朝のホームルーム中、なにやら先生が色々と話している
…私のクラスの担任の先生はいつも比較的小声で話すため、席が窓側の一番後ろの私には外の雑音のせいでかなり聞きづらい…
集中して聞き取った一つ二つの単語で多分今日は始業式があるから、そのことを話しているんだと理解する
それだけわかると、私にとっては朝の10分間の短いホームルームが長く感じる

窓側の席というのはこういうときいいもので、軽く横に手を伸ばせばすぐ窓に手が触れることができる
そして私は音をなるべき立てないように…ガラガラっと窓を開ける
秋空の綺麗な空と景色を感じていると、直ぐさまカーテンがふわりとなびく、それと同時に微かな秋の匂いを連れた涼しい風がクラス中に通り過ぎていく
(〜♪ 今日も気持ちぃぃ風♪ )
そんな中、ふと私は灯の話が不思議というか…謎すぎたわけのわからない話を思い出した
…後で今度は私がいじってやるとそんな小さいな企みをこっそり考えながら、机の下で携帯のＰＣサイトビューアーを使って調べてみる
私の携帯は開けるまでに二回の「カチッ、カチッ」という開閉音が鳴るため、わざとイスを少し後ろにひいて、イスと床との擦れるような、ガガッっという音を使ってごまかしながら開く…
携帯とは本当に便利な物で、下手をすれば授業中、メール、ゲーム、ＰＣ検索、音楽アプリ、ワンセグ、…数え切れないほど高校生には暇つぶしには使い勝手がいいアイテムでもある

そして、いつもどおり上は静かで地味な優等生をしつつも、机の下では早速ＰＣサイトビューアーの検索ページを開く
灯が言っていた単語…
試しに「聖蹟桜ヶ丘」「魚」 「ニュース」で検索してみる…
直ぐさま携帯の小さな画面にずらーっと検索ヒットしたページが出てくる、そしてその一番上をクリックしてみる

しかし、そのページに書かれていたことを読んだ瞬間、私は、…数秒間…思考が止まった…、何かの衝撃でドクンッと自分の心臓が麻痺を起こしたかのような感覚…
…なぜなら、そこに書かれていた文章の内容が私が秘密にしている二つの代償のことを語っているかのような内容だったからである…
「昨日の深夜、東京都多摩市聖蹟桜ヶ丘の駅前通りにて仕事帰りの男性が帰宅中、何者かに後ろから刃物で襲われ軽傷を負う通り魔事件が起こり
その被害者の男性の証言では、後ろから襲われた際に見た凶器が、形はあやふやだが魚のような形のものだったと証言していて
さらにその際、驚いて抵抗した男性は犯人ともみ合いになり、犯人の腕を掴んだところ、犯人の腕は氷のように冷たかったとも証言していて
犯人はその後逃走、まだ捕まっておらず、警察はこの証言や特徴も含め捜査中とのこと」

(…!? っ…ど、どうして…)
…氷ほど冷たい体温
さらには…魚
これはまさしく…

…焦った、この街に…私以外にも代償を持っている人が…ほかにもいるかもしれないことが…
(ゴクッ…)
携帯を持つ手が小さく小刻みに震える…、首筋からは何ともわからないような汗が出てくる…
(だ…大丈夫、だって…もし誰かに見つかっても、私は通り魔みたいに悪いことをしているわけじゃないんだから…)
気持ちを落ち着かせるために自分にそう念じる…
(大丈夫…大丈夫……)

…ふぅ…、少しは平常心に戻ったかな…
気がつけば、朝のホームルームは終わって、周りのクラスメイトは始業式のために体育館に移動し始めていた…

「ゆり〜♪ 体育館行こうー 」
「…!? …ぁ…ぅん っ」
あの記事を読んだ後だからか、…いきなり灯に声をかけられて…ついびっくりしてしまった
「どうしたのゆり

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