その2

「お姉ちゃん、電話聞こえる?」
「おっけー憂、きれいにに聞こえるよ」
1時間後、穴、いえ、迷宮に皆さんが着いたのを
マカルワピックで確かめたところで、わたしはお姉ちゃんと電話を繋ぎました。
ここまではマカルワピックでも、普通にリモートで様子をみることはできるのです。
けれど、「ハルギスの迷宮」と通称されるあの場所では、多数の死霊や魔力、それに加えて
「たぶん、迷宮深部にはもっとやっかいなのがいる」
ネプチューン師匠曰く、ということがあるのか、深くに降りれば降りるほど、
マカルワピックの効果は不安定になってしまうようです。
映像が途切れたり遅れたり。
師匠さまたちは、こちら側の魔力を強力な方で固めて対妨害性を強くしたり
(白魔術師リアンナさん、高僧ヒミコさん、調剤師リザさん、司祭長リリスさんとか)、
実は司教としては少し型破りなのですが、
実は魔法使い系のスキルが「降霊術師」であるネプチューンさんが使途してる
霊さんたちに中継をさせるとかの対策をとっていらっしゃるんですが、
それでもわたしはまだ訪れたことのない地下9階、10階、
それからとうとうお姉ちゃんたちが乗り込んだ「11階」では
その効果も不安定になってしまうようです。
でも、携帯電話でならなんとかリアルタイムで声のやりとりもできますし、
メールで交信もできています。
そこで、最近はお姉ちゃんが、
さわ子先生の車に用意されてたハンズフリーキットを使って、
わたしと交信するようになりました。
最初は梓ちゃんや澪さんがその役割をもつはずだったんですが、
魔法使いさんたちは戦闘にはいると、
繊細な行動と思考がどうしてももとめられるので、
かえって状況が把握できなくなっちゃうみたいです。
そこで、「憂ちゃんなんだから、一番相性がいいのは唯だろ?」
というわけで、お姉ちゃんと会話するようになったんです。
・・・えへへ、ちょっと嬉しいんです。
なんていっても、ずっと話していても電池消耗しませんし。
お姉ちゃんと、離れていてもちゃんと繋がってもいられますから。
それに、みなさんとも直接お話もできる。
マカルワピックだと、お姉ちゃんたちの状態や会話は確認できても
こちらから連絡を取るには、能動的に他の魔法を使うことになっちゃうので。

いままでは地下9階に直接、
「ミームアリフ・ラーザンメ・レー(MALOR)」、
転移魔法マロールを使って降りて、そこから地下10階に通じる
一方通行のシュートで乗り込んでいたのです。
でも地下10階にいた、
「この墓所の主にして古代の偉大なる皇帝」ハルギスのゾンビを倒した後、
地下10階に直接降りられるようになったのは、
すでに先行してたミオさんたちが確認してました。
そこでお姉ちゃんたちも、地下10階にある「暗い泉」に飛んだみたいです。
「いつきても嫌な雰囲気の場所だなぁ」
澪さんのぼやき声が、お姉ちゃんのインカムを通して聞こえます。
「でもありがたいじゃないですか澪先輩、
ここの水は美味しいですし魔力を回復する力もあるんですから」
梓ちゃんの声も聞こえます。
そうらしいんです、この泉のある小さな空間は、
雰囲気こそなんか微妙らしいんですが
−それはマカルワピックを通して見られる映像からもなんとなく伝わってきます−、
でもその一方でここには敵が出てくる、
待ち伏せしていることはないらしくて。
その上、ここにある金色に輝く泉は。
黒く焦げたローブが転がってる、なんて変な様子とは打って変わって。
飲むだけで体と心の消耗を癒す効果があるらしいんです。

そこで、ここで一旦持続支援
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まろやか投稿小説 Ver1.30