少しだけ、澪さんに生気が戻った気がしました。
だけど。
それをみて一歩前に出ようとした律さんに、
澪さんはまた険しい目を向けました。
「いやだ」
「・・・澪?」
「いやだ。いやだいやだいやだ」
「澪」
「いやだいやだいやだいやだそんなの絶対駄目だ。
律が居なくなるなんて冗談じゃない」
「・・・澪」
「私はみとめない。
律にそんな危険を冒させるような剣なんていらない。
律がいなくなることに私が耐えられるわけない。
律がいない世界になんかいたくない」
頭を振って律さんが近づくのを拒否した、澪さんは。
「この世界を救うのはいい。
だけどそのために私は仲間の誰も失いたくない。
この世界が滅ぶのと律が居なくなるのとがぶつかるなら私は律をとる!」
そう叫んで立ち上がりました。
「澪!」
「うるさいなにもいうな、
私は律がどう言おうと律の命のほうが大事だ!
まして律になにかあってみろ、ご両親や聡になんて言えばいいんだ!
私に謝ることなんか出来るもんか!」
血相を変えて髪を振り乱し、澪さんがまた吠えます。
「澪っ!」
「もういい、律なんか嫌いだっ!!」
とうとう大声を出してしまった律さんに、
澪さんは一瞬だけ動きが止まったものの、すぐにまた逆上してしまいました。
そのまま、ドアにぶつかるようにして外に走りだしていってしまいます。
あわてて追いかけようとした律さんは、
澪さんが倒した椅子に足を取られてバランスを崩し、
それを立て直した時には、
澪さんは、ちょっとでは追いつけない距離まで
走り去っていってしまいました。
やれやれ。年長者おふたりが肩をすくめます。
「まあしかたないところかもしれないわね、
今日はあんな事があったばかりだし」
さわ子先生はそう言って、残っていたお茶を飲み干しました。
「気持ちはわかるわ。
でもちょっとまだ打たれ弱いというか、動揺しやすいところはあるのね」
アイさんもお茶を入れ直します。
普段はほとんど夜のお茶は紬さんの担当なのですが、
きょうはこの時間、まだ体調がもどっていないみたいなので。
最初は追いかけようとした律さんでしたが、
少したって思い直したように席につこうとしました。
だけど、そこで。
「りっちゃん、追いかけなくていいの?」
お姉ちゃんが問いかけました。
「ん・・・ああ、いまはたぶんだめだ。
追いかけても逃げまわって話がややこしくなるだけだよな」
律さんは懸命に、暴れだそうとする思いを抑えこむかのように言いました。
「あたしも悪かった、澪にだけは予め話しておくんだったな」
アイさんがそっとさしだした紅茶の色を一度確かめてから、口にします。
「澪はさ、優しいんだよな」
大きく息を吐いて。
「そうだよね、澪ちゃんは優しいよね。
言葉きついこともあるけど、聞けばなんでも教えてくれるし、
自分からなんでもやるほうだし」
でも。
お姉ちゃんはこう続けました。
「澪ちゃんは、優しすぎるところがあるんだよ」
「唯」
「優しすぎるんだよ、澪ちゃんは」
「・・・そうですね」
梓ちゃんが続きます。
「律先輩。
いまは行ってあげてください。
私たちだって澪先輩が行きそうなところはなんとなくつかめます。
律先輩ならなおさらでしょう?」
「・・・そうだな、行ってくる」
まだ半分以上残ってたカップのお茶を、一気に飲み干しました。
「あっちーぃ!でもさ、これで目が覚めたぜ」
ニンマリと笑って、律さんが言います。
「アイさん、ありがとう。明日はゆっくり飲むから勘弁して」
「はい、わかったわ」
アイさんが微笑するのに、笑い返すと走り出しました。
律さんの
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