第1話

-2009年-9月1日-(月)-

「はぁ〜… 眠ぃ〜…」
秋の朝とはどうしてこんなにも眠いのだろう
私の名前は小林 ゆり
去年まで普通の中学生だった私は、普通ではありえないことを経験したが…、なんとか今は立派に高校生になった
私の高一の夏休みは昨日であっという間に終わり、今日からまた学校が始まった

「もう 7時… 起きよぅ…」
もぞもぞと、ぬくぬくのベットに今日も別れを告げ、制服に着替え始める
まだまだ、夏休みが終わったとはいえ朝から暑い今日は新学期の9月1日
パジャマをするすると脱ぎ、制服のブラウスに腕を通すときのちょっとひんやりした感じが気持ちのいい季節の朝

私の家には普段は唯一の家族でもある、おにぃがいる
まぁ…今は、なにやら美大の何がどうとかで昨日から「一ヶ月くらい友達と一緒に出かける」と伝言メモを残して不在中
一軒家に新学期の朝から一人で朝食を食べているのは、ちょっと寂しい気持ちにもなるけれど、一ヶ月も一人で好き放題できるのは悪くない気分

洗面台で歯磨きをしながら、ふにゃふにゃになっている寝ぐせを直す、…友達にチョコレート色と言われ続けている茶系色の混じった私の黒髪は、小学生のときから伸ばし続けて今では背中ほどまである
そしてそれが終わって、携帯の時間を確認する…7時45分
この決まった時間が私のいつも家を出る時間

私の学校は女子校で、家から学校まではノロマな私でも徒歩で15分で行ける距離にある
・なぜ自転車を使わないのか
という理由ですが、…苦手ということもあるけど
私は朝、学校にぎりぎりの時間にせかせか早く行くよりも、のんびりでも歩きながら朝の空を見ながら行くほうが好きだった
朝の太陽の光に身体を暖められながら一緒に頭も起こして、その一日の気分と天気によって好きな曲をiPodで聞きながら、まったり通学する…、このほうが私には合っている

学校に着いて2階の教室にトテトテ行く、私のクラス、1年E組の教室のドアの前、ここで…ドアを…そーっと開ける…なぜなら、真っ先に来るのは…

…たったった、ガバッ!
「…ぁぅ !?」
(ぅぅ…やっぱり…)
新学期早々、教室に入っていきなり目の前が真っ暗になる…
「ゆり〜 おはよーっ 」

「ぁ… ぉはよぅ 灯… 」
…雪村 灯(あかり) 人見知りの私を唯一いじることのできる人間、そして、私の唯一の友達…みたいな人
ぎゅうぎゅう…ぎゅぅ〜っ
「ぁの… 前が見えなぃ… 」
気がつけば、おもいっきり前から灯に抱き着かれていた…
「だからっ? …ニヤリッ」
「ぇっと…だから どいていただけないでしょうか…」
今の灯の顔は見えないものの、いつもどおりの私をいじるときだけ見せる、世界一とも思える満面の笑みでいるに違いなぃ
「相変わらず、ちっちゃくて可愛いね〜♪ ゆり〜」
「 もう…っ 新学期早々、朝から邪魔… 」
せっかく朝直してきた髪を雑にわしゃわしゃされて…ちょっと私も不機嫌になりかけはじめる
「ふぅ〜 しかたない はぃ♪」
灯は大抵、この私が怒る一歩前で動作を止める
はぁ…だからかなぁ、…この人にはいつも負ける…
やっと視界が広がり、私の前にはやっぱり灯の微笑む顔があった
その柔らかくて明るい栗色のショートボブの髪に、ふわっとしたくせっ毛が可愛い灯を見るたびに、…いつかはストレートの私もボブにしてみたいと思ったりする…
私と灯は10センチ以上身長差が違うため、立っているときはほとんど私が見上げる格好で話をしている、…単に灯の身長が特別高いというわけではなく私がただちっちゃいだけ…(涙)

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