「わたしたちは、呼んでもらえたことは決して悪く思ってません」
みかねて、ついいってしまいました。
「ここはここで楽しいです。みなさんも優しいし暖かいし。
もとの世界にいたら、
夢物語にしても笑われてしまうようなことができるようになりましたし。
とてもとても貴重で楽しい経験ばかりです」
「・・・ありがとう。優しいわね、憂ちゃん、特にあなたは」
ユリアさんは、それだけ答えました。
そうして、アイさんの助けを借りて体を起こします。
「心配しないで。
わたしは、あなた達を選んだことについては自信をもってるし
その選択を自賛してる。
貴女たちみたいな子が貴重極まりないことはこの世界でも同じ。
それをちゃんと認識できたことは、
失政でこの街を危機に追い込んだわたしが、
たったひとつだけ誇ってもいいことだと思ってるわ」
かすかに、ほんとうにかすかに。
「憂。か。ご両親は本当に綺麗な名前を貴女にあげたのね。
あなたの国の文字で、「人」に寄り添うことで「優しく」なる。
これからも忘れないでいてね。
ほんとうに大事な人がひとりかふたり、別にいるのはいいけど」
そう言って笑いました。疲れてはいるみたいですけど。
「はい」
そう答えるしかないわたしに。
「だれが誰のために、は聞かないでおくけどね。
ごめんね、少し休まないとダメみたい。
ネプチューン、貴女もみんなが戻ってきたら休みなさいね。
リリスさん、リアンナさん、あなた達はフォローをよろしくね」
そう言って、彼女は立ち上がりました。
すぐに脇をささえるアイさんに、心から信頼をよせた表情で。
「夕刻の会議は、申し訳ないけど寝室に呼集してくださいね」
それだけを言い残して、部屋から出ていきました。
まだお昼下がりです。
紬さんが昏睡から目覚めてもらったら、
なにか冷たいものとお菓子でお迎えしたいですね。
そう思った矢先。
電話から、お姉ちゃんの声です。
「憂、地上までもどったよ」
「あ、はい、お姉ちゃん。迎えに行ったほうがいいかな?」
「いや、だいじょうぶ。
澪ちゃんまだ余力あるからそのままテレポートで飛んじゃうよ。
わたしも一応マロールできるけど、ちゃんと飛べるかまだ自信ないからね」
「大丈夫だよ、お姉ちゃんなら」
「憂にそう言ってもらえると嬉しいよ、えへへへ。・・・ん?」
「どうしたの、お姉ちゃん?」
わたしの電話に、別の人の声が入りました。
「どうした、今日は戻るの早いんだな・・・ああ、そういうことか」
聞き覚えのある声です。マルス将軍、でしょうね。
澪さんと同じように、長身のワンレングスでスーパーロング、
モデルみたいな美貌の人です。
でも年上っぽい外見とはうらはらに、ミオさんよりもさらに一つ若い、
こちらの幹部の方でもかなり若い方のひとだとか。
驚くことに、お姉ちゃんたちと同い年らしいのです。
真っ白い肌を惜しげもなく陽光にさらしてるんですが、
全然日焼けもしないし汗もあまりかかない、不思議な存在感のひとです。
そんな記憶を反芻している間に。
「ふーん。ムギちゃんがね。わたしがカドルトしようか?」
そうでした、戦士ではなく君主職のマルスさんなら、
たしかに僧侶の蘇生魔法も使えます。
「いえ、今日はこんなことになってますけど、
収穫はありましたから。戻ってから蘇生させます」
やや硬い律さんの声です。
なにかしこまってるの。将軍の笑い声が聞こえます。
そして少しの空白の後で。
「・・・へぇ。なるほど、収穫ね」
わたしのそばにいたリアンナさんが、額に手をあてました
「法衣かぁ。わたしもそんなのに憧れた時期があった
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