第1話

物語は一週間だった

一年以上深い深い胸の奥で抱え込んできたこんなにもの苦しい痛みを

偶然だったのかな

新学期からの突拍子もない時の中で、私は新しい出会いや苦しみや驚きを経験し
そして気がつけば、3人の同じ痛みを持った友達がそばにいた
いつしか私の痛みなど
悩みべき問題なのか、とすら疑うほどまでに思えるようなってきた

人には必ず表があれば裏がある…
正直だけで、善意だけで、生きてゆける人間など
この世界にはどこにもいない

けれどね
わかったよ
その特別な傷や痛みを成して、はじめて人は
何特別なものではない、優しさというものに気付くことができるのだと

本当の優しさとは
決して言葉で語れるものではなく
言葉で語れない優しさこそが優しさというものなのだと

本当のありがとうとは、ありがとうでは足りないもので

決して言葉では表せないものがこの世界、この街にはたくさんある

そんな存在を知ったとき
笑い合う空間に生きる4人の痛みの延長線上で、ある目的を見出だした

‘通り魔を捕まえる’

それが今、私たちが一週間を生きた自分たちで決めた答えだった
ありったけの優しさを突き進ませるもの

まぁ、そんなことしなくても生きてゆくことくらいはできるよね…

でもね…嫌だった
このまま裏をずっと隠して生きてゆく人生など
はじめて友達の表裏の痛みを知って
はじめて表も裏も無しに一緒に笑ってみて思ったんだ

ぁぁ、涙が出るほどうれしい、って

誰かが知ったのならくだらない事かもしれなぃ…
それでも私たちは

馬鹿なくらいがちょうどいい

笑われるくらいがちょうどいい
そうだよね、灯

社会に 常識や限界や規制があっても
私たちの青春に 常識や限界や規制なんてものはない

4人全員が今を変えたいって思ってる
今が今のままじゃだめだから

だから‘今’やらなきゃ絶対後悔すると思うんだ…

そしてまた
どう思おうが、なにをしようが
街は新しい一週間という時をはじめる

その時の中で私たちも

自由という名の孤独な戦いが始まろうとしていた



-9月7日-(日)-

-深夜-
-某 テレビ ニュース番組-

「今夜未明、東京都多摩市 聖蹟桜ヶ丘駅付近の通りにて 帰宅途中の男性が背後から何者かに刃物のようなもので切り付けられる通り魔事件がおこりました
被害者は左腕を切られるも軽傷
尚この付近では、8月31日、9月2日の深夜の時間帯にも通行人を狙った連続通り魔事件が発生しており
警察が警備にあたっていたところでした
被害者が切り付けられた後に警備にあたっていた警察官二人が偶然通り魔を発見
もみ合いになった末、通り魔は警察官の静止を振り切り逃走
しかしその際、警察官一人が通り魔の腕に触れたところ‘異常に冷たかった’と証言しており
犯行や時間帯が前の二軒に似ていることや、前の被害者の発言とも類似することに、犯人は同一犯であり極度の低体温の可能性があるとみて
警察は聖蹟桜ヶ丘駅を中心に、とくに体温に重点をおいて捜査するとのことです
尚、犯行当日 近くの監視カメラにも犯人らしき人影をとらえており
映像からも犯人の行方を追えないか捜査中とのことです
監視カメラの映像や、もみ合いになった警察官の証言によると犯人は
黒色に近いローブコートのようなものを全身にまとい
フードを深く頭に被っており、そしてその両手には、やはり近辺で起きた連続通り魔事件の被害者の証言で出た、犯人が使っていたと思われる‘魚のような形をした刃物’を持っていました
警察はさらに付近の警備を厳重にし、引き続き、体温
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