まぐろ剣士 -弱者の反撃-−序説

-2008年-8月16日- 夏-

これは去年、中学三年生の私の夏休みのお話

私はおにぃと一緒に久しぶりに海に遊びに来ていた

世間では夏休みど真ん中のこの日
夏らしい青く広い空は綺麗に晴れ渡り、ジンジンするほどの日差しが身体に注ぎ込む、そんな日
私は本当に海に来るのが久しぶりで、楽しくてうれしくて

でも、そんな楽しい夏休みの思い出になるばすだったこの日、…私は海で遭難し…

…‘死んだ’…

そう、本当に…意図も簡単に私は死んだ…

夕暮れどきになって夏休みということもあって、あれだけ日中は賑やかだった海や砂浜も、辺りに人がいなくなって、おにぃも帰りの準備をしているのが見えた、しかし私はそのときはまだ海の中で遊んでいて

夢中になっていたせいか、気がつけば、私は遠い遠い海の中に一人ぼっちになっていた…

それからどのくらいの時間が経ったのだろう、泳いでも泳いでもおにぃのいるところに辿り着けない、いや…それどころか、もうどっちに泳げばいいのかもわからないほど遠い海の中にいた
日が完全に落ちた頃、深く暗い重い海の底に、とうとう意識がもうろうとなりかけ、体力も力尽き、ゆっくり…波に揺られながら沈んでいく私の身体…

頭が真っ白になるような真っ暗になるような感覚、痛みも水の冷たさももう…なにも感じない
あのとき…確かに力尽き、私が失った命はあったはず…
しかし、それは偶然だったのだろうか、必然だったのだろうか…
泡に飲み込まれていくかのように沈んでいく私の身体を海の底から猛スピードで近づいてくる‘何か’が死んだ私を助けてくれた
形を一瞬だけ見れたそれは、人でもない魚でもない動物でもない‘何か’だった
…結局、そこで私は目を閉じてしまった…

次に私が目を覚ましたのはどこかの病院のベットの上だった

死んだと確信していた自分が、まだ…生きていることに全く実感がわかなかった…
だが、まだかすかにぼやける視界の先に
ただ、おにぃの泣き顔とも見える笑顔を見たとき、本当に助かったんだと、…その瞬間、私も自然と涙が溢れてきた

これは二度目の命の代償なのだろうか、私にはしばらくして二つの変化が生じた

事故から数週間後したある日
夏も終わり、退院した私は何事もなかったかのように普段の生活に戻っていた
いつもの当たり前の授業中、ふと外に意識を向ければ微かに秋の匂いを感じれるような季節
そんなある日、朝から気分が悪くて、ふと温度計で体温を計ったときのことだった…
入院中の検査では何の異常や異変もなかったはずの私の身体は、このとき何の前触れや前兆もなくいきなり変化が訪れた
…これが…私の変化の一つ目
・‘体温が普通の人間では考えられないほど低い身体になってしまっていたこと’
普通の人間の体温は低くても35℃程度が普通である
しかし、私の身体は…30℃が平熱の身体になっていた、何回何十回と計っても結果は同じ…
だからといって、特に病気になるわけでもなく自分で感じる身体の異変もなく、むやみに誰かに触れられなければ驚かれたりする問題もなく、そんなに普段の学校生活でも支障はないと、…そう思っていた

二つ目は
・‘まぐろの存在’
体温の変化に気がついて間もない時期にもう一つの変化は起きた
夕方、学校から帰ってきたその日、…何の前触れもなく私の部屋にあるはずのないものが横たわっていた…
普通にはないもの…
普通の人間なら絶対驚くもの…
きっと私も昔の自分なら、それを見て腰を抜かすほど驚いていた状況だったはず
しかし私には、目の前のそれを見ても、どうしても…動じない理由があった
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