「・・・かわいいわね、貴女たち」
ユリアさんの声が、久しぶりに艶を帯びています。
それになぜか真っ赤になってしまうわたしに。
アルマールのみなさんの、微笑が向かってきます。
気がついたら、ネプチューンさんも、かすかに笑っていました。
ユリアさんの側で。
「あ、やほー、ユリアさーん。
わたしたちの事みていらっしゃったんですね」
そこにのんきなお姉ちゃんの声。
「ユリアさんは、きょうはお加減いいんですか?」
澪さんの、ほっとしたような心配してるような声。
「11階に乗り込んでしばらく経つって話を聞いてるし、
今日はちゃんと貴女たちのことを見ておかないと、って思って。
わりと体調もいいほうよ」
「それはよかったです」
紬さんの、優しい声。
「っと、あなたたち。少し静かにしてね」
「うぉっとぅ」
お姉ちゃんの声がまた聞こえます。
「梓ちゃんかムギちゃん、透視おねがい」
「あ、はい、ではわたしが」
すぐにモードを切り替えたらしい紬さんの声。
「宝箱、ね」
アイさんのかすれた声がでます。
「・・・中身は期待してもいいはずですけど」
リリスさんも、真剣な表情で。
向こうの緊張は、こちらにも移ったみたいです。
それはそうです。
もしかしたら、敵対者との戦闘よりも怖いかも知れない。
それが、大事な物やお金・宝石の詰まった宝箱との対峙です。
こちらの声は、向こうにもわたしのインカムを通じて聞こえています。
「ずいぶんしっかり隠されていたからな。
このパターンの場合は、大抵いいものがあるはずなんだけど・・・」
律さんの声が、映像と共に届きます。
「なにがでるかな、武器かな、ローブかな」
「こら、唯もちゃかすな」
そんなことを言いつつも、律さんの後ろに付いてしまう澪さん。
それはそうです。
「そうよあなたたち、おねがいだから少し静かにしてて」
宝箱に正面から向き合うさわ子先生。
水晶玉を通してでははっきりとはわかりませんが、
たぶんもう真剣勝負、汗をかいていらっしゃるのだと思います。
側で低い声で呪文を唱えつつ、
そっと宝箱の表面ギリギリをなぞるように滑らせていた、紬さんが。
「パターンD−6A−B、罠は”レインボー・レイ”」
そっと声にだします。
少しだけ宝箱に触れながら、そっと様子を探っていたさわ子先生も。
「オーライ、まちがいなさそうね」
そっと額と指に浮いた汗を拭います。
「”レインボー・レイ/七色光線”」
リアンナさんの瞳に、淡い緊張の色が入ります。
・・・何が起きるかわからない魔法の光が、
解除を試みたパーティ全体に降り注ぐ恐怖の魔法罠です。
最悪、全員が麻痺や石化、もっとひどければ即昏倒してしまい。
その場で全滅してしまう可能性もある、恐るべき罠なのです。
魔法を使う魔物、特に悪魔系が好んで使う仕掛け、です。
「さて、いくわよ」
さわ子先生の、硬い声が届きます。
わたしたちも緊張します。
失敗すれば惨事も予想される凶悪な罠。
すでに何度か解除はされているさわ子先生ですが、
なおのこと慎重に、
そっと鍵穴と継ぎ目に針金とピック、ヤスリを差し入れ、
すこしずつ仕掛けを外していきます。
ほとんど気休めなのですが、律さんがその後ろで盾をかざしてます。
お姉ちゃんも、肩当てを宝箱にむけて、精一杯みなさんをまもるように。
そして、梓ちゃんはあえて宝箱に背をむけて、
お姉ちゃんに寄り添うようにして、周囲に注意をくばってます。
澪さんと紬さんは、律先輩の盾と体に身を預けるようにして。
そっと作業の進行を見守っています。
「・・・もう、すこしっ」
長いこと続い
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