「わたしはもう覚悟は決めてます」
梓ちゃんの眦が美しいです。
「律先輩、澪先輩。わたしに任せていただけるんですよね?」
「異議なし。梓になら任せたい」
「梓でだめなら、まだあきらめが付く。
こんないい方はしたくないけど、他の人に律の運命を任せたくない」
「憂とムギ先輩の助けを借りられるんです。
成功しないはずがないじゃないですか。やってやるです」
ふん、と気合をいれる梓ちゃん。
気がついていないかもしれませんが、その仕草、お姉ちゃんと一緒です。
見ている全員が微笑ましい、
と思っているのに気がついているのかいないのか。
「よし、それならそれでいい。
場所は地下1階、潜ってすぐのポイントを使おう。
解呪の影響が大きくて周囲が吹き飛ぶような事態になっても、
あそこならまだ被害は最小限で食い止められる」
律さんがきびきびと決めます。
「なんかへんだな、律」
「なにがだよ、澪」
「だって言ってみれば、
この話し合いは律の死に場所を決めるようなものだろ?
なんで律がそんなのをばんばん取り仕切ってるんだよ」
「そういう言い方はすんなよ」
口をとがらせはしてますけど、律さんは余裕あり気でした。
「そういえばまだ澪は昏倒したことはなかったよな?」
「あ、ああ」
「唯もまだ一度もないよな」
「そうだけど?りっちゃん」
「経験者はさわちゃんとムギ、それにあたしだな。
憂ちゃんもなかったもんな」
「それがなんだと言うんだ?律」
「いや、この際だからさ。
昏倒したときにあたしたちがどんな状態になるか、
澪にも教えてやろうかなー、って」
まるで音符でもつけたくなるような律さんの話しぶりに。
「いーやーだー、聞きたくない聞きたくない聞きたくないっ!!」
「りっちゃん・・・」
「律先輩、澪先輩が嫌がってますからやめてください!」
頭の上に汗が見える紬さんと、真面目に心配してる梓ちゃん。
にへら、とでも表現するしかない笑いを浮かべた律さんは。
「まあ今日のとこはこれでいーだろ。
午後はそれぞれ必要と思うことをやること。
決行は明日。
時間もないし、あたしも宿題はさっさと片付けるのが流儀だしさ」
「うそをつけ、律」
「うそはよくないよ、りっちゃん」
澪さんとお姉ちゃんが同時にツッコミをいれます。
「おまえらなぁ」
そう言いながらも、律さんは笑みを崩してはいませんでした。
「どっちにしたって、後にしていいことは何も無い。ちがうか?」
「それは、そうね」
さわ子先生も言います。
「ここも良い世界だし、いい人もたくさんいる。
でも私たちが居るべき世界は、やはりここじゃない。
いつまでもブーストされない楽器や、
聖堂のパイプオルガンでムギちゃんに運指の練習だけはなんて
環境じゃつまらないわよね」
「そうだ!あたしらはバンドだ、放課後ティータイムだ!」
「おー!ギー太ともアンプで一緒に歌いたいよ!」
「わたしもそろそろ、エリザベスに本気を出させたい」
「ショルキーもいい子だけど、トライトンに会いたい」
「むった・・・ムスタングもしっかり鳴らしたいです。
弦も騙し続けるの限界ですし」
「いくら工房で手入れしてもらっても、物には限度があるからね」
「・・・それに、ここには味噌汁はありませんもんね」
「憂ちゃんらしいわ。でもそれはまちがいないですね。
わたしもお味噌汁が飲みたいです。ご飯と、沢庵といっしょに」
「やっぱり食べ物は郷愁の根っこなのかな」
「あったりまえだ!帰ったら澪に朝御飯をつくってもらうんだからな」
「そういう才能はむしろお前のほうがもってるだろ、律」
「そういうところが澪はダメ
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