「・・・え、ええ!?」
僕は、あまりの事態に言葉がでなかった。
「りっきゅんさん、それは本当です。
わたしは一人娘です。直系で近い親族はだれもいません。
私を産んでくれた母は、3年後に体を壊して亡くなりましたから。
そしてその後、今にいたるまで父は後妻を迎えようとはしていません。
母をそれだけ愛してくれていることに、誇らしい気持ちはあります。
ですが。
その結果はいうまでもありません。
わたしは、琴吹家の跡継ぎに指名されている身です。
ですが父は、わたしに権力を持たせることに無理が有ることは理解しています。
よってわたしに、いい婿を迎えたいと思っているのです。
・・・恭介先輩は、その候補者のひとりなのです」
僕には、あとを続けることができなかった。
そんな、まさか、恭介が。
・・・それは無理もない。
恭介が、鈴を手放すような選択肢をとるわけがない。
「いえ、鈴ちゃんは実権はともかくとして、
可能であれば仕事につく段階で迎え入れたいと父は言っています。
お父様・・・いえ父は、実のところ鈴ちゃんも気に入っているのです。
うまく教育すれば、野生動物や保護が必要な種を守る、NPOなどの仕事につけて、
将来はその幹部として才能を伸ばせないか、と」
いえ、それだけではありません。
琴吹家は、リトルバスターズの皆さんについて、かなり調査を入れています。
そしてその結論は。
みなさん全員を、何らかの職務につけて、
成長させたい、できればわたしを中心とする、次世代の組織で、
中核とするべく英才教育を施したい、と。
もちろん、りっきゅんさんもそのひとりです。
ただ、りっきゅんさんにはちょっと違った役割が期待されています。
つまりこういうことさ。
俺たちリトルバスターズのメンバーを支える接着剤としての、役割を。
理樹、お前は期待されているんだ。
「ですけれど、恭介先輩がそれを断ってもらえるなら、
とても申し訳ないことなのですが、とてもありがたい事だと私は言うしかありません。
なぜなら・・・放課後ティータイムの4人は、私が、誰かと、何かと、
取り換えることなど想像もできない、みんなのことは」
父の構想には、どこにも居場所がないからです。
「お父さんは・・・放課後ティータイムのことを評価はしてないの?」
僕はかろうじて、そう言った。
そんなのおかしい。
放課後ティータイムが、将来のあるバンドであることは僕にだってわかる。
音楽に対して、ろくなセンスがない僕にだって。
唯さん、澪さん、律さん、梓ちゃん、そして紬さんがつむぎだすグルーブが。
演奏のすべてが。
将来の成功を、かなりの確率で約束されている才能だってことを。
僕にだって、この事はわかる。
「芸術的才能は、軍事的才能と並んで、努力は必ず才能の前に敗北する」
才能をもつ人間が努力をすれば。
それは他者が決して追いつくことをゆるさず。
社会も個人も、才能のある人間こそを支持する、って。
判官贔屓を是とする一部の例外の感傷を、除けば。
そしてそれが永続性を持つことなど絶対にありえないのだと。
モーツァルトとサリエリを、見ればわかるように。
たとえ生前に才能を認められなくとも。
いずれ誰かが掘り起こすのは、
真に才能のある存在に限られることを。
シューベルト、フォスターたちがそうであるように。
そして。
今の段階で、人を感動させる、
いや泣かせてしまうような才能が。
偽物やメッキで、あるはずがない。
鈴と睦美さんの涙が、偽物や感傷であるわけがない。
あの涙は、熱い本物だったから。
たとえ唯湖さんがい
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