、
寒いくらいにすら感じる夜が明けて、太陽が光を照らし始めるこの時は、
ちょうど日本の春を思わせる、柔らかくて気持ちのいい時間です。

わたしはいまベッドの中です。
いつも綺麗にしてもらえてるシーツのなかで、
白いレースの寝間着でまだ横になってます。
一緒のお姉ちゃんも、わたしとおそろいです。

そして、わたしはお姉ちゃんを抱きしめた状態です。

お姉ちゃん−平沢唯−は、まだ夢のなかみたいです。
「えへへ・・・うい・・・もうおなかいっぱいだよう・・・」

・・・楽しい夢をみてるみたいですね。
お姉ちゃんが幸せそうなのは、すごく嬉しいです。
疲れているはずなんです、毎日のことを考えれば。
でも、梓ちゃんと交代交代で夜いっしょに眠っているときでも、
お姉ちゃんは何も変わりません。
たまに梓ちゃんがわたしといっしょだと、
梓ちゃんはやっぱり怖い、苦しいのをがまんするみたいに、
わたしにしがみついてくることが多いんです。

それがほんとうは当たり前なんだと思います。
わたしも、一緒にあそこに潜ったときことはなんどかありますが、
お姉ちゃんたちと一緒でも、アルマールのみなさんが一緒でも、
やっぱりすごく怖くて、不安で、圧迫されて押しつぶされそうな
気持ちになってました。
最初は、ずっとお姉ちゃんにくっついてしまってたくらいです。
紬さんと梓ちゃんが作り出す、
小さな光とみなさんだけが視界と心をささえる。
暗くて陰鬱で、砂まみれのあの空間。

でもそこで、律さんとお姉ちゃんはいつも明るく元気にしてました。
律さんはすこし元気に「してる」感じもありましたけど、
お姉ちゃんはずっと、日本にいたときのいつものままでした。
そして、「敵」が現れると。
律先輩も、さわ子先生も、そしてお姉ちゃんも、
本当に頼りがいのある姿をみせてくれました。

・・・なんかもう、そのままずっとしがみついていたいくらいに。

わたしは、お姉ちゃんのことをずっと、
優しくてあったかい人だと思ってました。

でも。
ここに来てもう半年。
実はそれだけでもないのだって、
及ばずですが後ろから支えてきて、そう思います。

本当はすごく強い、タフなところを持った人なんだって。

でもそのお姉ちゃんが。
なにも心配なんてない、って感じで。
わたしの腕の中で、ちょっとよだれつきで眠ってる姿を見ると。

わたしは幸せです。
日本からは距離として、時差で6時間くらいあるところらしいです。
いや本当は、時空という単位で別の世界だとしても。
お姉ちゃんと、お姉ちゃんが愛して信頼しているみなさんが一緒だから。
アルマールのみなさんも、とてもよくしてくれます。
領主のユリアさんの城館に、とても素敵で清潔なお部屋を用意してくれて。
いつも温かくて美味しいご飯と、砂漠のオアシス都市とはいっても、
市場に出るとやはり大事で貴重なんだとわかる果物や水も、
惜しげもなく用意されてて。
お風呂さえ、毎日普通に入れて。しかも温かい。
なんだか申し訳なくなってきます。
ううん、本当は家事をしたいんです、
疲れて戻ってくるお姉ちゃんたちみなさんのために。
だから最近は、みなさんが地上に戻ったのが確認できたら、
メイドさん達と一緒に料理掃除をしてます。
最近、ケバブやマスグーフは一人で作れるようになりました。
ドルマは時間がかかるので、まだ未挑戦ですけど、
もし目的が成就
次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6 7]
TOP 目次
投票 感想
まろやか投稿小説 Ver1.30